🇺🇸米国暗号資産規制ニュース（2024年6月7日）：米国財務省による暗号資産規制の動向

米国暗号資産規制に関しては、米国証券取引委員会（SEC）だけでなく、米国財務省傘下にある内国歳入庁（IRS）の動向も注目されています。IRSは、米国の分散型金融（DeFi）プロジェクトの運営を困難にする新規則を導入しようとしています。また、昨今、財務省によるAML／CFT規制の強化が加速しています。

1. IRS、新規則で暗号資産業界を締め付け：米国DeFi業界に打撃？

IRS Set to Kill Pseudonymity in Crypto? Tax Form Proposal Raises Alarms - Decrypt

新規則Form 1099-DA：2024年4月18日、内国歳入庁（Internal Revenue Service：IRS）は、暗号資産取引を報告するための新しい税務フォーム「Form 1099-DA」の草案を発表しました。このフォームは、2025年から使用される予定で、ブローカーが顧客の暗号資産取引情報と個人情報をIRSに報告するために使われます。

ブローカーの定義：Form 1099-DAでは、ブローカーの定義が広範に設定されています。ブローカーには、キオスクオペレーター、デジタル資産決済プロセッサー、ホステッドウォレットプロバイダー、アンホステッドウォレットプロバイダーなどが含まれます。この定義では、DeFiプロジェクトもブローカーとみなされます。

反対意見：この規則に対して、暗号資産業界からは強い反発があります。DeFiプロジェクトが報告義務を果たすことは実質的に不可能なため、多くは米国での運営を続けることが困難になると懸念されています。また、Crypto Council for InnovationのJi Kim氏は、「ウォレットプロバイダーが取引の性質や取引当事者の身元を知ることができないという点が認識されていない」と批判しています。暗号ロビー団体のCoin Centerは、この規則がプライバシー侵害にあたり米国憲法に違反すると主張しています。

今後の行方：新規則の最終版で業界の要望が反映されるかは不明瞭です。少なくとも現時点では、暗号資産業界には不利な状況と言えます。IRSは2023年8月に新規則を提案しましたが、その時のパブリックコメント期間中、ブローカーの定義を狭めるべきだと多くの意見が寄せられました。しかし、今回のドラフトを見る限り、その意見は反映されておらず、IRSは、当初の規則提案内容をほぼそのまま維持する意向であることが判明しました。一部の法律事務所は、「IRSがDEXがユーザーの身元を知る立場にあると主張するだろう」と述べています。ブローカーの定義を巡っては、訴訟が提起される可能性もあります。

2. AML／CFT規制強化が進む

1）　米国財務省および関連機関による暗号資産規制強化の取り組み

近年、米国財務省、その傘下の金融犯罪取締ネットワーク（FinCEN）及び外国資産管理局（OFAC）は、暗号資産に関連する違法な活動を防止するためにさまざまな規制措置を講じています。2023年、米国財務省は、DeFiプロトコルが違法な資金移転やマネーロンダリングに悪用されるリスクを評価し、規制の強化を提案するリスク評価レポートを公表しました。また、FinCENはミキシング取引の監視を目的として新しい記録保持および報告義務を導入しようとしています。さらに、OFACはBinanceをはじめとする個人や団体に対して制裁を進めています。

筆者作成

財務省のDeFiにおけるリスク評価については、下記のレポートをご覧ください。

2）　財務副長官、暗号資産に対するAML／CFT規制強化を訴える

An Update from the Treasury Department: Countering Illicit Finance, Terrorism and Sanctions Evasion | United States Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs

2024年4月9日、財務副長官Adeyemo氏は上院銀行委員会の証言で、暗号資産がテロ組織や犯罪者などの資金調達に利用されていることに警鐘を鳴らしました。暗号資産の使用は違法行為において主流ではないものの、最近の事例として、イランの軍事組織がハマスを支援するために暗号資産を送金したり、ロシアが米国の経済制裁を回避するためにステーブルコインを使用していることを挙げました。

Adeyemo氏は、暗号資産の悪用防止のための監視と執行体制の強化が必要だと訴えました。また、国家安全保障と経済保護のために、ドルベースのデジタル資産に対する財務省の規制権限を拡大する必要があると述べました。

まとめ

米国財務省による暗号資産規制は、税務報告の義務化とAML／CFT規制の徹底化という2つの観点から強化されています。IRSの新規則は、DeFiプロジェクトに大きな影響を与える可能性があり、業界からの強い反発を招いています。また、財務省はAML／CFT規制を強化し、暗号資産の悪用防止に努めています。これらの規制強化は、米国における暗号資産業界の未来を大きく左右することになるため、今後の動向を注視する必要があります。

＊　＊　＊

最後まで読んでいただきありがとうございます。よろしければ、ハートをポチッしていただくと嬉しいです。100円のサポートしていただけますと、もっと嬉しいです。情報発信をTwitterでも行っております。今後もよろしくお願いします。😊

本記載内容は、いかなる種類の法律や財務に関する助言とみなされるものではありません。 規制・状況は未確定なため、本記載内容は法律上または財務上の事業判断に使用するには適切でないことをご了承ください。