🇺🇸米国規制ニュース

みなさん、こんにちは。
このレポートは暗号資産まわりの最新規制ニュースをお届けします。今週は、5月前半の米国での注目ニュースです。

1） デジタル資産法整備における民主党と共和党の対立が熾烈化。米国議会で合同公聴会が開かれる。

2023年5月10日

Hearing Entitled: The Future of Digital Assets: Measuring the Regulatory Gaps in the Digital...

概要
米国下院では、金融サービス委員会と農業委員会が、2023年5月10日に異例の合同公聴会を開催しました。この公聴会は、デジタル資産に関する法整備の緊急性を訴える議員たちの呼びかけによって実現しました。

2022年11月の中間選挙を経て、第118議会が2023年1月3日に開会しました。当初数ヶ月は静かな様子が続いていましたが、ここ数週間、デジタル資産に関する新たな法案についての協議が進行しています。

しかし、現在の米国議会は、上院が民主党、下院が共和党が過半数を占めるねじれ状態にあります。そのため、仮に下院で法案が通過したとしても、その法案が上院でも可決されるかどうかは分かりません。

本合同公聴会では、両党ともに歩み寄りの発言も見られましたが、民主党と共和党の間で法整備に対する見解は、依然隔たりがあります。

上院銀行委員会の民主党のBrown議長は、以前からデジタル資産に対して懐疑的な姿勢を示しており、SECのGensler委員長の見解に賛同していると述べています。

また、今年に新設された下院のデジタル資産・金融技術・金融包摂小委員会では、4月27日に一部の民主党議員が、デジタル資産に関してはすでに十分な法律が存在すると主張しました。

前議会で共和党のPatrick McHenry議員と共同でステーブルコイン規制法案を検討していた、下院金融サービス委員会の前議長であった民主党のMaxine Waters議員も否定的な発言をしています（4月19日開催された小委員会にて）。Waters議員は、共和党がステーブルコイン法案の草案で民主党の懸念に対処していないことを非難し、ゼロから始める必要があると述べました。

さらに、合同公聴会の直後に、民主党の下院金融サービス委員会のメンバーに送られたメモが流出しました。このメモでは、党員に対して暗号業界の主要な規制者としてSECを支持するよう促しています。メモには、「問題は曖昧さではなく、既存の法律への大量の不遵守である」と記されており、暗号分野においてさらなる規制の明確化が必要だという共和党の主張を払拭するようにと、民主党員に呼びかけていると報道されています。

今週の5月18日にはステーブルコイン規制の立法に関する公聴会が開催される予定であり、この夏にも幾つかの公聴会が予定されています。

まとめ・考察
米国議会における法整備の協議は、進展したり後退したりという状況です。具体的な法案の内容についても、未確定な部分が存在します。デジタル資産の法整備に関する動向には引き続き注目する必要がありますが、筆者は法整備の道のりは、困難を伴うと予想しています。

出所： ‘Joint Financial Services-Agriculture Subcommittee Hearing Entitled: The Future of Digital Assets: Measuring the Regulatory Gaps in the Digital Asset Markets’ (May 10, 2023)

---

2） ニューヨーク州司法長官、暗号資産規制強化のため、新たな規制を提案

2023年5月5日

Attorney General James Proposes Nation-Leading Regulations on Cryptocurrency Industry

概要
ニューヨーク州司法長官Letitia James氏は、2023年5月5日、Crypto Regulation, Protection, Transparency, Oversight Act（CRPTO法案） を提案しました。この法案は、州議会議員に提出し、6月8日に終了する2023年立法会期中に検討される予定だと報道されています。

James氏は、今回の提案を全米で最も強力かつ包括的な暗号通貨に関する規制であるとし、下記3つに重点をおいています。

1）利益相反をなくす
・デジタル資産会社が顧客資産を貸し借りすることを禁止
・投資顧問会社が顧客資産を保管することを禁止、等

2）財務情報の公開による透明性の向上
・デジタル資産会社に、会社事業、財務状況、経営成績、リスク要因、利益相反に関連する重要な情報を含む目論見書の発行と配布を義務化

3）個人（消費者）投資家の保護を強化
・KYC条項を規定化し、デジタル資産会社に顧客の取引活動を監視することを義務付け、また、KYC条項に遵守しない企業と取引を行うことを禁止
・デジタル資産を説明したり販売したりする際に、それらの資産が米国通貨または連邦法で定義された高品質の流動資産で1対1に裏打ちされていない限り、「stablecoin」という用語を使用することを禁止
・プラットフォームからの不正な資金流出や詐欺被害にあった顧客へ返金するよう企業に義務付ける

まとめ・考察
ニューヨーク州の司法長官は、暗号資産に対して厳格な対応を採る人物として知られています。今年3月には、KuCoinを未登録取引所として提訴し、その訴状ではEthereumを証券と主張しました。ニューヨーク州の規制ガイドラインが成立すると、他州も追随する可能性があるため、市場全体へ与える影響は大きいと予想されます。同州の動きは引き続き注目します。

出所：'Attorney General James Proposes Nation-Leading Regulations on Cryptocurrency Industry', Letitia James (May 5, 2023)

---

3） SEC、プライベートファンド報告規則の最終版を発表。草案段階で提案されていた「デジタル資産」は報告対象から除外。

2023年5月3日

SEC.gov | SEC Adopts Amendments to Enhance Private Fund Reporting

SECは、2023年5月3日に、最終的なForm PF（プライベートファンド）規則から「デジタル資産」を報告対象資産に含めないことを決定しました。SECは「デジタル資産」という用語について、今後も検討を続けると述べています。

最初の提案では、SECは、デジタル資産を「いわゆる「virtual currencies」、「コイン」、「トークン」を含むが、これらに限定されない、分散型台帳またはブロックチェーン技術を使用して発行または移転される資産」と定義しました。

Form PF規則は、一定の基準以上の資産を持つプライベートファンドを運用する投資顧問に適用されます。該当する投資顧問会社は、保有資産の種類、採用されているレバレッジ、各ファンドのカウンターパーティーの信用リスクなど、ファンドに関する詳細な情報を定期的にSECに提供する必要があります。

まとめ・考察
SECがデジタル資産の定義に関する公式声明を出すかと業界では期待されていましたが、最終的にはその発表は見送られました。しかし、SECのクリプトに対する関心は非常に高く、ほとんどの暗号資産は証券であるという見解に基づき多数の執行措置が実施されています。取引所やDeFiプラットフォームを現行法の定義に含める提案をSECはしており、パブリックコメント期限の来月半ば以降、注視する必要があります。

出所：Amendments to Form PF to Require Event Reporting for Large Hedge Fund Advisers and Private Equity Fund Advisers and to Amend Reporting Requirements for Large Private Equity Fund Advisers

---

4） ホワイトハウス、デジタル資産のマイニング企業に新たな税金を課すことを提案。

2023年5月2日

The DAME Tax: Making Cryptominers Pay for Costs They Impose on Others | CEA | The White House

概要
ホワイトハウスは、2023年5月2日、2024年度から「DAME税」（Digital Asset Mining Energy税）と呼ばれる新たな税金の導入を提案しました。ホワイトハウスは、マイニングによる環境破壊を懸念しており、環境への影響やその他の損害を考慮し、マイナー企業は公平な負担をするべきであるとし、マイナー企業に適切な税金を課すことが望ましいと考えています。

この税金は、企業がコンピューティングリソースを使用してデジタル資産のマイニングを行う場合に適用されます。最初の1年間はマイニングに使用する電力コストの10％が課税され、2年目には20％、3年目には30％に増加します。

提案が採用された場合、2023年12月31日以降の課税年度から実施となり、10年間で35億ドルの税収が見込まれています。

この税制案は、石炭、天然ガスを利用した発電、100％再生可能エネルギーで発電された電力にも適用され、炭素排出量ではなく電力消費量に焦点を当てていると、業界関係者から批判的な意見が出ています。民主党員からも批判する意見が挙がっており、ビットコインマイニングの使用量はビデオゲームとほぼ同じであり、誰もそれらの禁止を要求していないと述べています。

まとめ・考察
今年の3月後半に、ホワイトハウスは暗号資産に厳しい姿勢を示す報告書を公表しました。ホワイトハウスは、マイニングが地元や国家の経済的利益を生み出しておらず、またデジタル資産自体がまだ社会的利益をもたらしていないと厳しく評価しています。この提案が法律になるかどうかは現時点では不明ですが、マイニングによる電気使用量とそれに伴う環境問題に対する厳しい見方は、引き続き続くと予想されます。

出所：The DAME Tax: Making Cryptominers Pay for Costs They Impose on Others, The White House (May 3, 2023)

＊　＊　＊

最後まで読んでいただきありがとうございます。
よろしければ、ハートをポチッしていただくと、嬉しいです。😊
サポートしていただけますと、もっと嬉しいです。😆

暗号資産やブロックチェーンに関する情報発信をTwitterにて行っております。英語圏の情報を中心に最新のニュースやレポートなど紹介しています。

今後もよろしくお願いします。

本記載内容は、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。 規制・状況は未確定なため、本記載内容は法律上または財務上の事業判断に使用するには適切でないことをご了承ください。