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二度目の覚悟。今回の覚悟の方が難しかった。

 コルクを辞めたスタッフとの、ある会話を最近よく思い出す。

「佐渡島さんのスピードに社員がついていけなかった時、どうしますか?」

「ベンチャーは、社長がスピードを落とすと止まる。誰よりも速く走る。そして、ついて来れる人間を連れていく。もしも、待てるなら、大企業のスピードも待てた。目標に到達することが大事だ。」とその時の僕は、答えた。

 そのスタッフは、その会話から半年後にコルクを辞めた。彼はコルクの創業日に連絡をくれて、ボランティアでもいいから働きたいと言って助けてくれて、すぐにコルクも彼に給与を出せるようになった。彼がいなければ、創業時のコルクは絶対に回らなかった。

 そのようなスタッフでもスピードのついて来れなかったら、敢えて別の道を行く。厳しさがベンチャー経営には重要で、目標に対して、僕がブレてはいけない。それが僕が心の中で繰り返し唱えていたことだった。

 今の僕は、先輩経営者として、2年ほど前の僕にアドバイスしたい。

「それはリーダーの発言としてなのか?」と。

 今の僕であれば、「僕が一度スピードを落とす。それで、目標が何かを一緒に再確認しよう。そこからみんなで目標へのたどり着き方を考えよう」と答える。そのように答えれなかったことを、そのスタッフに謝りたい。僕の未熟さが、彼の僕を応援しようというポジティブな気持ちを踏みにじってしまった。

 当時の僕は、目標は分かっていたけど、目標とコルクの距離が分かっていなかった。だから、我武者らに走らないと、僕の中にある不安を沈めることができなかった。今年の後半になり、目標への距離が分かってきた。そして、そこへたどり着くのに、僕一人での力では絶対に無理でチームの力が必要なのだということも分かってきた。

「大手出版社を辞めるのは大変だったでしょう?」と4年経った今でもよく色んな人達から聞かれる。でも、その時の覚悟は、簡単だった。一人でできるからだ。一人でできることに覚悟を決めるのは、簡単だ。

 僕はコルクの社長となり、最終の意思決定をすることで、僕はリーダーになったつもりでいた。リーダーとは、どのような存在かを知らなかったから、社長であることで十分だと思っていた。

 リーダーは一人ではなれない。チームを作ろうと努力して、チームのメンバーからリーダーとして信頼されないと、リーダーにはなれない。コルクのスタッフが、僕の編集者としての能力を認めていたり、作家との仕事を魅力的に感じているのは分かっていたけど、僕をリーダーとしたいと思っているかはわからない。僕は、自らリーダーとして振る舞うことを、心のどこかで恐れていた。だから、講談社を辞めるときは、覚悟を簡単に決めれたけど、「僕がリーダーだ。みんなでチームなろう」ということを発するための覚悟を決めるのに、僕は4年もかかってしまった。正確にいうと、リーダーになるということに覚悟が必要だということを知るのに3年半ちかくかかり、覚悟を決めるのに半年もかかってしまった。

 コルクの強みは「チームの力」。この強みが、外からも感じてもらえるように、僕はリーダーになる。 社長という会社での役職の他に、チームを率いるリーダーになるという覚悟を決めた。2度目の覚悟のほうが、1度目よりもずっと難しかった。1度目はすぐに実現できたけど、2度目の覚悟はこれから時間をかけて実現していく。

 僕がこの1年近く読んでいたリーダーに関する本は、これらだ。

最高のリーダーは何もしない』藤沢久美

『チェンジリーダーの条件』ドラッカー

『ビジョナリーカンパニー』ジム・コリンズ

『チームが機能するとはどういうことか』エイミー・C・エドモンドソン

『賢い組織はみんなで決める』キャス・サンスティーン、リード・ヘイスティ

僕のツイッターアカウントは@sadycorkです。フォローよろしくお願いします。

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