軽快なお仕事小説かと思いきや!?「店長がバカすぎて」のあらすじ・感想・レビュー
概要
書店で働く主人公が日々の仕事やプライベートについてぐちぐち言いながらも、一生懸命働いて、前向きに過ごしていく小説です。
感想・レビュー
この本は、本屋さんで一押しの棚に置いてあり、タイトルのインパクトがすごかったので、パケ買いしてみました。本屋大賞2020の候補作だったそうです!
この本は、この物語の主人公である書店で働く女性・谷原京子が、店長を主とした周りの人たちに振り回されて、不満を零しながらも、前向きに過ごしていく様子を、きめ細やかに描写した小説です。
コメディタッチで、思わず吹き出すところが盛りだくさんでした。主人公目線で文章が書かれており、主人公の考えていることが垂れ流されているので、どんな変なことも主人公が冷静な目線でツッコミをいれている部分が特に笑えました。
この本を読んで私が特に感嘆した点は、以下の3点です。
1.主人公の仕事への姿勢
私は、前職が忙しく、理不尽な部分も多々あったため、ひたすら脳内で愚痴を垂れている様子にすごく共感できました。
私の場合、前職で働いていた時は、常に後ろ向きな考えで、常に悲しさや怒りを感じながら無気力に体だけ動かしていました。しかし、この本の主人公は、理不尽なことでも周りの人に積極的に助けを求めたり、意見を言ったり、周りからの助言も素直に聞き入れたりしています。そうすることで、結果的に、仕事への愛を自分で再確認することができ、また頑張ろうと前向きな気持ちになれています。私も、つらい時、しんどい時に、周りの人に素直に助けを求め、自分では抱えきれない気持ちや意見を率直に言っていれば、今も元気に仕事を続けていたのかもしれないと思うと、この本の主人公を尊敬しました。
2.書店員の日常
恥ずかしながら、私は書店員という職業のことをあまり知らず、淡々と本の発注・品出しを行い、お客様に本を売っている仕事と考えていたのですが、この小説を読んで、書店員の仕事の奥深さを知りました。
この小説では、日常の風景が細かく描写されているため、書店員の一日がタイムスケジュールまで分かります。この小説がどこまでリアルに書店員の仕事を描写しているかは定かではないですが、単にほんの発注・品出し・販売だけでなく、様々な本を実際に読んでみて売り出したい本を考えたり、本の配置を考えたり、お客様に買いたい本を聞かれても答えられるように流行りの本をインプットしたり、本のPOPや推薦文を考えたり・・・大量に仕事があることが分かりました。確かに考えてみれば、一種類のメーカーを扱っているアパレル店やブランド店などとは違い、複数ある出版社の中でさらに大量にある本の中で、どれを売りたいかとかどれを売ったら店の利益にもつながるかなど複数の面で考える必要がありますね。(もちろん、一種類のメーカーを扱っているアパレル店やブランド店で働いている方にもブランドの売り出し方など、いろいろ考えることがあるので、決して楽な仕事だと言っているわけではありません。)
3.ストーリー展開
ストーリー展開にもびっくりさせられました。終盤くらいまではずっと書店員の喜怒哀楽に満ちた日常の話だったのが、終盤で急にミステリーのような展開になっていきました。ミステリーとはいっても、事件性があるものではなく、明るく不思議なミステリーです。そして、序盤から中盤でしっかり伏線が張られていたことにも感心しました。
ミステリーだと思って読んでいないため、不思議に思うこともなくスルーしていた部分が伏線だったことから、思わず当該分を3回くらい読み直しました。この本を読んだ方々も同じ道をたどっていると思います。そして、必ずペンを握って、アルファベットの羅列を並べ替えているはずです。
結局、何がどうなったからこうなったの!?と、謎のままで終わった部分もありますが、小説内でも続編が示唆されているので、店長がバカすぎてはシリーズ化するのではないかと思います。
最後に
読後の晴れやかさはピカイチだと思います。書店員の方、仕事に悩んでいる方、明るめの爽やかな小説が好きな方におすすめです。ぜひ読んでみてください。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?