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思春期の悩みを表現!「カラフル」のあらすじ・感想・レビュー

概要

著者:森絵都
発行年:2007
あらすじ:
死んだ魂が再挑戦の機会を与えられ、一定期間ある少年の体に入り込んで生活する物語。


感想・レビュー

あらすじにも書いたとおり、死んだ魂が抽選に当たり、人間界で再挑戦の機会を与えられるという設定です。ありそうでなさそうな設定に思わず惹かれたのと、一面黄色の表紙にそそられ、購入しました。

キャッチーな設定で、難しい言葉や漢字が少なく、ページ数も多くないため、とても読みやすいです。よく調べてみたら、著者の森絵都さんは、児童文学を得意としていらっしゃるようで、納得でした。この「カラフル」も、第46回産経児童出版文化賞を受賞されているようです。

死んだ魂の再挑戦は、ざっくりいうと次のとおりです。
・少し前に自殺した思春期の少年の体に入り込んで、少年と同じ環境でしばらく過ごす。
・死んだ魂は、前世で大きなあやまちを犯しており、前世の記憶を思い出し、そのあやまちの大きさを自覚した時点で、挑戦が終了し、無事輪廻のサイクルに復帰することができる。


魂の入った少年の体は、小林真といい、一見不幸に見える環境ですが、よくよく見て、周りの人と話し合ってみると、実はそんなに悪くない環境にいることが分かっていきます。
27歳になった私の感覚では、真の悩みは、同じ部屋にいるコバエと同じくらいの存在感ですね。でも、思春期に戻って考えてみると、死にたくなる気持ちも分かります。汚らわしいと思っていたことを身近でする人がいること、全く自分の思い通りにならないこと、学校という逃げることのできない狭い空間で虐げられてしまっていること、このようなことが重なると、逃げ出したいのに逃げ出す場がない閉塞感を感じ、死ぬ方が楽かと思ってしまうかもしれないなと。

でも多分、真まではいかなくとも、誰もが皆こういった経験は必ずしているはずだと私は思います。世の中、不倫をしている人はごろごろいますし、過去に万引きをしたと言っている人も山ほど会ってきましたし、大学に入れば未成年でお酒を飲んでいる人なんか大半じゃないかと思います。どれも法を犯していますが、当たり前に存在していることで、学校で習ったことや親からの教えが上辺であることに失望しますが、ひとつひとつ何とか乗り越えて、気持ちを整理して、人として大きくなっていくものだと思います。

思春期になんとなく感じていた厭世観のようなものを思い出し、むずがゆいような懐かしいような気持ちになることができました。また、5年後くらいに読もうと思える作品です。
思春期の方にはもちろんおすすめしますが、いろいろな経験をしてきた大人の方にも是非読んでほしいです。
ちなみに映画化しているみたいなので、見てみようと思います。



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