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とある大学でゲームデザインについての講義をしました

先日、僕がとある大学で講義をさせていただきました。
そのスライドをこちらに掲載します。

教授が僕の大学時代の先輩で、とある飲み会でゲーム作りの話をしていたら、是非講義してくれないかとのことで勢いでOKしてしまいました。

何を話すか悩みましたが、まずは作ってみてほしいと思ったので、ゲームつくりの最も基本的で、本質的なところだけを抽出した説明と、とりあえず作りながら考えるスタイルのゲーム作りを提案してみました。

なかなか評判もよかったとの話を聞いてやってよかったなと思っています。
内容をここに公開しますので、何かの参考になれば幸いです。

スライド1

ゲームデザインについて話をしたいと思います。


スライド2

今日はゲーム作りにおいて基本中の基本だと思っているこの3つに焦点をあてて話をします。


スライド4

たのしい」と「おもしろい」の違いはなんでしょう。
ゲームデザインの観点から考えてみましょう。


スライド5

たのしい」とは自分の思い通りになることだとします。


スライド6

おもしろい」とは、「たのしくない」ものを「たのしく」することです。

スライド7

つまり、思い通りにならないことを、思い通りになるようにする過程がおもしろいのです。


実際に例を挙げてみてみましょう。

スライド8

スーパーマリオブラザーズは先に進むことが目的のゲームです。
なので、困難を乗り越えて先に進めると「たのしい」です。

しかし、途中で死ぬと「たのしくない」です。

なので、頑張って練習をしたり、コースを覚えるといった自分のスキルを高めていくことが「おもしろい」ゲームです。


スライド9

ドラゴンクエストは、ストーリーを進めていくことが目的のゲームです。
なので、困難を乗り越えて先に進めると「たのしい」です。

しかし、途中で死ぬと「たのしくない」です。

このゲームは、たくさんの敵を倒してレベルを上げさえすれば、確実にボスを倒せます。マリオとは違って、自分自身が成長しなくても、ゲームの中のキャラクターが成長してくれます。

絶対に努力が実るので、その努力自体が「おもしろい」ゲームだといえます。努力だけだと辛いので、ストーリーという「たのしい」部分も用意してあります。

※本質的には逆ですね。ストーリーや冒険感を幅広く楽しんでもらいたいから努力が実るゲームシステムになっているのですが、システムにフォーカスをあてているのでこのような説明になっています。


スライド10

キャンディクラッシュは、クリアできたら「たのしい」ゲームです。

しかし、このゲームは自分の実力だけではクリアできません。かなり運の要素が強いゲームになっています。逆に言うと、運がよければクリアできるゲームです。

プレイヤーはそれが体感的にわかるので、もう一回やればクリアできるはず…!と、何回もプレイしてしまいます。

この「運による期待感」がこのゲームの「おもしろい」部分だといえます。


スライド11

ゲームではありませんが、最近スマホではやりのガチャについても取り上げてみたいと思います。ガチャは完全に運のゲームです。でなければたのしくない、でたらたのしい

ランダムというのはそれだけでおもしろいものだともいえます。それはある種の麻薬性があります。色々な実験でもそれが証明されています。

ただし、目当てのものを欲しいと思われる仕組みが必要です。


スライド12

以上、多少極端ではありますが、ゲームの代表的な4つのおもしろさを上げてみました。

他のゲームについても採点してみました。これが絶対だとは思いませんが、なぜこうなっているのか考えてみるのもおもしろいと思います。

さて、

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次は、たのしいたのしくないを違う角度から見てみましょう。


スライド14

モンスターハンターをベースとしてつくられたゴッドイーターというゲームがあります。これはモンスターハンターのたのしくない部分(それがたのしいという人もいると思いますが)をたのしくなるように改善して作られたゲームがゴッドイーターです。

こうやって、新しい付加価値をつけることで、新作ゲームとして売れるものを作ることができます。


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ドラゴンクエストはふっかつのじゅもんというものがあり、それを紙にメモしていたのです。それをファイナルファンタジーではカセットにセーブできるようになりました。これはシステムとしてたのしくない部分をたのしくする例です。

※若い方はふっかつのじゅもんのシステムを知らなかったようですw。説明はしたので理解はしてもらえたみたいですが…。


スライド16

これらの共通することはこの4つ。特に今回は上2つについて話をしています。


スライド17

ここからちょっと難しい話をしますので、よく聞いていてください。


スライド18

ゲームは、とある仕組みがあり、そこからリスクとリターンなどの効果が生まれ、それをプレイした結果その人に様々な感情がおこります。

仕組みがあって、効果がうまれ、感情がおこるのです。


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これを逆から考えるとゲームデザインが見えてきます。


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まず、プレイをするといろんな感情が起こると思います。その感情がなぜ起こったのかを考えます。そして、それを解決する仕組みを考えて実装します。

感情から、なぜなのかを考えて、解決する仕組みに落とし込むのです。


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これがゲームデザインの基本中の基本です。


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ちょっといいかえると、このようになります。
これを様々な要素について細かく何回もやるとゲームができてくるのです。


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これを、MDAフレームワークといいます。
MDAはそれぞれ、Mechanics、Dynamics、Aestheticsの略です。


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このMDAフレームワークを踏まえて、先ほどのたのしい、おもしろいの話、たのしくないたのしいの話を見返してみてください。

おもしろいを作るためには、適度な困難を設定する必要があるのです。

もちろん、過度な困難はたのしくないですし、簡単すぎても面白くありません。適度な困難がおもしろいを生むのです。

また、たのしくない要素をたのしくすることでゲームの体験を向上させているのです。ただたのしくない要素は改善していく必要があります。

これを解決するためにMDAフレームワークが使えるのです。

つまり、違和感をみつけ、それがなぜかを考え、改善するシステムを実装する。これは企画立案の時にも使えますし、ゲーム制作にも使えるゲームデザインの基本と呼べるものです。


では、どうやってゲームって作っていけばいいの?ということを説明していきたいと思います。

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初めてのゲーム制作のコツはこの5つです。


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まずは、小さく作ってプレイしましょう。ここにあるように、最初のゲームはこのくらい小さくていいのです。このくらいなら作れそう!と思いませんか。そして、それをプレイするのです。プレイすると様々な感情が沸き起こるでしょう。その中から1つ選んで改善してみましょう。

それを繰り返していくと、いつの間にか自分のゲームができるのです。
もちろん根気が必要な作業ですが、その作業はおもしろいと思えるものでしょう。たのしくないものをたのしくする作業がおもしろくないはずがありません。


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「考えるな感じろ」とはブルースリーの言葉ですが、あまり考えこんでも進みません。考えすぎて嫌になることもあるでしょう。そういうときは、手を付けられるところからやりましょう。なにも思いつかない時は、とりあえずプレイしてみましょう。何か気づくことがあるはずです。

また、よく聞く理論やセオリーを気にしてはいけません。自分が考え、納得したことを形にしましょう。そういった理論やセオリーは解決するために使うものであって、縛られるものではありません。わりと使い方が難しいものもあります。自分がプレイして感じたり考えたことがもっとも大事です。そのゲームのことはそのゲームをプレイしなければわかりません。自分が納得したことだけを実装していきましょう。


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ゲームを作っていくとやりたくてもできないことがたくさん出てくるでしょう。チャレンジはいいことですが、無理しすぎてあきらめるのは最悪の事態です。もっと簡単な方法で実現できないか考えてみたり、あきらめて別のところを改善したりしましょう。


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もっとも大事なことは、完成させることです。完成させないと見えないものがたくさんあります。必ず完成させましょう。

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ここで、ゲームの完成っていつ…?と思う方は多いと思います。

MDAフレームワークで言っていた、違和感。これがなくなったら完成だといいたいところですが、違和感はなくなりません。絶対に。

なので、その違和感になぜ残すのか理由をつけましょう。

A案とB案あって迷ったけどなんとなくA案にした。いい解決策が浮かばなかった。技術が足りなかったのでこれで良しとした。締め切りが来てしまった。…。いろんないいわけをつけて違和感を残しましょう。

実際のゲーム開発でも違和感をすべてとりきることはまずありません。致命的なものは直しますが、それ以外はいろんな言い訳をくっつけてそっと閉じてしまうのです。

もちろん、できるだけ違和感を除くことが望ましいですが、無理して完成しない方よりはましです。無理せず完成させて次に行きましょう。


スライド31

完成したら、是非いろんな人に遊んでもらいましょう。そしてたくさん意見をもらいましょう。

このとき、先ほど違和感につけた理由が生きてくるのです。みんなからもらった意見と自分が違和感を残した理由と比べましょう。なるほどその解決策があったか!それは無理だったんだよなー。そこを違和感だと思うのか!など様々なものが見えてくると思います。


スライド32

意見を聞くことが怖い…。という人もいると思います。
そこで、素直に意見を聞くコツを2つ紹介したいと思います。

1つめは、作ったゲームを自分とは思わないことです。ゲームへの意見を自分の人格否定だととらえてしまうと心がいくつあっても足りません。こういうときは、意見を言う人と同じ立場に立って、「確かに、ここそんな感じしますねー」と同意してみてください。そうやって自分とゲームを切り離すことで、素直に意見が聞けるようになると思います。

もう1つは、改善を約束しないことです。ゲームの開発中に他の人に見てもらうこともあるでしょう。このとき、もらった意見がすごくよく思えても、あとで実装するときに実際にはうまくいかないことがあります。そしてその意見のために無理な実装をしてしまうことがあります。それは本末転倒です。こういうときは「ありがとうございます。検討します。」と、お礼を言いつつ検討することを伝えればいいのです。そうすれば、あとでその意見を無視しても心が痛むことはありません。自分の好きにゲームを作れる状況を作っておくのは意外と大事なことです。


スライド33

とくに、1,小さく作ってプレイすること。と、4.完成させることはとても大事です。まず、小さな一歩を踏み出しましょう。そして、プレイすれば違和感が必ず見えてきます。最後に、完成させることで初めてゲーム作りとしての本当の経験値がたまるのです。

まずは作ること、そして完成させることを目指してゲームを作ってみてください。

みなさんが、この講義を聞いてなんでもいいので1つゲームを作ってくれることを願っています。


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このあと、先にとっていた学生さんへのアンケートの質問に答えたりして講義を終えました。

90分ほぼ一人でしゃべるというのは初めてでしたが、好評だったとのことでひと安心しています。

スライドをまとめていると、さらに違和感が見えてきますね…。今回はあまり時間をかけても…なので、これで完成とします。

このスライドが少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。
また、みなさんからのご意見もいただけたら嬉しいです。


最後にCMです。
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