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ボードゲーム 【サンタキッズ】 デザイナーズノート

サンタキッズは、クリスマスに (じゃなくても) みんなで盛り上がれるボードゲームです。
このゲームを僕がどんな気持ちで作っていたのか書き残しておきます。

コンセプトを考える

まず、ボードゲームをあまり遊ばない人でも楽しめる、それでいて、ボードゲームとして考えどころもあるような、ボードゲームの入門によさそうな中量級(プレイ時間60分ぐらい)のゲームを作りたいと思いました。

日本でボードゲームといえば「人生ゲーム」をあげるひとが最も多いのではないでしょうか。最近ではコミュニケーションゲームを中心に勢いがありますが、ボードゲームの深みの認知を上げていきたい。そのためにみんなとワイワイ楽しめるゲームを作りたいと考えました。

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人生ゲームは手番制のゲームにしてはダウンタイム(プレイヤーの待ち時間)が少ないゲームだと思います。それは、プレイで悩むことが少ないこと、都度様々なことが起こってそれにみんなが一喜一憂することに起因していると思います。

もう1つ気にしていたゲームとして、チケットトゥライドというゲームがあります。
とてもシンプルにまとまった非常に良いゲームです。運要素が大きめですが考えどころがあり、ボードゲームをした感があります。
ルールがシンプルで見通しもよい、初心者にはうってつけのゲームだと思いっています。

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この2つのプレイ感を参考にゲームを作っていくことにしました。

また、初心者の方に目に触れてもらいやすくするためのテーマを考えていたところ、娘が「こんど〇〇をサンタさんにお願いするんだー」などと言ってきました。もう夏になろうかというのにです。どの季節になってもクリスマスとサンタの話をする娘を見て、テーマをクリスマスにしようと思いました。
クリスマスしかやらないんじゃないか?という話もありましたが、むしろクリスマスのたびに思い出してくれるゲームになったらいいなと思いました。

クリスマスをテーマに、プレゼントを積んで配りに行くすごろくベースのピックアンドデリバリー。いろんなハプニングがあって盛り上がる。そんなゲーム超よさそう!

ピックアンドデリバリーのゲームって、意外と荷物を積んでせっせと運んでいくっていうゲームは少ない (金星の商人ぐらい?) 気がしていますし、そこもいいのではないかと思いました。協力ゲームにするのもよいかも?と思いましたが、達成できないと悲しい気がして競争ゲームとして作ることにしました。
どっちもできるゲームになるとお得感あるかも?などと考えつつ…。

クリスマスに向けてコンポーネントを豪華にしたい。と思った時、ボードゲームに初めて触れる入門向けゲームとしては高価になってしまうことが懸念されます。そこは、ボードゲームが好きな人をメインターゲットとして、その方がボードゲームを知らない人や知ったばかりの人を中量級ゲームに誘うきっかけのゲームになれれば良いかなと思いました。
クリスマスにみんなで集まって、ゲームしようよーって誘いつつこのゲームを出して、「なにこれかわいいー」「でしょー」ってなってほしい。

ということで、コンセプトは
・ボードゲームを初めて触れる人を巻き込むためのゲーム
・テーマはクリスマス
・さいころで進む、すごろくベースのピックアンドデリバリー
・いろんなことが起こって盛り上がる
・ルールはシンプルに、悩みどころもありつつ、見通しがよい。
・プレイ時間は60分程度
という方向で開発をすすめることとしました。
(最後の最後にさいころで移動しなくなってしまうのですけどね…。)

キャッチコピーは「クリスマスに、好きな人と遊ぼう。」

ゲームシステムを考える

一番最初に考えたのはこんなゲームでした。

以下のどれかを手番でします。
・プレゼントカードを5枚並べて置く。そこから隣り合った2枚のカードを取る。(チケットトゥライド風のカード取得)
・さいころを振って移動する
・家マスにあるくつ下の色に合わせてプレゼントを配る

マップは網目状になっていて、
・各所にあるプレゼントがなるツリーマスでプレゼントカードを手に入れる
・家マスにあるくつしたチップの色に合わせてプレゼントを配る
という形にしてみました。

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家マスには、1つのくつ下チップをおいていて、一度配るとそのチップをゲットする方式にしていました。
しかし、チップがなくなるにつれて段々と行ける場所がなくなってゲームがデフレしていくような感覚がありました。
ツリーマスも至るところにあるために、プレイヤー同士の干渉も特になく微妙な感じでした。

移動を制限したり、世界の時差を考慮して行ける場所が移り変わらせたりといろんなことを試してみましたが、あまりうまく行きませんでした。

そこで、問題点を改善するために大きくリニューアルすることにしました。

真ん中にプレゼント工場と周りに町マスを6個配置し、それぞれを線でつなくシンプルなマップにしました。町マスにはいくつものくつ下チップを重ねておきました。

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取る場所と配る場所を集約すれば遊びやすくなるし、くつ下チップをたくさん重ねておけばデフレしづらいだろうと思ってこうしました。

そして、みんなトナカイを持ち、トナカイの数だけサイコロを振り、そのサイコロを使って移動したりプレゼントを引いたり、プレゼントをくばったりするようにしました。どのダイスの目をどのアクションに割り当てるか…。というのが面白く、気に入っていました。

ざっくりプレイしたところ割と良い感触だったので、これを伸ばしていくことに。

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この頃、クリスマスだし、コンポーネントも豪華にしよう!と思ってソリを立体にすることを考え始めていました。
手に入れたプレゼントのキューブを立体のソリに乗せるのです。
こちらも試作を作っていました。

そして、マップに桃鉄風のプラスマス、マイナスマス、カードマスを追加。カードマスではイベントカードを引きます。
これによって様々なことを起こして、ダウンタイムを軽減しようという思惑です。イベントカードは程よくこのゲームを盛り上げてくれるよいものになりました。

イベントカードには、すぐに効果を発揮する即時カードとずっと効果を発揮し続ける天気カードの2種類を用意しました。

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このイベントカードの調整には多くの時間を割くことになりました。特に他のプレイヤーを攻撃するようなカードをどうするべきかはかなり悩みました。

最初は攻撃的なカードを入れていましたが、少々ギスギスしてしまいます。かといってそれがないとふんわりしていて楽しさが減ったような気もしました。そこで、いくつか対策をしたところわりと良いところに落ちた気がします。その対策とは、2つあって、1つ目は、カードに「トップの人から」などと書いたり、じゃんけんで対象を選ぶことで、「カードに書いてあるんで」、「じゃんけんに負けたから」という言い訳を作れるようにしました。2つ目は、直接誰かのプレゼントを奪うカードもあるのですが、代わりにベルをあげるという対価も用意しました。
特に、ランダムに対象を選ぶところでダイスを振っても良かったのですが、じゃんけんを取り入れてみたのは良かったと思っています。じゃんけんって単純に楽しいですし、パーティー感でがました。

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開発も終盤にさしかかったと思っていた頃、これまでサイコロで移動していたのですが、このサイコロないほうがいいのでは?という意見をいただき、思い切って取っ払ってみました。1アクションで必ず2マス進むようにしたのです。ややコンセプトに近いところだったので悩みましたが、ものは試し。やってみるとダウンタイムが少なくなり、スッキリとしたゲームになりました。しかし、これは基本システムに関わるところ様々なところで問題が出ました。

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最初の問題は、ダイスの目に時間が進む目をいれていたことです。これがなくなると時間が進まずゲームが終わりません。
そこで、一番手軽に入りそうなイベントカードの中に「時間が進むカード」をいれて見ました。しかし、全部をシャッフルしてしまうとプレイ時間が全く変わってきてしまい、丁度いい体験ができる人が少なくなってしまいます。

画像13(そして、このころからコロナの影響でオンラインでのテストプレイが主になってきました。BGengineは素晴らしいツールですね!)

そこでデッキを3つに分け、「時間が進むカード」をそれぞれに混ぜることでまんべんなく時間が進むパンデミック方式にしてみました。時間の進み方はいい感じになりましたが、カードの枚数を数えてそれぞれに混ぜて用意することになるので、セットアップが面倒になりました。
そこで、イベントカードをA,B,Cの3つにわけてしまうことでそれぞれをシャッフルする方式にしました。いちいち枚数を数えなくていいだけでなく、ABCに分かれているので、それぞれのデッキを混ぜるだけで比較的セットアップが楽になりました。しかも、序破急というゲームの流れをイベントカードで作り上げることができるようになりました。これは非常によい効果でした。最初に引くと微妙なカードを中盤以降にしたり、終盤にどんでん返しが起こりやすいカードを入れることでゲームの感情曲線をきれいに描けるようになりました。

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もうひとつ、いつイベントカードを引くのかという問題も発生しました。
イベントカードを引いてもらわないと「時間が進むカード」が引けずゲームが終わらないのです。
そこで、イベントマスは通り過ぎても引くようにしたのですが、イベントカードを引き忘れる場合がありました。なので、町と工場についても引く、としてみましたが、町につくとプレゼントを配りたくて仕方ありません。その気持ちが先立ってしまって引き忘れる事がありました。
どうにか、「イベントマスに止まったら引く」というシンプルなルールに落ち着けないか…とわりと長い時間頭を悩ませていました。

そして、ついに解決のときはやってきました。町と工場を往復するときにどちらも必ず引けるようにイベントマスを配置すれば大丈夫なのでは?と思いました。実際にやってみないとわかりませんでしたが、マスの数を増やし、3マスすすめるようになる天気カードなどでも大丈夫なように設計できました。今度は、天気によっては、2マス進んで2マス戻ってプラスマスを往復して点数を稼ぐことが最善手になる可能性が出てきました。そこでプラスマスを2マス離れて配置しないよう調整し、こうして、「イベントマスに止まったら引く」というルールに落ち着けることができました。
一見イベントマスにずっと止まらないように遊んだらこのゲーム終わらないかも?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それが最善手でなければ問題ないと判断しています。普通にくばって得点を増やす人がいる横でそれをする道理はありません。それが最善手とみんなが勘違いしてしまう可能性は捨てきれませんが…、そこはプレイヤーの皆さんを信じています。

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この結果、マスが増え、町から工場まで遠くなりましたが、移動だけの手番が増えることでダウンタイムはむしろ減り、逆に遠くまで届けに来たという実感がやや強くなったのは良いことでした。ただし、移動だけの手番ができたことによって、町についたら手番が終わってしまったような感覚になることがありました。しかし、手元のトナカイを倒すことでアクションをカウントしてもらうことで一定の対処はできているのでよしとしました。総合的に見てもこのカードマスの調整は非常に良い調整だったと思っています。

こうして、サンタキッズのゲームデザインは完成を迎えました。

コンポーネントを考える

クリスマスですし、コンポーネントを豪華にしよう!と意気込んでサンタのソリを立体にしてそこにプレゼントをつんだり、コマをオリジナルにしたりと凝った作りにしました。

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また、プレゼントを配る時、町の近くにおいてもらっていたのですが、雑然としていて不評でした。なので、クリスマスツリーをつくってそこに置くことにしました。マップ上に置くと邪魔そうなので大きなクリスマスツリーをつくってそこに置くことにしました。世界観的にやや違和感がありましたが、段々とクリスマスツリーが豪華になっていくのは見た目に楽しく、体験としてとても良い感じになりました。

クリスマスツリーは組み立てるのが大変そうなので、できるだけスムーズに組み立てられるようにスリットを広くしたりと工夫してみました。

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組み立てが大変だとも思ったので、組み立て済みにしたいと伝えたのですが輸送中に破壊される可能性がありオススメできないとのことで断念しました。

組み立てたものをばらすのは嫌だったので、組み立て済みのまま箱に入るようにしました。箱の底に何をどこにしまうのかシルエットで入れました。

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コンポーネントやその収納についても細かく配慮できたかと思います。

アートワークを考える

アートワークはリアンティヒダヤットさん。とてもとてもかわいい絵柄。
ご紹介いただいて作品をみせていただいて、この人の絵はサンタキッズにぴったりだと確信しました。マップや箱絵、ソリの絵など色んな絵を書いていただけました。この絵はサンタキッズのおおきな魅力となりました。

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クラウドファンディング

このご時世、なかなか発表する場が乏しいことも手伝って、最近流行りのクラウドファンディングに手を出してみることにしました。期間的にはギリギリだったのですが、物は試し、とりあえず出してみることに。ウニゲームズさんから紹介いただいてクラウドファンズに出すことにしました。なんといっても手数料が安い!

動画を作ったり、いろいろと手を打ち、いろいろな人の助けもありなんとか成功することができました。

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今回のクラウドファンディングは結構反省するところが多くありました。
特に、完成したものや完成品と同等の絵を用意しておくことがとても重要だと感じました。また、もっと発信していかなければならないということも感じました。
逆に、あのようなモックの状態の絵でご支援いただいた方々には本当に感謝しかありません。
この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

最後に

かなり気合を入れて作りました。ゲーム自体も練り込んで、コンポーネントも練り込んで豪華になりました。豪華にしたことによって値段も豪華になってしまいましたが、豪華なクリスマスに、サンタキッズを楽しくプレイしていただきたいと思います。

サンタキッズ箱

クリスマスじゃないときも、クリスマス気分を味わいたいときも遊んでし欲しいサンタキッズ。どうぞよろしくお願いいたします。

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