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Day 4: プレイバック / 7-Day Book Cover Challenge

Day 4: プレイバック / 7-Day Book Cover Challenge

4冊目はレイモンド・チャンドラーのプレイバック。フィリップ・マーロウが主人公となっているシリーズの中で、最後の作品だ。同時にチャンドラーの最後の作品でもある。もともと清水俊二訳を読んでいて、その後村上春樹訳を読んだ。

小説として読みにくい部分があったりするし、ロング・グッドバイやリトル・シスターのほうが有名な気もする。フィリップ・マーロウの物語を読んだことはなくても、プリンのビーカーに描いてあるのを見たことある人も多いはず。あるいは、この一節を知っている人は多いかなと。

If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.

清水俊二訳は「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」。
村上春樹訳は「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」。
生島治郎の「傷跡の街」のあとがきでは「タフでなければ生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」。
日本では有名な一節だけど、欧米では特に取り上げられることがないみたいで、興味深い。

プレイバックではマーロウのタフネスさはちょっと少なくなっている気もするけど、ウィットに富んだ会話が多くて、それだけで十分に楽しめる。こんな感じで大したことないことだけど、こんな文章なかなか書けないよなと思う。

「やはり警察に連絡する」と彼女は言った。「たとえそれでどうなるにせよ」
「賢明な考えだ」と私は言った。「どうしてこれまでそれを思いつかなかったんだろうな」

プレイバックを書き上げた翌年にチャンドラーはなくなって、70歳だった。他の作品も好きなんだけど、70歳でこれを書き上げるのは偉業だし、良くも悪くも他の作品とは雰囲気が異なっていて気に入っている。チャンドラーの作品を読み始めたのは二十代半ばくらいで、マーロウほどタフにはなれないけど、もうちょっとしっかりしたいと思ったし、いまも思っている。

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