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サンタクロース予備軍ー②

 どうして僕は葱を買いに来ているのだろう。とことんついていない日はもうどんどんついてない事がドミノ倒しのように起きる。社会人になって身に染みたはずだった。そんな時は、何もしないが得策なのに僕はまた動き出してしまった。
 
 炒飯の具がないと言われた中華料理屋の近所にスーパーマーケットがあった事を思い出し、買い出しに向かった。しかし便利な世の中である。夜中に葱が欲しいと思ったらすぐに購入できるのだから、一昔前であれば諦めて開店時間まで我慢するか、どこかの畑のネギを引き抜いてくるしかなかったのではないか(犯罪です。)。「便利すぎたらそれはそれでありがたみが薄れるんだろうな〜」と誰目線なのかよくわからないが考えた。

 スーパー内も中華料理屋同様、いつもと何も変わらず営業しており安心感が抜群だった。野菜コーナーに行き2本セットの物を3つ購入した、僕の後に来るかもしれない迷える仔羊達の為に多めに購入した。レジに向かい少し気になっていたレジの社員さんかパートさんを探したが出勤していなかったので、ベテラン風の店員さんのレジで会計を済ませた。

 店を出て少し気になっていた店員さんの事を考えたが、考えば考えるほど今日はクリスマスイヴなのとつい数時間前にフラれた事を思い出してしまったので、考えるのをやめた。

 炒飯に全集中しようとした時に「キャー」と女性の悲鳴が聞こえた。ただならぬ声だったので、さすがの僕も声の元へ向かった。これが失敗だった。声の主らしき女性は公園にいて、男2人に絡まれているそして暗がりでよく見えないが地面には人間らしき塊がうずくまってる。
 冗談じゃない、こんなベタにヤバそうな状況あるのだろうか巻き込まれるのも嫌だし、誰かしら連絡するだろとその場を去ろうとしたが人が全然いない、そういえばクリスマスイヴなのであった。しかも時間も遅いし。
 とりあえず僕は警察に電話をし僕の目に映る光景と場所を伝えた、「15分程で向かいます」と告げられ電話が切られた。これで一件落着だろう、電話番号とかも聞かれたがあの状況と出くわせば通報者の存在など霞むはずだ。さて帰ろう。

 中華料理屋に向かおうと背を向けた時、バンッと鈍い音が響いた。また公園の方へ目を向けると絡んでいた男の1人が拳銃を握りしめていた、そして拳銃の銃口からは白い煙が出て冬の空へ昇っていた。

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