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3月度東京遠征 短評

3月に東京に行ってきました。いつものように長々と書くとよろしくないので、短評を書くことにします。

①クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ @東京都現代美術館

フランスのファッション・メゾン、クリスチャン・ディオールの展覧会。

展示作品のほとんどがオートクチュールの服飾品です。プレタポルテの出品はありません。オートクチュール(高級仕立服)とプレタポルテ(既製服)の違いは以下をご参照ください。

本展は前売券の取れなさで有名です。なので、酸っぱいブドウのように「こんなのただのファッション・イベントじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。ですが、これはイベントではありません。むしろ、美術ファン、ファッション好きだからこそ見る価値のある展覧会です。

クリスチャン・ディオールというメゾンの魅力をさまざまな角度から伝える展覧会になっていました。そのため、メゾンについてよく知っているひとだからこそ楽しめる部分も数多くありました。玄人好みをしっかり押さえているというところが本当に素晴らしい。

歴代デザイナーの服だけを集めたコーナーでは、イヴ・サンローラン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズなどそうそうたるメンバーの服が並べられています。ここに挙げた4人のデザイナーのブランドを予習しておくと、より展覧会が楽しめます。

白い服ばかりが並んでいる場所も玄人好みですね。ここはクチュリエによるスーツのテーラリングやスカートのプリーツの技術を見せるコーナーです。スーツでは、ラペルの返しの高さとカラーが前身頃にピタッとくっついているようになっているところがすごい。仕立ての技術が分かっているひとはもっと楽しめる気がします。

プレタポルテがないのが残念でした。1990年代から2000年代までに活躍したジョン・ガリアーノは、オートクチュールだとどうしても渋めになってしまう。ガリアーノが印象を残したのはプレタポルテのほうだったんですよね。それに、メンズにはなりますが、2000年代のディオール・オム。エディ・スリマンがファッション界に与えた影響は半端なかった。ファッション史に残る作品がこぼれ落ちてしまったのですね。

でもまあ、2,000円でフランスのトップメゾンの技術がたくさん見られるのですから、安いものです。図録は高くて、服がちゃんと映っていないので買いませんでしたが。

②エゴン・シーレ展 @東京都美術館

20世紀初頭に活躍したオーストリアの画家、エゴン・シーレの展覧会。
個展というよりは、エゴン・シーレを中心としたレオポルド美術館展という感じでした。所々に、オーストリアが誇る画家の作品が展示されていました。

シーレは独自の画風を持った画家です。とりあえずはウィーン分離派に属するのですが、同派のグスタフ・クリムトやコロマン・モーザー、ヨーゼフ・マリア・オルブリヒとは違った作品を残しています。象徴主義や表現主義ともいわれますが、それは作風が近いというだけであって、属するというのは言い過ぎな気がします。

そのためなのか、ウィーン分離派展などで何度もシーレの作品を見ているのですが、自画像の画家というイメージしか残っていませんでした。

本展では樹木を描いた作品や風景画、群像を描いた絵画、最晩年の裸婦画なども展示されており、そのどれもが傑作です。作品はもちろんのこと、作風までもが初見のものがたくさんありました。これまでたくさん、シーレの作品を見てきたのに、画家の理解が一面的であることを思い知らされた展覧会でした。

十数年美術鑑賞をしていますが、これだけエゴン・シーレを多面的に知れた展覧会は初めてです。次に来る機会はそうそうないのではないでしょうか?
そう考えると、図録はマスト・バイですね。

ほかの展覧会も観てきましたが、今回はここまでとします。

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