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魚屋で働くメリット ~流通の始まりを見る~

私が魚屋をやっていて感じるメリットついて、現段階での一定の答えを。

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地方の産地の魚屋の仕事は何か?
平たい言い方をすると、港で水揚げされた魚をお金を出して仕入れて、付加価値をつけて仕入れた金額よりも高い金額で売ることだろう。
この単純さが、私が生まれた家の魚屋を継いだ理由の1つだった。

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この仕事の居場所はサプライチェーンの最上流、経済活動の始まり。値段がつく前の生産物が競りにかけられ、初めて値段がつき、ここから取引が始まる。この地方の市場で値段がついて、そこから我々が住む消費地の市場に運ばれていく。マーケティング・流通のテキストに載っているような話の現場だ。
我々皆が無関係ではいられない食べるものについて、モノが流通する始まりを見る。それらはいったいどこからやって来て、またどうやって生産されていて、どのような仕組みで市場に送り出されるのか。

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このようなモノを仕入れて、これはいくらの価値があるだろうか?と考え、価値を高める工夫をし、それに自分で値段をつけて「これで買いませんか?」と提案する単純な仕事というのは、企業に就職してもなかなか自分の手では経験できることではないようだ。現場を見るという点で言えば、バイヤーなどの職種に就く人は、川上まで遡って情報を収集したり現場を見たに行ったりするのかもしれないが。とくに大きな組織では、モノを扱う業界でも、川上は組織の一員としては見えづらい部分だろう。
あらゆるモノのサプライチェーンの川下に日々直面する私たち消費者にとって、川上の仕組みって普段触れられない貴重な光景だ。様々な業界にとっては自身がお客さんとなる立ち位置で、川上に行くと「下請け」なんて表現をされることもあるが、そこがなければ自分のもとにモノは届かない。

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今はサプライチェーンの中間が省略され、「生産者から直接に消費者へ」といった文句が聞こえよく、それがこれからのあるべき流通の在り方のように表現されやすい。もちろんそうした側面もあり、消費者にとってのメリットが追及された結果であるはずだ。けれども、そのモノに対して圧倒的情報強者である生産者から、その差が埋まりつつあるとはいえ従来圧倒的情報弱者であった消費者に低品質なモノが流れないように、流通業者がモノの良し悪しを見極め、価格をつけることで情報格差を埋め、消費者を守る機能もサプライチェーンの中には備わっているはず。そのようなことを、生産者からモノを引き継ぎ、市場に流すなかで改めて実感している。

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モノが生産されるところ。値段がついていない、ただのモノに、初めて価格という客観的指標が与えられ、わかりやすくモノの価値が示されるところ。ここがなければ経済活動が始まらない、そんな場所に毎日立ち会うことから得られるものはなんだろう?ここから見えることはなんだろう?と考える。ここにきて日々学びを感じている一場面だ。

まちの魚屋や八百屋も悪くない。押さえておかなければいけない社会の仕組みの基本的な学びがここにあるようだ。

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