【小説】SNSの悪夢
「そんなの俺の手とは限らないじゃ無いか。」男が怒鳴っている、証拠が有ると言っても、怒鳴ればなんとかなると思っているのかもしれない。
「こちらの方の動画で確認しましょう、それでハッキリするでしょう。」警察官が呆れた表情で答えた。
「あなたの手は特徴的だから、きっと見れば解かりますよ。」男の方を見ながら説明する。
普段は人の手など気にした事は無かったが、彼の手には特徴的なほくろが有った。
何か虫でもついて居るのかと考えて、捕まえた時に良く見たが、どうもほくろの様だった。
男が自分の手を見て、思わずなのだろう、手のほくろを隠す、もう1つの手で隠したところで、見られているのにな。
「動画を見せて貰いましょう。」警察官の声に強い響きがある、何もしていなくてもそわそわする声色だ。
「これに入ってます、どうぞ。」と携帯を差し出す。本当は動画用のカメラにした方が綺麗に撮れただろう。
だが、そんな物を持っていたら、警戒されて犯罪を写す事は出来ない、携帯なら誰でも持っているし、手を下していても不自然じゃない。
小さい携帯にその場にいる人間の目が注がれる。
警官は厳しい顔をして、画面に見入る。
駅員は困った顔で男を見る。
女性二人は男が強姦魔に感じている様で、出来れば距離を置きたいらしい、少しづつ後ずさっている。
男は何が悪いんだと言いたげに、腕を組んで見つめている、腕を組んでさえいれば、問題解決すると言わんばかりだ。
「どうです、この動画で手のほくろが見えますよね、その手が痴漢をしているのも解かる筈だ。」そう言い切った。
「大体、チョット触られたくらいで、大げさなんだよ、スカート穿いてたら、触られるでしょう、嫌ならパンツで電車に乗ったら良いんだよ。」完全に開き直っている。
「あなたはこれが自分だと認めるのですね。」警察官が落ち着いた口調で聞いている。
「動画が有るんだから、否定しても仕方ないでしょ、ハイハイ私がしましたよ、でもどうせお金でしょ、女なんて皆そんなんだから。」問題発言をしている。
「あなたを不同意わいせつ罪で逮捕します。」警察官が淡々と言葉を継げる。
「逮捕って、そんなたいそうな罪じゃ無いじゃ無いですか。」納得いかない声が響く。
昨今は痴漢で捕まる例が多いというのに、こいつはまるで知らなかったんだな。
この逮捕をあの女は如何するのだろう?
まあSNSで非難されたのだから、SNSに晒すとするか、SNSの恨みはSNSで晴らす。
そう考えると、何だかすっきりしていた。
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