見出し画像

私が愛したお笑い芸人

仕事は、お笑い芸人。
売れてない。
コロナでバイトもなくなった。

実家暮らし。
一人暮らしをしたこともない。

ヘビースモーカー。
ちなみに、お酒は一滴も飲めない。

パチンコが趣味。
負け続き。

ナンパが日課。
渋谷で、新宿で、池袋で。
マッチングアプリも。

常にお金がなくて、イライラしていた。

顔はそこそこ良いからデートの相手には困らず、芸人仲間とするナンパも楽しかった。
女の子と夜を過ごした後、コンビニに行くとみんな奢ってくれたし、お小遣いをもらって生活していたこともある。

最初は良いが、女の子たちは仲良くなるほどメンヘラになる。自分を良い子に見せようとして嘘をついたり、こちらの機嫌をうかがってきたり、謎の被害妄想の末に噛みついてきたり。ベッドに行けば機嫌が直ることは分かってるけど、なんか無性に腹が立った。

うまくいくのは、ちょっと変わった女の子ばかりだった。おもしろいと思える子じゃないと抱かなかった。つまらない子を抱いたら、そのつまらなさが伝染してしまう気がして。

おもしろい方に、楽しい方に。おもしろかったらなんでも良い、そんな生き方が好きだ。そんな生き方しかしたくない。

仕事の方はというと、全然うまくいかない。数年前に相方が芸人を辞めて、コンビを解散してからずっと、新しい相方を探している。はやく漫才がしたいのに、やりたくもない漫談やコントをひとりでやっている。

すぐに相方を見つけるつもりだったから、真剣にピンネタを考えたこともない。嫌になる。芸人を辞めることもよぎったが、俺にはコレ以外できることがない。あぁ、はやく漫才がしたい。

テレビの仕事が来た。地上波ではないが、売れてる芸人の冠番組だ。俺の生き様が活かされる時が来たか、と思って頑張ったが、全然ダメだった。普段しないエゴサーチをしてみたが、たったの3ツイート。見たことのあるアカウント名だったし。いつも劇場にくるコアなお笑いファンだろう。

人に優しくできない。優しいふりはできるけど。
人が寄ってこない。いつの間にかみんな離れていく。

ネタ見せのときには、「そんなんでウケると思ってんの?」とか言われていつも怒られるし、ついにはマネージャーも付かなくなった。鳴かず飛ばず、事務所をクビになりそうになったこともある。

好きになりそうな女の子もいたけど、女の子って突然離れていくよなぁ。

後輩はどんどん売れていく。たしかに、俺よりも遥かに頑張っていた。

パチンコに行こう。
マスクで顔も分からない女の子をナンパしよう。
タバコも買わなきゃな。
いったい俺は、何がしたいんだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?