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ハリーマ アデンさん(ヘジャーブを纏うスーパーモデル)復帰はVogue Arabia。イスラミックファッションって?

スカーフをしたスーパーモデルがいる、どこかで話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

彼女の名はハリーマ アデン。2017年ランウェイデビューを飾るも、2020年に引退を表明。しかし、この5月に2023年Vogue Arabia表紙を飾ると共にファッション界に復帰しました。

私はなるべく宗教的な話は避けて通りたいと、常日頃思っております。しかし、日本でも「イスラム教ファッション」を理解するスタイリストさんが増えて欲しいと思い、今日は記事にしていきます。最後まで読んで頂けると嬉しいです。

まずは、ハリーマさんがなぜ引退を?

葛藤の末ファッション界を去ったハリーマさん。日本でも、記事がいくつかありました。その中でも、私はVogue Japanの記事が、ハリーマさん自身の声と一致していると思いました。



さて、ハリーマさん。彼女の産まれはソマリアとのこと。

私が働く歯科医院にはソマリア出身の患者さん達もいらっしゃいます。

ほぼ共通して、ソマリア出身の患者さんは、美に関する基準を、自分の中でしっかりと持っていらっしゃいます。歯科医院なので、口紅は治療の前ですと邪魔になってしまう事は伝えていますが、それでもフルメイクでいらっしゃいます。洋服もオーダーメードなのか、完璧なトータルコーディネート姿。スカーフ、シャツとスカートと同じ布だったり、色が合わせてあったり。

勿論、人それぞれですが、この歯を、こうして欲しいと具体的に仰る方が多いです。クリニカル以外でスタッフの事にも気になることは口にして、意義を唱える事を恐れません。

また、家族、親戚やコミュニティの関係も深いです。支え合いの文化で、一人からクレームが上がると、次の日に別の家族から電話がありお叱りを受け、全然止まりません。一度クレームがあると本当に大変でスタッフも疲労困憊。出来るだけ、お互いにそういう経験はない様に気をつけています。

私がお会いする人はUAEの歯科医院で出逢った経験談で、現地と違いはあると思いますが、ご参考までに。


私の宝物です。

イスラミック ファッションとは?

イスミック ファッションとは、信仰心を大切に「美しいものは隠す」スタイル。何をどう隠すかは、人それぞれです。ここにその人が大切にしている信仰心が現れるので勝手に踏み入る事はできないところです。


モデルは魅せる仕事。


信仰心からくる模範的な行動規範と、モデルとしての仕事と。相反する様にも思える中で、彗星の如く登場し、ヘジャーブをしたモデルとして世界を牽引したのがハリーマさんでした。


イスラミックファッション=ヘジャーブだけではないのですが。まずは、ヘジャーブについて、普通の人に、なぜヘジャーブをするのかを聞いてみました。

ヘジャーブをする/しない?


私の親戚に聞いたところ、こんな例えが返ってきました。個人的な意見ですので、ふつうの人がどう考えているか、の参考に。

チョコレートを思い浮かべてください。スーパーに並ぶ板チョコと、きれいに包装され、箱に入った高級チョコレート。あなたはどちらを好みますか?私は後者。それが私のチョイス。

なぜヘジャーブをするのか?

恐るべきは、嫉妬の目。美しい髪を出して嫉妬されては困るから。

なぜヘジャーブをするのか?別の人の答え。


私個人的には、ヘジャーブをしている人は、自分がとっても魅力的なのをよく知っていると思います。グラマラスで、美しい人達です。長く艶やかな髪は美の象徴。髪の毛を出したり、身体の線が出る装いをすることで、よからぬトラブルに巻き困れる事がないように、といった防犯の意味もあると思います。あとは、砂と太陽と。中東の厳しい環境の中にも適した装いなのではと、思っています。

私も16年位前は、ヘジャーブをしていた時がありました。それでも、日本やヨーロッパに行くときは、郷に入っては郷に従え、ではないですが、ヘジャーブはしませんでした。これも、私なりの考えでそうしていたのですが。帰りの飛行機がドバイに近づくと、サッと鞄からスカーフを出して、空港に降りる時は髪が見えないようにしていた記憶があります。これも私はそうしていただけで、色々な人がいますから。


人それぞれですが、ハリーマさんが、もしも鳥なら羽を繕って繕って、飛べなくなるまで、頑張ったんだろうなって。どれほど強い意志で、ヘジャーブを纏っているのかという彼女の気持ちに想いを馳せながら、今回の記事を書いています。そうはできなかった一人として、凄いなと思いがら。


ハリーマさんが復帰を決めたVogue Arabia


VOGUE ARABIAが創刊されたのは2017年3月。UAEを拠点に、サウジアラビア、バハレーン、カタール、クウェート、オマーン、ヨルダン、レバノン、UAEで販売されています。

中東ですから、色々と編集に気を使っているとは思います。でも、肌を見せる写真もあるのですよ。

えっ、いいの?と思われた方いますか?

そうです。そういう写真もあります。

アリなんだなぁと、思う人もいるし、いや、絶対にダメでしょって思う人もいる。アラブといっても、多様な人種や宗教と文化が共生していて、色んな人が色んな考えを持っています。


Vogue Arabia創刊号2017年3月 アラビア語表紙 右始まり モデルはジジ。
英語表紙 左始まり

Vogue Arabiaは1冊が2言語で構成されています。アラビア語版は右から、英語版は左から。表紙が2つ、両面始まりです。両言語で共通の記事もありますが、記事、写真、広告の内容は時に異なります。

2019年 3月 創刊から2年後の記念誌 アラビア語表紙 モデルは創刊号と同じくジジ。2年を経て、創刊号とは全然違う雰囲気です。
英語表紙 アラビア語表紙とは、スタイリングも違いますね。

写真として残して良いのか、否か。スタイリングの段階で、誰かがリスペクトされていないと思う様な事がない様にと、読者としても、そういう視点も持って見ていきたいと思います。


16年前、私がUAEに来たばかりの頃の雑誌は、写真の大部分を黒いペンで塗りつぶしてあったりもしました。そういうページが何枚も続いて、雑誌を買う意味あるのかなって思うくらいでした。昔の思い出ですが、昨今も時々あるのですよ。欧米フレグランスの広告で、一部を黒いペンで塗ってあるのを見た気もします。


「長いスカートとヘジャーブだけをしていた頃」が意味する事。


ハリーマさんも、長いスカートとヘジャーブをしている頃だったのに、2019年にあるブランドの広告でジーンズを頭にかぶる様な写真を撮った事、そのスタイリングにNoと言えなかった事が自分の心を苦しめたと語っています。それだけではなかったと思いますが、大きなきっかけの一つだった様です。

「長いスカートとヘジャーブだけをしていた頃」ということは、とても保守的なスタイルだった、という意味です。パンツスタイルはしないというファッションポリシー。

イスラム教ファッションにも様々な人がいます。

自分はこうすると決めると、日々そのポリシーに沿って装います。服装によってある程度、出身国や地域性、宗教宗派など分かるのですが、ここでは明記を避けています。

例えば

目しか見えない装いにも種類があります。

  • ブルカ、目しか見えない様に全てを覆っている人。

  • 目しか見えないけれど、一体型のアバヤではなく、ヘジャーブは何層にも渡り、アバヤにもデザインがあるドレッシーな装い。

  • 伝統的な装い。

アバヤと呼ばれる全身を覆う装い。

  • プレーンなデザインがないアバヤ

  • デザインありのアバヤ:刺繍、ビーズ(黒だけか、色ありか)

  • アバヤの色:黒/それ以外(紺、ダークカラー、アースカラー)

ヘジャーブの違い

  • 黒か黒以外かという色の違い

  • 素材のこだわりの違い

  • ヘジャーブの撒き方の違い

アバヤは着ない派

  • ヘジャーブはする。そしてスカートだけを履き、パンツスタイルには絶対にならない人。

  • ヘジャーブはするが、パンツもジーンズも履く人。

  • ヘジャーブはするが、アバヤは時々着る人。

アバヤもヘジャーブもしない派

  • アバヤもヘジャーブもしないが、できるだけ体の線が出ないように努めている。

  • アバヤもヘジャーブもしないが、半袖よりは長く、ひざ下よりは長いスカートを履いている。

  • アバヤもヘジャーブもしないし、上記全てに当てはまらない。

などなど。

こういうファッションは家の外だけ?いえ、そう一概には言えないのです。

例えば、我が家のお手伝いさんは、エチオピア出身。いつもヘジャーブをしています。彼女の部屋にいる時以外は、ずっと。普段は目しか見えない様にヘジャーブを巻き、仕事をしています。本当に人それぞれ。そして、それが彼女が大切にしている事です。



例えば、暑いし掃除するのにやりにくいんじゃない?ユニフォームを着たら?なんて言っても「いやです」という返事があり、気まずくなるだけ。自分の信念を持っての行動です。彼女にとっては、そうする事が「ふつう」なので。

だから、私が出来る事は、そっとしておく事。いい香りが好きなので、柔軟剤は彼女の好きな香りにしたり、家に炊くお香は何種類か揃えて好きに使ってねって置いておいたり。些細な事ですが、それが彼女と私を繋いでくれています。


この記事が、スタイリストさんの、ファッションが好きな方のお役に立てたなら嬉しいです。

Vogue Arabiaにて、3年の時を経て復帰したハリーマさんの記事


編集長の手紙

それでは、さようなら。
今日もいい1日を!

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