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パスポートをどうぞ

先日、突然見知らぬおばあちゃんに「わたしのパスポートをどうぞ」と声をかけられ手に何かを渡された。渡されたのは、どこかの店のショップカード。
 
続いて「フロントはどこ?」と聞かれたので、お、と思って「パスポートありがとうございます。頂戴しました。フロントどこでしょうかね」と言うと、にっこり笑ったあと目を潤ませた。「そうねえ…フロントがね、どこの階にあるかわからなくてこまっちゃうのよ。あのねえ、わたし家を出たのよ。帰りたくてね」とゆったりと話す。
  
交番にご一緒に向かう間もずっと、海外の話をされている。スイスの鉄道が怖かったこと、バルセロナのグエル公園がきれいなこと、タイでへんなTシャツを買っちゃったこと。海外旅行がお好きだったんだろうなあ。
 
もっとお話を聞いていたかったけど、このあと予定があるので断念。交番についたあと後ろ髪ひかれながらバイバイすると、「あら、グアムにいかれるの?」と優雅にたずねてきてくださった。グアム。いいなあ。たしかに行ってみたい。

これからわたしが歳を重ねて認知症などの状況になったときに、自分に残るものが、楽しいものや好きなもの、自分の心にかなうものだったらいいなあって思う。そのおばあちゃんの頭の中は、楽しいことや好きなことで埋め尽くされていて、それが愛しく、すてきだった。

家に帰ってこの話を娘にしたら、ショップカードを手にして「パスポートじゃないやん」と言われて笑ってしまった。「学童でつくったお砂場のケーキ、ケーキじゃないやんって言われたら、ちょっとさみしくない?」と言うと「それはそうやな」と笑われた。でしょ。

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