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【読書記録】原田マハ『モダン』

私が原田マハ作品で最初に読んだ本である。
選んだ理由は、短編集であり、単純に読みやすそうなページ数だったからだ。

「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」で繰り広げられる物語。
どれも親しみやすく、すっと感情移入が出来るなというのが全体を通した印象。美術作品の知識がなくても楽しめる。むしろ知識の有無は関係ないだろう。

モダン・アートの聖地、ニューヨーク近代美術館ーMoMA。ピカソ、マティス、ルソー、ワイエスなど20世紀絵画の巨匠たちの作品が綺羅星のごとく並ぶこの美術館を舞台に、アートを愛するさまざまな人の夢や苦悩、人生の決断を描く。

原田マハ公式ウェブサイト マハの展示室 https://haradamaha.com/

特に私が気に入った章は、「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」だ。

アートに関しては特段知識も関心もない監視員(セキュリティ・スタッフ)が主人公である。ネタバレを踏みたくないという方もいらっしゃると思うので詳細は割愛するが、アートには言葉にすることが難しいような、不思議な力があることを感じさせる物語だ。専門知識があってもなくても、アートは人の心を動かすのだろう。

MoMAという場所が、その人にとってどのような場所であるか。
アートが、その人にとってどのようなものであるか。
立場によって視点が異なる。その情景が丁寧に描き出されていた。

美術を題材にしているからというだけで気になって読んでみたが、ますます他の原田マハ作品を読んでみたくなった。
ちょっとだけ美術史をかじった人間としては、原田マハ氏の絵画描写や背景描写は如実かつ繊細で、彼女のアートに関する造詣の深さに圧倒される。

一つの物語あたりおよそ20分程度で読めるので、ぜひ気軽に手にとってみてほしい。

(ちなみに、以降原田マハ作品の記事が続きます。)

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