見出し画像

数字と時間、そして人

お店の営業に対して色々思うこと。
悩んでいるわけではないけど、商品の価格やお客さんへのサービス面について。

対面で美味しかったなどの感想はよくいただきニヤついておりますが、その他の意見というのはレビューなどを拝見して知る事もあります。
うちはワンオペなので他店よりも、サービスやスピードでは間違いなく敵うわけがありません。

そこに関してはオープン前から重々承知で、むしろこれから老いていくばかりですし、スピードに関しては身体的にたぶんピークを迎えていて、これから先速くなることはないでしょう。
6席しかないのも、この数が自分の捌ける限界数だと思ったからです。正直なところこの6席でも時には大変です。

他店にサービスやスピードで敵わない部分は常に営業中、頭の片隅にあり自分的には円滑に色々と回しているつもりです。

接客態度に関してはあまり強弱をつけずに一定の水準を保っています。もっと明るくもぜんぜんできるけど自分にも日々調子があるし、お客さんの方もフレンドリーな接客を好まない人もいるだろうし1列のカウンター席で極力、ムラが出ないようにあえての事です。
それが無愛想であったら申し訳ない。



うちはフルオープンのカウンター席でお客さんの視界から、手元まで全て見えるようになっている席である意味ミスが許されない現場ですが、ミスは当然あるしワンオペが故、誰かがカバーしてくれる事はなく自分でカバーしなければならない。

忙しい瞬間は頭よりも体で動いてる感覚で、ちょっとのアクシデントが大きく作業に影響します。

空間としては慣れましたが毎度、お客さんの目の前で緊張感を持って動いています。
本当は楽しく会話を繰り広げながらやるつもりで席との距離感を考え作ったけど、あいにく自分はそこまで器用ではなく忙しい時はそんな余裕もないようです。


ハンバーガーもエスプレッソも夜の料理も全て僕が好きで、人からの美味いが欲しくてやっている事。
量産して金儲けがしたい訳ではない。
それでも迷惑にならぬようスピード感を持って動いているつもりですが、スタッフを1人置いてもいい瞬間もあります。雇わない理由は色々ありますが、前にも書いたので割愛します。

有り難い事に最近は来店してくれる方が増えてきました、その反面レビューによく時間が〜と書かれているのが目につきます。
もちろん書いている方が悪いという事ではありません、事実です。
お客さんが増えれば増えるほどそうなることは必然ですし、うちは早い安いを謳う店ではないのでそう思われても仕方ないでしょう。

この文章を読んでくれる方がどれだけいるかわかりませんが、理解してもらう為にあえてフラグを立てておきます。


価格に関しても僕自身、うちの商品が安いとは思えません。高いとも思っていません。
日々のランチに使う金額として考えるなら高いでしょう。そもそもそこの土俵で考えておらず、K'ingsmanの食事=敷居の低いカジュアルな御馳走にして欲しいと考えています。

うちは普通に賃貸で物件を借りてやっている店舗で、仕入れも特別ルートがある訳ではなく普通の仕入れをしています。
特別な仕入れは熟成する肉ぐらいで、あとは全部通常の仕入れルートなので、自前の物件などで商いをしている方に価格競争で敵うわけもない。
唯一そこで勝る部分と言えばスタッフを雇っていない事でしょうか。

価格的な話をすると競合店?とするような同業関連と比較し戦っているつもりです。
僕の値付けの感覚に人件費は入っておらず、K'ingsmanを動かしてもらう対価としての価格設定をしています。

ハンバーガーはダブルを推奨しており、そのおかげで値が張っているように思うでしょうがダブルだからです。
パティが1枚100g弱の設定でシングルだと他店よりもパティのグラムが少ない、ダブルだと他店のより多い。おそらくパティの量からすれば高い値付けではないはずです。

ステーキ屋さんで200gのステーキとご飯とサラダ的なランチをすれば2000円ぐらいになるんですかね?バンズがあって他の具材やソースがあるハンバーガーだってそうゆう事です。

飲食店の商品にかかっている代金は材料の原価のみで考えていては赤字になるでしょう。食べる人は材料原価のみに捉われがちだけど、飲食店はそれではやっていけません。僕も計算は苦手で売上の事など、全て外部の人にお願いしております。少し前に値上げを試みたのもご指摘を受けたからです。
僕にも大事な家族がいて、その家族に苦労をかける訳にもいきません。
自分で選んだ道を進ませてもらっているのだから、それは僕にとって大前提です。

ハッキリ言って飲食は一部の店を除いて薄利多売なお仕事で日々一品ずつの積み重ね。しかも物作りの職人などとは違い注文を受けた料理をその場で即座にジャンジャン作るお仕事。
個室で集中して何日もかけて何度も確認しながら納得するまで造りこむ訳ではなく、お腹を空かせたお客さんの目の前で腕を奮うのです。

飲食店は皆様が思っているより割とスリリングな現場です。恥ずかしながら色々と言葉を吐きましたが刺さって欲しくて書いているわけではありません。これがK'ingsmanの、また飲食店の現状です。

僕は力士を辞めて飲食店に従事し、飲食店に対する意見が変わりました。力士の頃は散々飲み食いして、ごっちゃんでしたで終わり!
いま考えるとあれだけの量を作ってもらった上に上げ膳据え膳、あげくご馳走になっていた。
感覚が狂いそれを当たり前ぐらいに思っていた当時の自分にゾッとします。


飲食業界は華があるお店がある一方で万年スタッフ不足に悩んでいるお店も多数。
数字に向き合いヒリヒリしながら日々をこなすお店も。日本はサービス精神が旺盛で大手のチェーン店や一部の個人店は、凄まじく安い価格で料理を提供してますが昔からの価格競争の末、今の日本人の感覚が出来上がっているのだと思います。

うちでハンバーガーを1つ食べると大手チェーンの回転寿司店では寿司を10皿ほど楽しめるわけです。
考えられない価格設定だし、食事をする際多少何かの問題があっても文句を言うほどにはなれません。逆にその価格で簡単に寿司が食える事がどれだけの人の努力の上にある事なのか。もちろんこれは一つの例だし自分の個人的な意見。

僕の知人も飲食を辞め違う仕事に就いた人を何人も見てきました。
見合わないんでしょうね、主に仕事の内容に対する報酬などが。

自分も皆様に美味いと言ってもらう快感と食が好きでなければ、これを仕事には選ばなかったでしょう。色々考えたら飲食ではない事をお仕事にする気がします。


何やらまた、ぼやきのつもりが長くなりました。
すみません。
書くつもりもなかった話ですが、飲食店に対する仕方ない現状をもう少し理解してもらえる世論が増えればいいかと思い書かせていただきました。

K

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?