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2. 思春期の娘とお父さん


 子どもたちの言動にキュンとさせられることが本当にたくさんあるのですが、その中でも私にとって致死量のキュン事例をいくつか紹介させていただきます。


【2. 思春期の娘とお父さん】


 その子は中学入学と同時に実家を離れ、寮生活を送っている。小学生の頃から、その娘さんはお母さんと反りが合わず、両親と話し合った結果、この進路を選んだのだと。

 私が初めてその子にお目にかかったのは、そんな生活も折り返しを迎えた頃。一応お父さんが付き添って来たものの、大人相手に彼女自身で全て受け答えをしており、「しっかりとした快活そうな女の子」という印象を受けた。


彼女は今、新しいメガネのフレームを選んでいる。

「えー、どれがいいと思うー?これかわいい!あ、でもこれもいいかも…」

鏡に向かって楽しそうにいろんなメガネを試着中。

「んー、それよりこっちの方がよくない?」

とお父さんが言うと

「え?こっち?うーーん、でもこれもよくない?」

「え、奇抜すぎない?」

「え?そう?かわいいって」

「んー、こっちの方が似合うと思うけどなぁ…」

「えー、だってこれ、なんかちょっと地味だもん…」

「地味じゃないよ、ほら、似合うって」

「うーーーん、、」


うん、楽しそう。笑

穏やかで幸せそうな空気が溢れてる。

おごちそうさまです。笑



しばらくすると、

「ねぇ、選ぶのまだ時間かかるでしょ。気が済むまで選んでいいからさ、パパもう、仕事戻ってい?決まったら連絡して。」

と仕事を抜けて付き添っていたお父さんが、鏡に向かってメガネを試着している娘の右後ろから、肩越しに声をかける。


「いいよー!」

と言いそうな雰囲気だったのに、彼女は途端に黙り込んだ。

アレ?

そして次の瞬間、

お父さんの左腕に両手でしがみつき、うつむき加減に小さくふるふる、と首を横に振った。



死ぬかと思った!

ニトロ!と思ったくらい心臓が締め付けられた。笑



「いやだ」も言わない。

「まだ一緒にいたい」もない。

「パパとメガネ選ぶの楽しい」も。

「一人は寂しい」も、

「明日には寮に帰るんだから、今くらい、もうちょっと一緒にいてよ」も、

「ママじゃなくて、パパが一緒に来てくれて嬉しかった」も、

「私のために仕事抜けて来てくれてありがとう」も、

「あんまり派手じゃないのを選ばせようとして言ってるだけかもしれないけど、パパが『似合う』って言ってくれたやつなら、それでもいいかも、、」も 

何も言わない。

でも、きっとそんな全てが込められた、「無言のギュっ、ふるふる」だったんだと思う。



反抗期の中学生でも、しっかりしてそうに見えてても、親元離れて“楽しそうに”やってるように見えてても、やっぱり愛情を求めてるのかな?

きっとそうなんだろうね、欲しいよね、と思った事例でした。


10年分くらいのほっこりをありがとう。(寿命縮んだのか、延びたのか)




思春期の娘が父親を遠ざけようとするのは、近い遺伝子同士が結びつくことを避けるため、とも言われています。遺伝子に組み込まれているのだと。

だから、世のお父さんたち、年頃の娘さんたちに嫌がられるから、と落ち込まないでください。動物としての遺伝子がそうさせているのですから。


ただ、人間は動物としてだけじゃないことをする生き物です。

父と娘のこんな素敵な関係性を目の当たりにすると、私は「よかったね、お父さんと(娘さんと)そんな素敵な関係性を築けて」と泣けてくる。


「お父さんと」じゃなくていい。

「いつも」じゃなくていい。

成長や、家族の状況の変化に合わせて、その時その時、愛情を求め、与えればいい。

そのタイミングが合うことは、そう多くはない。

だから、印象に残る。

「あ、求めた時に与えてもらえなかった」とか

「あ、求めれば与えてもらえるんだ」とか

「なんか分からんけど、ぴったり合った」とか。

そういう積み重ねで、“信頼”とか、“大切”とかって湧いてくるんじゃないでしょうか。



「短い周期で三日坊主を繰り返せば、それは三日坊主じゃなくて、習慣となる」

2週間ぶりに書いてみました(下書きはいっぱいあるんですけどね)。

年の瀬迫ってきたこの時期、寒さ・忙しさありますが、どうぞご自愛ください。



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