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1.中期中絶を繰り返す不倫カップル

 
「妊娠する前・させる前に知っておいてほしいことがある」という気持ちで活動している助産師です。
産婦人科の現場で見聞きした実例をいくつかお伝えしたいと思います。ご興味のある方はどうぞ。(シリーズ予定)
怖いもの見たさでのぞいてみたい人もどうぞ。
ただし、読んだ後の責任はとりません。


 同じ職場で働いている2人。男性は40-50代妻帯者、女性は20代前半独身。女性は20歳で地方から都会に出てきて今の職場に就職。
 今回3回目の妊娠。全て同じ男性との間の妊娠。1度目は自然に流産。2度目は膣から掻き出すという方法が取れる週数を超えて(妊娠12週0日以降)の中期中絶※1となったそう。3度目の今回も同様の方法で中絶することになり、入院してきた。
 当時の私は20代後半。それなりに助産師としてできることも増え、今回初めて一人で中期中絶を任された。初めての中期中絶介助が希望の中絶※2。。。気分は沈む。

 中絶前の準備の段階で「同意書」にパートナーの同意を表す署名がなかった。

 私は、女性自身が、主体的に、妊娠を継続するか中断するか決めることを推奨する。ただ、このカップルの場合、パートナーの意思でこの時期の中絶なのだと。
「相手は中絶に同意してます。むしろ、『絶対産むな』って言ってる。」
それならば尚更、同意書に署名していいのではないか?

 ま、できないよね。
「自分との子どもを、妻以外の女性のおなかに宿しました」
ということを認める署名になるんだから。

 「そんな覚悟もない相手にいつまでも縋らないで。あなたはもっと大切にされるべき人なんだよ」
と翌日に退院前の彼女の病室で伝えてみたけど、どうかな?伝わったかな?


 もう一つ引っかかったことが。
「緊急連絡先」の記載がなかった。
「ご家族は?もしあなたの意識がなくなったり、命が危険にさらされたりした場合、どなたに連絡したらいい?」と聞いたら、
「そんなことにならないようにして」と。
そりゃもちろん、そんなことにならないように全力で努力するし、祈るけど、どうしようもならない時はある。
「あなたがしようとしている中絶っていうのは、文字通り命懸けのことなの。だからもし、万が一のことが合った場合に備えて、緊急連絡先は教えてもらわないといけない。」
「お母さんは携帯を持ってないから、実家の電話番号です。でも、もしお父さんが出ても絶対何も言わないで。」
「どうして?」
「お父さんにバレたら、絶対怒られる。。連れ戻されてしまう。。」
「あなたのことを大切に思う人だったら、中期中絶をさせられるような環境から救い出したいと思って当然だと思うよ?」
「………」

この時期になってから中絶しろって言われるなんて、相手の男性はあなたの人生も、あなたの命も軽くみてるとしか、私には思えない。
私があなたの友達だったら、その男殴りに行くし、あなたにも「お願いだからそんなやつとは別れて」って泣いてお願いする。

とはあの時の私は言えなかった。若かったのかな?今なら言っちゃうかも。


・この子は一体、どんな家庭で育ったのだろう?お父さんは厳格な人なのか、それとも暴君のような人なのか?
・今の時代に40―50代女性であるお母さんが携帯電話を持っていない、というのは、気になる。夫が妻の交友関係をも管理するような、DV的な夫婦なのか?
・緊急連絡先に母というのは、この子の気持ちはお母さん寄りなのか?支配的な父親に怯えて母と娘肩を寄せ合ってきた親近感なのか、それとも「しゃーなし」「どうしてもどっちかを選べと言われたら」という消去法で母なのか。「家族を」と言っても、「家族はいない」などテキトーにトモダチの連絡先などを言う人もいるけど、咄嗟にそこまでの頭が回らなかったのか、「自分が死んだら」とリアルに想像した時に「お母さんには知って欲しい」と思ったのか。
・そもそも、妻子持ちで父親ほど年齢の離れた男性と不倫関係になり、何度も妊娠と中絶を繰り返す。その関係を冷静に判断できていない。それはなぜ?知的レベルが低いわけではなさそうだが。相手の男性に溺れている、もしくは縛られているのか。脅されて?沼るポイントはどこ?お金?甘い言葉で承認欲求を満たしてくれるから?
・そして相手の男性はなぜこの子とこんな関係を続けるのか。まぁ、地方から出てきたばかりの若い女性は狙いやすいよね。右も左も分からなくて不安なんだから、優しい言葉をかけ、「かわいいね、自分は君のこと理解してるよ」と話を聞いて共感してやれば、信用させるのなんて簡単なんだから。ましてやその子が支配的な家庭で育ったのであれば、自分が支配的に振る舞える(支配されることに慣れている人間は、「支配されている」「抑圧されている」「縛られている」とは感じにくい)。まさにこの子は一部のオトナにはカモネギ。支配欲なのか、承認欲求なのか、家庭と職場では満たされていない感情を彼女が満たしてくれるからなのでしょう。妻やこどもには口では敵わない?仕事でも認めて欲しいほど認められない?で自分より弱い立場の者に強く出てるの?お山の大将か。ダサ。
・相手の女性が妊娠を繰り返すということは、避妊せずにセックスしてるってことでしょ?妻との相手に子どもがいるなら、避妊しないセックスがもたらす結果なんて分かってるでしょうに。。。なんて人命軽視で女性軽視で自分勝手なの!?
・なんでそんな扱いされて、その関係を続けるの!?もっと自分を大切にして。。。


あなたはどうですか?
このストーリーから何を思い、何を参考(教訓)にしますか?
親御さんの立場の方々へ。お子さんとのご関係、いかがでしょう?
お子さんの発言を否定していると、「どーせ、ダメって言われる」「どーせ、分かってもらえない」と何も話してくれなくなる可能性が高いと言われています。

3人の赤ちゃんが、文字通り命をかけて彼女に、相手の男性に、私に、あなたに、伝えたかったことはなんだったのでしょう?
私はこの事をみなさんに伝えすることが、赤ちゃんたちの命を無駄にしない事、報いる事だと思っています。
知ったあなたには何ができるでしょう?

くれぐれも、ご自分を大切にしてください。
自分のことを大切にできる人が、パートナーのことも、家族も、周りの人たちも大切にできると思います。

※1:中期中絶:妊娠12週0に日以降に人工妊娠中絶を希望する場合、「分娩(下からのお産)」という形をとる。中絶が終了すると、児の死亡確認がされ、死亡診断書が発行される。(基本的には1泊以上した後)死亡診断書をもって、火葬場に行き、火葬を済ませなければならない。戸籍には中期中絶したことは残らないが、子どもの遺体を期日までに火葬手続きを取らなければ、警察に捕まる。

※2:中絶は「母体保護法」という法律に基づいて行う。母体保護法指定医という中絶ができる医師が、この法律の中絶適応条件に合うと判断した場合にのみ行われる。「中絶したいです」という患者さんの希望に応じて行われるわけではない。
 ただ、現実的にはその多くが「妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」という条件に当てはまるとして、いわゆる「希望の中絶」が行われている。

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