見出し画像

母から私、私から娘

娘がお友達と都内のライブに行くのに、駅まで送ったときのこと。

出がけにアクシデントがあり、家を出るのがギリギリの時間になってしまった。車に乗って出発しながら、スマホもった?Suicaは?お財布は?と確認していて、少し走ったところで娘が「あ……」と言った。
なに、戻る?と言いながら、戻ると時間がさらにギリギリになるなぁと思っていたら、アクセサリーを全部忘れた、でもいいや、と言う。結構気合を入れておしゃれをしていたので、ちょっとかわいそうだなと思いながら、まあ時間もないしね、とそのまま進んだ。

5分くらい運転して、ふと思った。その時私は、小さなクロスのヘッドの付いたネックレスをしていた。クロス部分にダイヤが並んでいるもので、母が生前使っていたものを形見分けでもらったものだ。
華奢なデザインが似合う娘には少し大きめかなと思ったけれど、Tシャツにブラックデニム合わせてきれいめなコーディネートをしていたので、ごつ過ぎず華奢過ぎずいいかな、と思い、貸してあげようか?と聞いてみた。
試しにつけてみると、いつもの娘のテイストではないけれど、ライブっぽくていいんじゃない、ということでそのままつけて行った。

私の母はアクセサリーをたくさん持っていて、たまに自分が使っているものを「あげる」とくれることがあった。高価なものではなく、といっても母が買うのはいつも貴金属ではあったので、私好みのものだと(ラッキー!)と思いつつ、ありがたく頂戴していた。
娘にネックレスを貸しながら、自分のアクセサリーを娘が着けたら案外似合うものなのね、と思い、母もそんな気持ちで私に貸してくれたり、譲ってくれたりしていたのかな、と懐かしく思い出した。

その話を娘にすると、「そうなんだ~。でもこれは返すけどね。」と笑った。いやいや、これはあげるつもりないから!と私も笑ったが、そのうち、このアクセサリーリフォームして私にちょうだい♪などと言われる日も来るかも、という気もする。
私が母からもらったフォーマル用のパールは、すでに娘の手に渡っている。こうやって受け継がれていくものがある、と思うと、心の奥が少しだけしんみりした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?