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九州ツーリング その6 鳴門


渦の丘大鳴門記念会館

ストリートピアノがあった。

なんとも奇抜な
廃校になった学校のピアノらしい


ヘルメットを横に置き
ピアノの前に座る。

ヘルメットを持っているだけでも
恥ずかしいのに
ライディングジャケットを着て
ピアノを弾くなんて。

座って思い出したのは
少し前に耳コピをしてみた
『ユーレイズミーアップ』という曲。

耳コピとはこうやって思い出すものなのか。

誰も聴いていない中
久しぶりのピアノの音を楽しんだ。


外に出る。

ここは
鳴門大橋が眺められる丘の上。

桜と鳴門大橋


夕暮れが迫ってきている。


来たかったのはこの海。

懐かしいRZ250


19の時に撮った
お気に入りの写真だ。

前に一度、車で来た時は
見つけられなかったこの海沿いの道。

もう一度探すには
くまなく走るしかない。

海沿いを反時計回りに走ると洲本に行く。
そこから高速で鳴門大橋を渡り、四国へ。

検索すると2時間以上かかる。

行くか止めるか。

眼下の道を見ながら
疲れている自分に気づいていた。

これからまだ走るの?

体は正直だ。
疲れていては、楽しく走ることはできない。

次また来る時に。

そう思い、行かない選択をした。


ヘルメットをかぶり
潔く鳴門大橋へ。

やはり風はなく
ゆっくりと走りながら
海を渡るという体験を心ゆくまで楽しむ。

渡り終えるとすぐに
『鳴門公園』という文字が目に入った。

あと30分もすれば
ホテルに着いてしまうのは
もったいないなと思っていた。

そこで寄り道を。

すぐのインターで降りて
鳴門公園の文字を頼りに走り出した。

あっ!鳴門大橋


鳴門公園は鳴門大橋のふもとにあった。

大塚国際美術館

聞いたことがある名前に
あれ?と思う。

閉館時間に近いので
中には入れない。

そのまま通り過ぎて
てっぺんまで行くと駐車場があった。

おじさんが言う。

『渦潮はもう見られませんけど、停めますか?
 バイクは200円です』

「見られないなら帰ります」

そう言って一旦は離れたが
本当に渦潮がないのか確かめてみたい。

むくむくとあまのじゃくな気持ちが湧き
「やっぱり停めます」とお金を払った。


ここは明石大橋とは違って
公園が橋より上にあるようだ。

渦の道まで330m。
それなら行けそう。

言われた通りに階段を登ったら
まさかの鳴門大橋の上を歩道橋で歩いていた。

圧巻の景色


これはいい写真だ。

満足して降り、下っていくと建物があった。

510円!?

渦潮がないかもしれないのに
お金を取るの?

横浜にも同じような施設があることを思い出す。

お金を取るくらいなら
さぞかし、いい施設なんだろう。

そう思いながら歩き始めた。


海の上を。橋の下を。延々と歩く。

どこまで歩いたらいいのかわからなくて
途方に暮れ始めた頃、看板があった。

展望台まであと150m

看板を見ると、すでに350mほど歩いている。

ん?往復1kmなの??

今更、戻れない。
駐車場も払ったし、入館料も払ったし
何よりすでに700m近く歩いている。

大変なことになったな。

風が強くなってきて網の間から
ビュービュー吹き込んでくる道を
展望台まで歩いて行った。

本当に渦潮はない


働いている人はすごいなと感心する。

ほんとに渦潮はないんだ。
それを確かめるためにここまで来たんだけどね。

元来た道を戻る。

途中で疲れて
ベンチに腰かけて干し柿を食べた。


橋の下を延々1,000m。
元の道に戻ってきた。
右に行けば千畳敷展望台とある。

今更だから全部見て来よう。
さらに下る。

ヘルメットと荷物が重い。

着いた。

鳴門大橋と同じ高さ


昔はここから橋を見ていたのだろう。

土産物屋も立ち並ぶここから
橋の下を歩いていた自分を思った。


バイクに戻ろう。

渦の道はもう閉まっている。
最後だったんだ。

坂道を歩く。足取りは重い。

階段を登り、もう一度鳴門大橋の上を歩く。

日本の道100選
桜と鳴門大橋
夕暮れ時の道


記念の石があった。

誰かが好きそうなワードだったので
記念に撮っておいた。笑


駐車場に戻ると
バイクはぽつんと健気に待ってくれていた。

きみもここまで来たね


一緒にホテルに行こう。

下りの坂道をゆっくり走る。

大塚国際美術館
ここにも閉館の文字。

もう、今日が終わるんだ。

そう思いながら下まで降りた。

下の交差点。
さっき覚えたはずなのに
もうどちらの道なのかわからなくなる。

歩道に入る。
グローブをとって、スマホを確認。

県道11号線は左。
よし、今度は間違えないぞ!

道なりに進むと小鳴門橋を渡った。

ぐるっと旋回して
下に降りたあたりで不安がよぎる。

こんな道じゃなかった。

R28を右折。
少し走ってここがどこなのか
またわからなくなり、歩道に乗る。

スマホを検索。

さっき曲がるのを忘れたらしい。
小鳴門橋は偶然通れたんだ。よかった。

新たなルートを頭に入れる。
あまり曲がらないルートがいいな。

少し遠回りでもなるべく簡単な道を覚えて
また走り出した。


夕飯、どうしようかな。
ふと、こんな看板が目に入った。

阿波名物らしい


なるべくその土地のものを食べたいから
これはいいんじゃないかな?

信号で停まったタイミングで悩み
思い切って駐車場に入った。

バイクを停めてヘルメットを脱ぐ。
お店に入ろうとして、西の空を見た。

暗くなったら
ホテルを探し切れないんじゃないだろうか。

疲れていて根気がなくなっている。

食べ終わった頃には橙色の名残は消えて
炭に塗られたような黒一色の空だろう。

1時間後の空を想像して、お店に入るのを止めた。


もう一度、バイクをスタートさせて
車の流れに入る。

この明るさが残っているうちに
ホテルに着きたいなぁ。

R11に入り、県庁の文字を看板で見かけた。

今日泊まるホテルは県庁の隣だから。

がぜん、元気が出てくる。

青看板だけ見てればいいんだ。
県庁の文字は絶対途中で消えない。
これを頼りに走ればいいんだ。

御堂筋のような片側4車線ある道路になる。

街の中心部なんだな。
そりゃ、県庁があるくらいだもの。そうか。

車も増え、なかなか進まない。
ひどい渋滞だ。

すり抜ける元気もなく
とにかく車の列に並んで
県庁の文字だけを頼りに走る。

最後、ホテルの近くでガソリンを入れた。
明日朝、気兼ねなく出られるように。


県庁は左折。
案内通りに曲がる。

県庁を通り過ぎる。
隣の建物のはずだ。

名前を確認する。
着いた!無事に着いたんだ!!

エントランスにバイクを停める。
桜の木が一本見事だったので一緒に写真を撮る。

おつかれさま


停まっていたタクシーから
運転手さんが出てきた。

『遠いとこからようきたなぁ。
 これからどこ行くん?』

ナンバープレートを見て
話しかけてくれたらしい。

「高知から佐田岬に向かって九州に渡ります」
『おう。俺と同じルートだ。
 俺もバイク乗ってんだけどよ。
 あのフェリー、ちょっとしかバイク詰めんで
 予約しといた方がええぞ』
「ありがとうございます。調べてみます」

バイク乗りの運転手さんだった。
疲れがなぜか癒やされた。

がんばってここまで来たなぁ。徳島県。

教えてもらった駐輪場に停めて
重い荷物を下ろし、かついで部屋に入った。


疲れていたので
お風呂に入りたかったが
その前に夕飯を食べねば。

フロントで聞いてみたが
県庁の隣だけあって
嫌な予感はしたが、ここはオフィス街だった。

向かいにコンビニがあるが
そこまで行くのすら面倒だ。

ホテルの14階に向かった。

立派なお店で気後れしながら
お店の前のメニューを見る。

高い!

コースは高いし
第一、夜はそんなに食べられない。

「単品でもいいですか?」

大丈夫ですよと言われて
恐る恐るお店に入った。


パスタを頼んだ時に
『お飲み物は?』と聞かれて
とっさに「梅酒をお湯割りで」と言ってしまった。

明日、二日酔いにならないだろうか。
いや。梅酒で酔ったことはないから大丈夫のはず。

先に梅酒が来た。

夜景がきれい


パスタも来た。

ジェノベーゼのパスタ


熱々で美味しい。
口の中をやけどしそうなほど出来立てだ。

人の作ったものは美味しいな。

いつも作る夕飯を思い出す。
みんなはどうしているだろうか。

美味しくいただいて
部屋に戻った。


ホテルには大浴場はないのか。

一番ショックだったこと。笑

疲れた体を癒すのに
大きなお風呂で手足を伸ばして入るのが
とても大事だったから。

ホテルはそれがないのか。

旅館を選べばよかったかと思いながら
小さな浴槽にお湯をはり
肩まで浸かって冷えた体を温めた。


お風呂から出て
浴槽の栓を抜いたら
トイレのところまでお湯が来て
部屋まであふれて水漏れしそうで
ドキドキした。

ユニットバスにお湯をためたらダメなのか。

また一つ勉強になったなと思いながら
これからどこでお風呂に入ればいいのかと
家の風呂が恋しくなったのだった。


無事に四国入り。
明日は幼なじみの家を目指す。


19の時に来た。
本当にここまで来たんだ。




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