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伊東ツーリングを終えて


12月。
今年最後になるだろうツーリングに出かけた。

行き先は伊東。
伊豆の東側、中ほどにある。


行きたかった理由はいくつかあった。

7時に早川のセブンに行きたい
伊東の小室山に登りたい
伊豆スカイラインを走りたい

どれも切り離せなくて
どれも達成したいことだった。


朝、何時に出ようか。

今、日が短い。
5時はまだ暗かった。


真っ暗な中、出発するしかないのかな。

そう思いながら
夜道を走る覚悟をして目覚ましをかける。

ふだん目覚ましはかけないけれど
走りに行く時だけはかけている。

なぜか?

遅刻しないか気になって
何度も目を覚ましてしまうから。

結果、帰りの高速で眠くなり
ウトウトしながら走る羽目になるから。

という理由で
いつもはかけない目覚ましをかけて
とりあえず寝ようとする。

でも、大体24時近くになってしまって
毎回4時間くらいしか寝られない。
(どうしてなんだろう)

今回は22:59にこの記事を投稿してるね。

この後、すぐに寝たのかなぁ。
(もう覚えていない)

そして、朝起きて
朝ごはんを食べ
たくさん着込んで出発した。


少し前に、バイクを出す時に
倒してしまったのと

さらに少し前に
発進してすぐエンジンが止まってしまって
しばらくかからなくなってしまったことから

朝、無事に走り出すまで
とても緊張するようになってしまった。


また、倒したらどうしよう。
また、エンジンが止まってしまったら…

不安をかかえながら
バイク置き場に到着。


ここは夫の実家だ。
出る時、静かに出ないと
周りに迷惑がかかってしまう。

緊張しながら
バックでバイクを出し
準備をしていたら

網戸になっていた窓から
義母が顔を出した。

『走りに行くの?』
「はい」
『気をつけてね』
「はい」

「こないだ出てすぐエンジン止まっちゃって。
 暖気できるといいんですけど」
『いいよ。暖気していきなよ』

また止まるのはとても困るので
お義母さんの言葉に甘えて
エンジンをかけた。


住宅街にエンジン音が響く。

目の前にお義母さんが一緒にいてくれるから
音が響いても普通にしていられる。
(いつもは逃げるようにこの場を離れている)


こうやって
ただ暖気しているだけなのに

当たり前に暖気をしていられることが
こんなに嬉しく、幸せなことだなんて。

あんなにこのバイクにまた乗るのを
反対していたお義母さんが目の前にいて

走りに行くのを止めずに
エンジンが暖まるまで一緒にいてくれている。


事故に遭って2年。

2年後にこんな光景が
訪れる時が来るなんて。

誰が想像できただろうか。


バイクに乗ってもいいんだ。
堂々と隠れることなく。

エンジンをかけて暖気をして
出かけることを告げてもいいんだ。


縁側に座って
静かに見守ってくれている義母に
感謝の気持ちでいっぱいになり
心の中で深々とお辞儀をした。


エンジン音が少し下がって
エンジンが暖まったことがわかった。

いよいよ出発だ。

まだ暗い庭でバイクにまたがり
ヘルメット越しに義母に軽く会釈して
バイクを発進させた。


街はまだ暗い。
日の出はいつだろうか。

暗いけれども
朝はやってきていて
それなりに車は走っている。

仕事に行く人は
こんなに朝早くから
仕事場に向かっているのか。

自分が仕事で走っているのではないことが
何だか申し訳ないような気になりながら
車の列に並んだり抜いたりしながら進んでいく。

国道に出た。

路地から車が出てこないか気にしながら
少しスピードを上げる。

少し明るくなってきただろうか。

車の流れに乗りながら
有料道路に吸い込まれた。

アクセルを開け
シフトペダルをかき上げる。

6速に入れた。
あまりスピードを上げる気になれず
3車線の真ん中を流しながら
周りの車との距離を気にしながら走る。


空の色が変わってきた。
暗い黒から藍色や濃い灰色へ。

視線を動かすと
左側だけは色味が違う。


あそこから太陽が出るのか。

その方向だけが唯一
明るさを帯びて暖色に変わろうとしている。


視線を正面に戻すと
藍色と青みを帯びた灰色。

右手はまだ夜だ。
青みのない灰色と半透明な黒。

全てが切れ目なく
グラデーションになりながら
つながりを持って色を放っている。


目をこらす。

雲はあるんだろうか。

のっぺりとした均一の色合いは
一面に薄い雲をまとっているのか?
と思うくらいに濃淡がない。

雲におおわれているのかどうかわからない。
不思議な空だ。


有料道路を過ぎた。

日の出を見たくて何度も左を見るが
なかなか日は昇って来ない。

ふと気づくと
正面も右手も薄い青に覆われていた。

夜が明けたんだ。
そう思った瞬間、雲がないことに気づいた。

あの均一な不透明さは
どこまでも見通せる空だったんだ。


急に空に奥行きを感じるようになった。
どこまでも空高く視界が突き抜けていく。


このまま進むと宇宙だ。

そう思った時
宇宙が見えた気がした。

宇宙を感じたような気がした。

空は青空として存在するのではなく
厚みを持った大気圏がそう見えているのであり
その先には広い宇宙が広がっている。


空は宇宙そのものなんだ。

そのことを
吸い込まれるような天空を目の前にして
初めて実感したのだった。






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