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九州ツーリング その15


四国の宇和島にいる。

朝8時、ホテルを出て
ガソリンスタンドまで来た。

ガソリンを自分で入れた。
8Lくらいで満タンになる。

バイクはそんなに入らない。
でも、これで1日走れる。

これで大丈夫。

高速に乗るには…と
目の前にある高架とその周りを見る。

元来た道に戻り
高架をくぐって右折すればいいのかな?

高速沿いに走ると入口があったはずと
地図を思い浮かべて
右折レーンに入り、信号を待った。

青になり、発進。
高速をくぐって右折。

空は灰色で重たい。

雨が先か、フェリー乗り場までもつか。

頬をなでる風は少し湿り気を帯びてきて
もうすぐ雨が降ることを予感させた。


高速の入口が見える。
そのまま直進で上っていく。

高架上の本線に合流したら
すぐにトンネルに入った。

また、街を飛び越えてしまうな。

高速を走るたびに思う
このワープしているような感覚。

街中を走ってこそ
その土地の空気感に触れ
その地を満喫できるような気がするのに。

高速で上を飛び越えたって
ただ通り過ぎただけだ。

わかっているけど天気には勝てない。
急がないと、雨が降って来てしまう。

雨はいつ来るんだろうか。

目線を上げると
灰色の雲が濃淡を帯びながら空をおおっていた。


パラパラッと雨が降って来た。

スマホの予想では8時台に
この辺りで雨が降ると書いてあったな。

予想通りの雨に
カッパを着てきてよかったと安堵する。

またすぐにトンネルに入った。
トンネルを出たら、どんな天気なんだろうか。


雨は一瞬で、トンネルを出たら
降っていなかった。

先へ。少しでも早く佐田岬へ。

はやる気持ちを抑えながら
途中停まる予定の道の駅へ急ぐ。

ホテルから三崎港までは2時間弱。
一気に走り切ることはできない。

一度、手を休めるために
真ん中あたりに道の駅を見つけていた。

少しでも時間短縮できるよう
ギリギリまで高速に乗り
降りたのは、西与宇和インター。

R56、県道25を通る。
真っ直ぐの道。左に線路が並んで走っている。

誰もいない朝の道を走っていたら
遠く右手に子どもが立っていた。

こっちを見ているなと思ったら
大きく右手を前に突き出した。

ビシッと親指を立てている。

ヤエーだ!!
(バイク同士ですれ違いざまに挨拶すること)

小学生くらいの男の子が
通りすがりのバイクに
サインを送ってくれている。

旅先の地元の人に
ヤエーをもらったことはない。

それも子どもからなんて!

嬉しさが込み上げてきて
わたしも大きく左手を振った。

一瞬で通り過ぎる。

『バイクの人に手を振ってもらったよ!』
あの子はこの後、家族に自慢するのかな?

ほわっと心があたたかくなった。

このことはきっとずっと忘れないな。

心がホカホカしながら
線路とともに真っ直ぐの道を走った。


八幡浜市を目指す。
県道27で左折し、海沿いへ。

突き当たりをまた左折すると
休憩する道の駅に着いた。

『道の駅みなっと』だ。

https://www.minatto.net/


今、8:54。
ホテルからちょうど1時間経った。

どうしよう。休むと間に合わない。

トイレに行きながら、時間を計算する。

ここから三崎港まであと40分。
フェリーは毎時30分に出る。

乗船受付は30分前まで。
10:30のフェリーに乗りたかったら
10時に三崎港に着かねばならない。

手を休めないと走れなくなるので
いつもは1時間走ったら1時間休んでいたけど…

それだと間に合わない。どうする?


右手は朝起きたてで、そんなに疲れてはいない。

無理をすると、握力がなくなって
アクセルを握っていられなくなるけれど
今はまだ大丈夫そうだ。

フェリーで渡った先
九州も、今日は雨の予報が出ている。

少しでも早く、先を急がねば。

徳島のホテル前で話した
タクシー運転手のおじさんのことを思い出す。

『予約しないとフェリー乗れないかもよ』

そう言われたけれど
何時の便に乗れるか検討がつかなくて…

ようやく時間を決めて予約しようとしたら
ネット予約が締め切られていて
当日、乗船券を買うしかなくなっていた。

だから、急ぐしかない。

休まないことに決めて
またすぐにヘルメットとグローブをつけた。


ここから先は
ずっとずっと来たかった道。

佐田岬までの道を走る。

19歳の時に見たあの景色は
今も見られるだろうか。




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