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素材メーカーのための成長戦略

はじめに

近年、私たちを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難でありVUCAの時代とも呼ばれています。VUCAとは「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」のそれぞれの頭文字をとった造語です。このような複雑性を増した現代では企業の戦略が非常に重要になってきます。

アンゾフの成長マトリックス

アンゾフの成長マトリックスはイゴール・アンゾフによって提唱されたフレームワークです。このフレームワークでは、「製品」と「市場」という観点から、「既存」と「新規」に分け、4象限に分類し事業拡大の戦略を考えます。

アンゾフの成長マトリックス

各マトリックスでの戦略

「既存」製品×「既存」市場:市場浸透

既存の市場の中で既存の製品でビジネス展開を図る戦略です。簡単に言うと、既存の製品の売上や利益をどうやって高めるかということを考えます。これは普段から営業の方が行っている活動ということになります。4象限の中で最もリスクが低く、インパクトも小さいといえます。素材メーカーにおいても普段から取り組んでいる領域になります。

「新規」製品×「既存」市場:新商品開発

既存市場において収益が悪くなってきた、他社にシェアを取られた時などに、既存のビジネスにおいてより高性能な新製品を投入するような場合がこれに当たります。またその市場において異なる機能の素材を提供するのもこの領域に当たります。すでにビジネスを行っており顧客からの情報が得られるので、素材の特性や価格のレンジは把握しやすく、ターゲットは設定しやすいです。一方で新たな既存の製品がある中で新規な技術を投入する際はガニバリゼーションの可能性があるため、社内を説得するのに苦労する場面も多くなります。

「既存」製品×「新規」市場:新市場開拓

既存製品を新規な市場での展開を図る戦略です。例えばAという素材が自動車用素材として用いられてきたけれど、量は出るものの収益性が悪くなってきた。そこでより高い収益性が期待できる医療用途への展開を図るというような戦略が代表的でしょう。素材メーカーでは多用途展開と呼ばれることもあると思います。すでに開発された材料の応用ですので材料開発は比較的容易ですが、素材メーカーは市場の情報が手に入りにくいため、改良方針が把握しにくいのが難点です。最近ではスポットコンサルなどを用いてその素材のポテンシャルユーザーの意向を把握するなど情報を得ることが容易になっており、以前と比較すると多用途展開もしやすくなっていると思います。

「新規」製品×「新規」市場:多角化

素材メーカーにおいては常にこの「多角化」の領域に進出するかが議論になります。会社の「強み」を発揮できることをいかに説明できるかが重要です。素材としてビジネスするのであれば意思決定者を説得しやすいと思います。バリューチェーンのより川下でのビジネス(「飛び地」と呼ばれることも多い)を志向するのであれば、社内での理解により多くの時間を割かれることになります。川下化すれば売り上げが大きくなる傾向にあるので、素材メーカーにとっては魅力的な市場であることが多いと思います。



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