ラテにマシマロのっけちゃお
人といるととにかく疲れる。
なのに、誰かがいないと寂しくなる。
とにかく寂しくなる。
圧倒的孤独は人を簡単に壊す。
泣いても喚いても口汚く放送禁止用語を叫んでも。
それを誰が咎めるでも慰めるでもなく、ただしんとひんやりした空気が小さく揺れるだけ。
それが一人暮らし。
自由気ままで、贅沢で、切なくて胸がギュッとなる。
*
「他人にチューニング合わせるのに疲れた人だよね」
と彼はわたしを見て言う。
彼といっても、恋人ではない。
これも胸がギュッとなるけど割愛。
おっしゃるとおり。
すっかり疲れ果ててそんな気力は20代の混沌に捨ててきたのだ。
「でも疲れたよって抱きついたら」
「はいはいおつかれ」
「それ!」
そのひとことで、救われる。
「まあまあ、おいしいラテでも飲まんかね、くらいだよね」
「そうなのよ」
チューニングを合わせる必要がないあなたの、その言葉が今日の絶望を薄めてくれる。
「マシマロのっけちゃお」
彼がキッチンでコーヒーを淹れる姿を思い浮かべた。
隣に立って、笑いながら棚からマシマロを取り出す。
おかしのまちおかで買った真っ白で柔らかなマシマロ。
湯気の立つコーヒーの漆黒の波に飲まれてゆっくりほどけてく。
濁ったきもちがほんの少しだけ和らぐ。
愛はパワーだよ!
って昔深キョンがドラマで言ってたな、と思い出し笑いして眠れそうなくらいには。
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