もれ出て見えるもの

好きじゃない企業というのがそれなりにあって、たいがいは大手上場企業なんだけどいろんな理由がある。商品が好きになれない、サービス提供の仕方がウザい、拡販に力を入れるものが環境や人体のタメにならない、小さなメリットを大げさにうたう、くだらない、いいものを廃番にする商品更改など。経営を効率よく「持続可能な」方向へ進むためにどの企業も苦労しているのはわかるのだけど、「やってます感」を出して満足している企業も少なくない。

サービスや事業の統廃合は、さも「いいこと」のように喧伝されているけど、実態はどうか。パン喰い競争よろしく年金受給までの距離が縮まず中年は走り続けるけど、むこう10年の企業が減れば働く場所が減るだけ。100年後の人口減に必要な準備は、仕組みの見直しや既得権の撤廃、ITの活用、そういった方向なのではないか。暮らしやすい社会はつくれる。でもさいきん話題の「ポイントサービス統合」は未だに「何かを買う」ことが前提になっていて「消滅自治体問題」と同じく、お金を使う人たちを奪い合っているだけのケチな話。今なお消費活動を推し進める社会のありかたに、昭和が見え隠れする。あと「皆さんのためのいい街づくりをしています」ってのもなぁ。壊して建てるのがただの本業のくせに、なぜあんなにエラそうな目線なのか。

広告が消費活動の手先になり下がるのをただ見てるけれど、思わぬことが分かったりする。例えば嫌いな企業のCMに起用されるタレントはなぜかちゃんと嫌いな人なんだよね。もちろん逆もある。ヒトは似たもの同士で群れる習性があるから、自分の対極にいる人が、嫌いな企業の業績UPのために起用される、なんてシンプルな正解。自分の嫌いは当たっている、こんなマーケティングセンスのある自分を褒めてあげたい。

コンビニジムのCMで、飲食店の前で「これからジムに行って運動します」と解散する女性に向かって「えぇ?あなたが運動?」っていうのがあった。「そんなに太ってるのに今さら?」という流れで、「あなた」にはぽっちゃりめの女性が起用されている。失礼な企業だな。
と思えば「ごめん。忙しいから要件だけ話して」と洗濯カゴを持った家庭の奥さんがいう一言もあった。これ、自分にはビジネスシーンしか浮かばないし、「モラハラ上司と弱め部下」の定番にすら思えるけど、イマドキはこれ家庭でも出る一言なんですね。これがCMに採用されて、電波にのるんだ。ふーん。この会社の人たちは「自宅で家族とこんな会話しねぇだろ!」と誰も思わないんだな。

おいしさのあまり、ついがっついて食べるという演出の冷凍チャーハンのCMで、タレントが手首を上にした状態でスプーンをわしづかみにしていた。食べにくいし、マナーも悪い。最初に見たときは、手の不自由な人に向けた最新の配慮なのかなと思ったけど、どうも違うようだった。ものすごい美貌を誇る女優さんが独立したとたん、CMで「安い」「早い」と叫んでいたのも、あきらかに彼女の人生観にはない一言で痛々しかった。牛丼をわんぱくに食べている体の女優さんは演技がくどいのか、鼻の下が長いことに気づいた。
企業の思惑と違うメッセージが届いてしまうと、こんなことやらされてる演者が気の毒だなぁという印象だけが残る。これが意外と多い。

でも、企業のCMというのは必ず企業側がプランを比較検討するし、原稿もチェックするし、キャスティングにも多少のリクエストはできるはずだし、撮影にも立ち会う。素人だから大勢の人が集まる現場でダメ出しはしにくいだろうけど、彼ら出稿企業が「いい会社だな」と消費者に思われるように仕上げるのが「トーン&マナー」ってやつなのに、逆アクセル踏んでるよね。ということは、広告の世界はいい人材が育っていなくて、それはつまり斜陽産業になったってことなんだなぁと最近つくづく感じている。

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