日本の経済ってどうなるの?
式村比呂です。
ついに日本の経済というか、日本経済の底が割れてしまいました。
ただでさえ去年10月の消費増税で日本のGDPが昨年10-12月期で-7.1%(年率換算)という笑うしかない状況に入っていた日本経済だったわけですが、今年1月からにわかに世界を襲ったコロナショックで、大方の経済評論家さえ予想値の公表が出来ない状態に陥っています。
上がアホやから休業できん
どのくらい「読めない」かと言いますと、GDPの数値を発表する内閣府が、計算方式を変えてしまうほどの落ち込みを迎えていることで、その混乱ぶりが想像出来るのではないでしょうか。
1-3月期の落ち込みの理由は、コロナ問題で日本人・外国人合わせた国内旅行者の壊滅的激減による旅行業・旅館業・飲食業の収益の急激な悪化が主要因で、次いで国民の消費マインドの急速な冷え込み、暖冬による衣料品などの季節商品の収益悪化、耐久消費財の消費増税前の駆け込み需要によるリバウンドでの売り上げ低迷などが重なりました。
さらに、コロナウイルスに警戒した企業の設備投資の冷え込みや、緊縮財政による公共事業の減少も国内景気を冷え込ませていました。
4月に入って、安倍政権はいくつもの失政を犯します。
緊急事態宣言前後のドタバタ。外出自粛令を企業民間問わず「一円も出さず」やったために起こった混乱とパンデミック。
医療現場がクラスター化した事によるパンデミック発生。
飲食店・旅行業・興業の停止による経済活動の急停止は、財政出動をしなかったために日本経済の壊死を招きました。現金という「血」が止まったのだから当然でしょう。
壊死が怖いのは、心臓がもう一度動いても、腐った体は生き返らないことです。
さらに衝撃は伝播します。
値上がりするのはマスク・ティッシュ・トイレットペーパーに消毒用アルコールのみ。
需要に供給が足りないから起きるのがインフレーションですから、この現象は極めて正常です。
一方、生鮮食料品、それも一流料亭に納められるような高級鮮魚や高級和牛などは、かつてない値崩れによってデフレ化を引き起こしています。
不良在庫化している衣料品の冬物は、消費増税や外出自粛・営業自粛によって完全に産業廃棄物と化しました。
工場や倉庫を、そして店頭在庫を処分せねば春夏物を製造も流通も出来ないアパレル産業は、工場から店舗まで、これら商品をどうすればいいか分からない袋小路に追い込まれています。
外出しないなら必要のない商品、例えば、靴や化粧品やバッグやアクセサリーはそもそも売れるはずもなく、コロナの先が見えない「外出自粛」によって、自動車や新型家電などの購入や買い替え需要は、息絶えています。
こうして考えると、イギリスやアメリカはさすがに自由経済・民主主義の先駆者で、昨日までどちらの政府も緊縮財政を叫んでいたはずの経済官僚たちが一瞬で脳を切り替え、一気に休業者や失業者に現金を配り、飽和させることで社会不安を抑え込みました。
一方。
日本の政府や自治体は「ない袖は振れない」とばかりに、「口は出す・金は出さない」とばかりに「営業自粛」を強要し、店を開けねば自滅するためにやむなく開店する商店やパチンコ屋を、市民の集団圧力でねじ伏せるという暴挙に出ています。
大阪府の吉村知事などは、休業補償をしないで現在開いているパチンコ店の名前を公表し、社会的圧力で700あまりの店舗を閉店させ、おそらくは自暴自棄に陥っていると推測される数店舗の営業店の実名をついに公開しました。
パチンコについては別の記事に書きましたのでここではこの辺で切り上げますが、そのほかにもクラブやバーなどの水商売や風俗店にも、当初「彼らは反社会勢力だ」と明言して頑強に休業補償に応じぬ上で、営業自粛せよと強要しました。
イギリスが「休業したら300万円(日本円にして)、従業員たちの賃金は8割まで補償」とした上で休業命令を出し、その上で従わぬ店舗を摘発したのと対照的です。
稼ぎ時を失った日本経済
日本の内需を考える上で、いくつもの大きなイベントがあります。
もっとも日本人の財布が緩むのは大型連中。
春休み・GW・夏休み・年末です。
春休みというのは卒業・新入学新社会人という「人が動く」時期と言うこともあり、新生活に必要となる必需品や耐久消費財の新調がもっとも活発化する時期です。
GWは、海外からのインバウンド需要に加え、日本人の旅行や里帰りという、旅行業にとっては明暗を分けると言って良い勝負所です。
アパレルに取っては、冬物から春夏物に切り替え、冬物は在庫セール、春夏物は新流行の発信という重要な時期を完全に喪失しました。
自動車販売業は、詳しく言うことは控えますが、3月というのは勝負所でした。あんな状況で新車を買う企業も個人もまず居なかったでしょうが。
GWは、映画や舞台演劇やプロスポーツやミュージシャンにとっても稼ぎ時でした。
また、番組改編によって新番組やドラマなどのプログラムや、それに合わせたスポンサー企業の新商品の戦略といったお金が動くシステムも完全に硬直化します。
こんな社会情勢で、広告を打って商品を売り出そうなどと考える企業など、まずないでしょう。
いま広告を打っている企業は、前もって払い込んでいた広告を消化しているだけであり、本来なら今の時期には仕込みが終わるであろう7月からのシーズンは、おそらくTV業界も広告業界も、その業種が始まってから初めて体験するだろう未曾有の損失を体験するでしょう。
高付加価値で売っていた食品や耐久消費財などは軒並み販売不振に陥るでしょう。
こんな時期には、誰もが将来に不安を抱え、消費は最低限の質・量にとどめたいと思うからです。
消費を楽しむより、自分や家族に何かあったときの保険を手元に残したいと考えるのは、人間の本能だからです。
不況は連鎖する
飲食店や遊興の為の店舗が潰れると、まず最初に衝撃を受けるのは、それらの店に不動産を提供していた家主でしょう。
普段、飲食店が潰れるというのは、割と珍しいことではありません。
飲食店を始めようと考える事業主、それも個人経営はおろかある程度の事業規模で始めるチェーン店に至るまで、割と楽観的で、しかもどんぶり勘定の事業計画で開店します。
ある程度はやってみないと分からない「水物」だからです。
だから貸す側の不動産業や金融機関は割と「潰れる」ことを織り込んだ上で賃料を設定し、保証金を積ませ、さらに、家賃保証会社を噛ませてから貸します。
居住権があり、生活に行き詰まった場合には公的な支援が受けられる個人の住宅の場合、夜逃げでもされない限りは比較的柔軟に対応出来るのですが、商売で借りるオフィスや店舗というのは、事業に行き詰まった場合に家主が得られる公的な補償は乏しく、また、入居者の事業の破産というのは家主にとっては保有物件の一大事ですが、裁判所から見たら、債権者の一人に過ぎないからです。
さらにいうと、不動産の貸し手は、償却の終わった物件はリフォームや建て替えをせねばならず、その投資額は決して小さくありません。
家主はブルジョアで不労所得だろう、という世間のやっかみは、実情を知らないから生まれる誤解です。
そういう考えを持つからこそ、政府に「家主にも家賃減免などで泣いてもらおう」などとバカなことを言い出す政治家が出てくる。
政治家が経済音痴であるのは犯罪的ですが、政治まで知らないのは犯罪です。
次に、企業の連鎖倒産です。
連鎖倒産の仕組みなどは、今時は小学生にだって分かるでしょう。
日本中の一流デパートに店舗を構える一流ブティックが潰れる。
すると、そこに繊維などの素材を納めていた会社も、売掛金が回収出来ないばかりか、次のシーズンの売り上げも蒸発してしまう。
貸していた金も、予定していた売り上げも消えるわけです。
工場間の原料の配送や店に完成品を納める流通業も潰れるでしょう。
広告収入を得ていた代理店やデザイン会社もあやうい。
また、こうした工場や業界を当て込んでいた飲食店だって危険です。
数社が飛ぶだけなら、それでもそれぞれ、耐えきれる可能性だってある。
自民党の大物議員が言ったように「自己資本で耐えきれない会社には潰れてもらうから」というのは、自由資本主義の原則です。
ただ、今回は、コロナという天災に加え、政府の失策という人災が幾重にも襲いかかってしまい、そこに、元々体力を奪われていた日本企業や個人経営者は、まさに根こそぎ枯れてしまいかねない状況です。
金利や不渡りを待ってやれと政府は言う
では緊急にそうした事業主や企業を救う方法は?
普通に考えれば、アメリカやイギリス式に「金出すからしのげ。あとで必ず元に戻れるよう政府が頑張る」と当事者たちに金を出すのが一番効果的で、一番早い。
ところが、その金を出しもせず、飲食店に「店を閉めてもその間家賃取られる」と言われると家主に「家賃を負けろ」といい、「不渡り出したらどうせ潰れる」と言われれば、銀行に「おまえ金利取るの禁止な」と言い出す。
潰れそうな経営者や会社に金を入れておけば、その金で家賃も払い金利も払うって話。単純で明快でしょ?
従業員の給料も8割出すから、クビ切るなよ。
そう言われれば、経営者も休業中の社員のクビを切らないでしょ?単純な話。
ところが、今の政権にはその政治決断が出来なかったし、今も出来ない。
政府が続々出している緊急経済支援策。そのどれもこれも、この4月の決済日である24日には間に合わないばかりか、早ければ6月に支給、などという有様。
1月には分かっていた危機的状況のこれ、緊急支援策です。
ところで、金利や手形決済まってやれって言われた銀行ですが、彼らも破綻と無縁ではありません。
日本政府が20年も推し進めたデフレ政策によって、そして、2年の約束で始めたのに7年も続けているマイナス金利政策によって、日本の銀行、特に、グローバル化と無縁の地方銀行や農林中金などは、企業に金貸しても金利は大して取れないくせ、緊縮財政とデフレ政策で内需が縮小してるので、新しい融資などリスクに見合ったリターンがない。だから、新規融資などよほど儲かりそうな事業計画でもないと貸し付け出来ない。
唯一、マイナス金利政策で超低金利な為、儲かった部門は不動産投資。何のことはない、自民党はまたバブルをこっそりやっていたわけです。
ところが現状はご覧の通り。
今の新宿や渋谷や銀座を見て、経済価値があると思いますか?
安倍政権はひとまずGW明けまでこの状態を維持するようですが、解除したって経済が元にはもう戻らない。
それどころか、コロナが終息しなければ、隔離政策はいつまでも続く。
不動産相場の値崩れが起きれば、儲けに張り込んでいた金融機関は、バブル崩壊後とまた同じ目に遭うでしょう。
そして、さらに悪い話が一つ。
日本の地銀や農林中金は、日本国内の企業に金を貸しても全く儲からないので、利回りのいい海外の金融債権に過剰投資していました。
その名も「ジャンク債」です。
名前の通り、いつでもゴミになり得るからこそ、市場金利では買ってもらえない格付けの低い債権が、ジャンク債です。
ところが、日本の金融機関は、アメリカの経済はずっと緩やかに成長していたし、不況になってもさすがに潰れないだろう、と信じ切ったある事業に大盤振る舞いしています。
そう、シェールオイル業界です。
シェールオイルというのは、枯渇した油田に一手間かければまた石油が取れるというアイデアを元に、急速に発展したアメリカの化学事業です。
この一手間かける、と言うのがくせ者で、アメリカのシェールオイルは、1バレルの原油価格が50ドルを下回ると、採算割れをします。
経済に敏感な皆さんは、今の原油価格がどうなってるかご存じでしょう。
史上初の、マイナス10ドルだの、マイナス30ドルだの。
要するに、原油もらってくれたら1バレルあたり30ドル出すからもらって。
という状況です。
当然シェールオイルなんて操業出来ないし、操業出来なくても会社は経費もかかれば、ジャンク債で借りた金と、金利も払わなきゃならない。
ジャンク債の場合、元利保証も何もないので、シェールオイル企業が飛べば、全部、紙切れです。
つまり、日本の地銀は、国内の不良債権と国外の不良債権で、吹き飛ぶ訳です。
財務省は言った。国家の危機より財政再建、と
麻生太郎財務相は6日午後の参院決算委員会で、2025年度のプライマリーバランス(国と地方の基礎的財政収支、PB)黒字化目標などについて「経済再生なくして財政健全化なしとの認識のもと、財政健全化目標のためにもしっかりと経済成長をしなければならない」と述べた。
プライマリーバランスとは何か。
プライマリーバランスがプラスということは、国債の発行に頼らずにその年の国民の税負担などで国民生活に必要な支出がまかなえている状態を意味します。逆に、プライマリーバランスがマイナスということは、国債等を発行しないと支出をまかなえないことを意味します。
SMBC日興證券のサイトの非常に秀逸な解説に委ねると、つまり、国の収入で国の予算がまかなえる状態がPBの黒字化です。
逆に、国家予算が税収でまかなえなくなると発行するのが赤字国債ですから、PBは赤字です。
つまり財務省は、日本がこんな状態であるにもかかわらず、国民から集めた税金の範囲で国民を助ける、と明言したのです。
言うまでもないことですが、アメリカやイギリスがリーマンショックから立ち直ったのは、プライマリーバランスを黒字化することを早々に諦め、それまでの1.5倍に国債発行額を増やして経済活性化をずっと続けてきました。
国債を1.5倍に増やすと、国の経済も1.5倍成長します。
当然です。国債は国が国内でお金を使うために発行し、そのお金は、公共投資や医療や福祉や先端技術に回されます。
国が国内に投資した金は天下を回り、雇用を生み、株価を引き上げ、国内資産の価値を高めます。
一方日本。
リーマンショック後からコロナショックの今現在に至るまで、ほぼ1倍、つまり何も変わらないままです。
失われた20年とかいいますが、失うも何も。財政が緊縮すれば、つまり国が出さなきゃ金は天下を回らず、経済はデフレ化し、賃金は下がり、終身雇用出来なくなった企業は非正規雇用でいつでもクビを切れるようにし、設備投資を控えて資産を内部留保して、頼りにならない国の代わりに来たるべき次の不況や危機に備えます。
財務省はPBの健全化が大事だと言いますが、もう、去年の税金が納められることはなく、さらに来年以降の税収がどこまで落ちるかなど、言うまでもないでしょう。
焼け野原からどう税金取るのよ。
アメリカはすでに、約4兆ドルも国債を財源に、まさに今国中にばらまいています。4兆ドル。440兆円です。
対して日本。未だ、0です。0円。
ちなみになんですが、日銀はさすがにヤバいと気づいています。
今すぐにでも日銀は国債を60兆円買い取ります、と言っている。
つまり、緊急経済対策のため、今すぐにでも60兆円用立てます、と早々に宣言したのです。
この宣言はなぜしたのか。
「国が破綻しても日銀のせいじゃない。とっととやらない安倍政権と財務省のせいです」
と、彼らは宣言したのです。
じゃあどうしたらいいのよ?
結局の所、この国難を乗り越えるためには、どう考えても財政出動しかありません。
日銀が60兆円国債引き受けるって言ってるんだから、何も考えず60兆円国債をとにかく発行する。
この60兆円を使って、休業補償、個人給付、医療機関への資金注入で使い切るのです。
さらに言うと、地方自治体が発行する債券を、財政投融資を使って日銀に引き受けさせるのです。これで、地方自治体は独自財源で市民の救済が可能になります。
とにかく、なぜケチなトランプ政権が、4年の成果を放棄して、史上最大規模の赤字国債を乱発してるのか、財務官僚も含めた安倍政権は冷静になって考えることです。
そうしないと、国内産業が焼け野原になるだけではなく、国民が暴徒と化し、100年はまともにならないと正気で考えているからです。
むしろ、正気じゃないのは日本の方でしょう。
もうすでに日本の国民は正気を失いつつあります。
彼らを正気に戻すためには、国家というものはなぜ存在しているのかをもう一度思い出し、とっとと国民のために金を刷って、ばらまくことです。
もうとっくに、銀座や新宿や梅田がゴーストタウンになっている現実を見てください。
コロナのせいじゃない。あなたたちのせいです。
コロナ対策を見直してよ
コロナ対策も、GW明けすぐに見直してください。
コロナ対策について、西浦博教授の隔離政策は、すでに破綻し失敗しています。
統計学的疫学ではコロナは防げなかったし、これからも防げないでしょう。
なぜなら、感染者の治療法がないからです。自然治癒に任せるしかないし、何より、無自覚な陽性者を見分ける手段がない。
だったら、もう可能な限り感染者の救命治療が出来る施設を作り、陽性判明者だけ隔離した上で、国民に感染予防策を周知徹底させ、その上で一刻も早く、今まで通りの経済活動を再開することです。
今後はテレワークも発達するだろうし、商環境も変わっていくでしょう。
経済自体の質も変わるだろうし、商売の姿も変わるかもしれません。
世界一の「食の都」だった東京は、もう二度と復活しないかもしれない。
それでも日本は、一刻も早く正常に戻らないとならない。
コロナ医療は、まさに現場で一日ごとに知見を積み上げています。
研究者たちに潤沢な予算を提供し、今すぐにでもワクチン開発を始めねばならない。
サプライチェーンを国内で再構築し、他国に頼らぬ製造業を作らねばならない。
特定国の食料買い占めや輸出制限に対抗出来る食糧自給政策を作らねばならない。
課題が山積して、残された時間はわずかです。
政府は、官僚は、とっとと正気に戻ってください。
ある朝、起きたら世界の姿がすっかり変わっていました。 漂流しつつある世界に、何事かをのこしつつ。