”サラリーこそ賃貸併用住宅” 書評×記録 

賃貸併用住宅なら、不動産経営もできるし住居も構えられる・・・!

今回はこちらを書評×記録しました。


本について

発行年

2015年2月26日

著者

馬場 高志(ばば たかし)
株式会社BLISS 代表取締役。
1968年、埼玉県生まれ。20代の頃、住宅の販売業務に従事していたが、住宅のデザイン・設計に興味を持ち、建売住宅の企画の道へ進む。
その後、建築の現場を知らないことに不都合を感じ、20代後半から施工監理も行うようになり、現在では企画から設計・施工・監理・販売まで一貫して手掛けている。
35歳で株式会社BLISSを立ち上げ、独立。東京23区を中心に戸建住宅PATIO、アパートのGlanzといった商品を展開。
戸建建築とアパート建築の両方の経験を生かし、現在賃貸併用住宅の設計・施工にも力を入れている。

ホームページ

著者が代表を務めている株式会社BLISSのHP


はじめに

将来不安から投資へサラリーマン

少しでも資産を増やそうと投資を考えるサラリーマンは少なくない。投資には株やFXなどがあるが、高いリスクがある。そもそもまとまった資金がないとスタートに立つことすらできない。

一方でサラリーマンでも安定した副収入を得られるとして注目されるのが賃貸アパート経営。爆益は見込めないが、リスクもミドル。何よりサラリーマンという社会的信用を活用してローンを組み、自己資金よりも大きな金額を投資できて賃料という安定した収入を得ることができる。

不動産投資といっても

不動産投資といっても、多種多様であり誰もが成功するわけではない。

  • 1棟アパート

  • ワンルームマンション

  • 賃貸併用住宅

本的にローンを組んで不動産を購入し、家賃収入で返済することになる。サラリーマンの年収を500万円程度として考慮すると2000~3000万円程度の投資となる。この価格帯で買えるのは主にワンルームマンション1戸か、郊外のアパート1棟。

ワンルームマンションは実はハイリスク

比較的買いやすいワンルームマンションは実はハイリスク。ワンルームの場合、賃貸に貸し出す部屋は1戸、入居者は1世帯のため空室になったとたん収入がゼロになり、2~3か月は続く。その間はオーナーが持ち出し(=自腹で返済)をしなければならず、自らが住む家賃とは別に出費が重なる時期がある。にもかかわらず運用中のリスクは微々たるもの。概してハイリスク、ローリターンといえる。

アパート1棟はそもそもハードルが高い

安価なアパート1棟はどうか。たとえ1戸が空室になったとしても、その他の部屋の賃料で収入はゼロにならない。1戸の賃料はさほどでも合わさるとまとまった金額となり、収益性が高い。しかしサラリーマンの手で届く範囲の物件は地方・郊外に限り、しかも新規参入で優良物件を買うのはハードルが高い。

不動産需要は都心に一極集中し、土地坪単価150万も珍しくなく40坪を買えば土地代だけで8000万円、建物を合わせれば1億円はくだらない。地方は安いが収益が出せる場所は限られている。資金の限られたサラリーマンでは手が出ない。

サラリーマンが不動産投資するには

サラリーマンが行う不動産投資の仕組みは、限られた自己資金でもローンを活用することができ、その返済は家賃収入から行うことができること。ここでのポイントはいかに金利を抑え、効率よく収益を上げるか。また本業と両立するか。

解決策は「都心の狭小地×賃貸併用住宅」

サラリーマンが不動産投資する奥の手は「狭小地・変形地+賃貸併用住宅」。

狭小地・変形地というのは整形地に比べて非常に安価に土地を仕入れることができる。坪単価で言えば相場の3割引きで帰る場合も。これによりサラリーマンでも収益性の高い都心・駅チカの不動産を手にれられる可能性が高くなる。

もう一つの賃貸併用住宅とは、簡単に言えば「マイホームの一部をアパートにする」こと。あくまでもマイホームであるため様々なメリットがある。反対に賃貸併用住宅という市場は、賃貸物件だけが欲しい人、マイホームとして購入したい人はターゲットにならないため出口が見えにくいことがある。

メリット

  • 長期・低金利の住宅ローンが使える

  • 狭小地などであれば都心でも安く土地を購入できる

  • 収支が合えば、実質ゼロ円でマイホームが持てる

  • 地方出身者の親御さんはオーナーが近くにいてくれるという安心感がある

デメリット

  • 狭小地に建設できるメーカーを探さないといけない

  • 賃貸併用住宅という市場は比較的ニッチであり、出口が一般的な賃貸物件よりも狭い可能性がある

  • 賃借人とのトラブルの可能性がある


基本知識

みんなが欲しがらない土地をあえて買う

都心・駅チカ・単身世帯が多いエリアが収益性の高い不動産を持つ条件となる。しかし当然ながら人気があり高額。そこで誰も欲しがらない土地、つまり狭小・変形地といったイレギュラーな土地を探す。

  • 狭小地:15~20坪程度の土地

  • 旗竿地:間口が狭くて敷地まで距離がある土地

  • 三角地:三角形の土地

  • その他:高低差がある土地、台形の土地、五角形の土地…

買ってはいけない土地

安く購入できて土地が立てられればメリットであるが、そうでなければデメリットとなる。反対に買ってはいけない土地を把握しておくことが重要となる。

  • 事故物件:敬遠される

  • 防火地域:防火対策を施すため建築費が割高

  • 脆弱地盤:土地自体の補強にコストがかかる

  • 埋立地、水害多発、崖近縁など災害時にリスクが高い地域:災害が多く物件評価が下がる

家が建てられるエリア・建てられないエリア

賃貸に適したエリアであっても、理想とする建物が建てられないエリアがある。土地には利用方法を定めた都市計画法があり、都道府県がこれに基づいて都市計画地域を指定している。

都市計画区域は「市街化区域」と「市街化調整区域」、どちらにも指定されない「非線引き都市計画区域」に区別される。

  • 市街化区域:すでに市街地になっているか、10年以内に市街化を図るべき区域。用途地域が定められ、都市施設として道路・公園・下水道などが定められて重点的に整備される。自治体による都市基盤整備は行われず基本的に家を建てられない。

  • 市街化調整区域:市街化が抑制される区域。用途地域を定めないことが原則。

  • 非線引き都市計画区域:どちらにも該当しない区域。

東京都23区は河川敷を除き全域が市街化区域に指定される。これは異例中の異例で横浜では4分の1が市街化調整区域になっている。不動産やネットを通じて土地を探す場合はほとんどが市街化区域にあたる。

用途地域についてはネットで多く解説されています。

家を建てる要件


いざ家を建てる土地を見つけても、その要件が制限される場合がある。

  • 建ぺい率:土地に対して建物が占める面積の割合。

  • 容積率:土地に対して延床面積が占める面積の割合。

  • その他:斜線制限 など

こちらも詳細はネットを参照。



運用

土地の目安は12坪(約40㎡)

賃貸併用住宅に限らず、建築後の賃貸経営の収支をシミュレートすることが大事。

目安として土地の面積は12坪(約40㎡)あれば、2部屋賃貸で11万円以上の収入が得られ、月々のローン返済額がそれ以下なら収支マイナスにならない。

15㎡の部屋を1フロアに2部屋作る場合、単純計算で2倍の30㎡の土地が必要。仮に建ぺい率80%・容積率200%の土地であれば、敷地面積は12坪(約40㎡)あればよい計算になる。
賃料収入は相場として、都心1Kであれば5万5万5000円~7万5000円程度。2室で11万円の家賃収入となる。
一方、土地・建物合わせて3500万円の借入であれば、金利2.4%・35年間で仮定すると月々返済は9万8000円。
差引1,608円の収入となる。

建築~管理までワンストップで出来る会社を探す

土地探しから物件の法適用の確認、狭小・変形地でも建築できる建築会社を探して工事発注、そして建築後も入居賃貸管理や施設メンテナンス…と事業であるため関わりは多岐に渡る。ベストは賃貸併用住宅をメインで取り扱っている会社を選ぶこと。

有利にローンを組む

賃貸併用住宅は、あくまでも住宅のため「住宅ローン」が使える。そのためローコストで賃貸物件を購入できる。

  • 住宅ローンはサラリーマンほど優遇される

    • 自営業などは反対にローンが組みづらい

  • 住宅ローンを使うことで、アパートローンよりも低金利

  • 住宅購入と同様に優遇税制を受けられる

    • 10年間最大400万円まで払った税金が戻ってくる住宅ローン減税

    • 長期優良、低炭素住宅なら最大500万円

  • 賃貸併用住宅なら頭金なし諸費用のみで賃貸物件・マイホームが持てる

2つの条件


賃貸併用住宅として住宅ローンを組むには条件がある。

  1. 自宅として使用すること

  2. 総床面積の50%越が自宅部分であること

あくまでも自宅であるため、自ら住むことが条件。ただしこれはローンを組むうえでの条件であり、完済後はすべて賃貸にすることが可能。イレギュラーなケースとして転勤などでやむを得ない場合などは自宅部分も貸し出すといったケースが認めらる場合がある。

経営のポイント

不動産経営として、賃貸併用住宅ならではのポイントなどをまとめると以下のようになる。

  • 都心×駅チカの物件に限定する

  • 狭小地・変形地を狙う

  • 木造3階建てでコストを抑える

  • 建ぺい率・容積率最大で土地活用

  • 太陽光発電を導入し優遇を受ける


資産拡大

住宅ローンにより低金利で物件購入を実現でき、自宅を確保しながらそのローンの返済は賃料から賄うことができるのが賃貸併用住宅。マイホームを建てつつ返済は実質ゼロ円となる。

つまり完済するまでは自宅の家賃を払う代わりに、その分を丸々貯蓄に回すことができる。

繰り上げ返済や別の資産運用に回すなどその貯蓄の使い道は自由。

賃貸経営のリスク

もちろん購入時の諸費用負担、毎年固定資産税の支払いや、空室時などのリスクは存在する。しかしながら一般的な賃貸経営と同様である。

出口戦略

狭小地・変形地への賃貸併用住宅は、半自宅・半賃貸であり厳密にはアパートではない。賃貸収入でどんどん収益を上げていくという性質のものでもない。アパート経営入門としてふさわしいローリスク・ローコストの物件という位置づけ。本格的にアパート経営に乗り出す場合、ローン完済後の戦略まで考えておく必要がある。

出口戦略は以下の通り。

  • 賃貸併用住宅を維持

  • 全室賃貸にする

  • 二世帯住宅に改装

  • 売却

  • 建て替え

ローン完済後は全室賃貸にすることも可能。老後として二世帯住宅に改装するなども考えられる。


最後に(感想)

私の場合

本書のノウハウが向いているのは「都心にマイホームが欲しい、資金はないけど賃貸経営もしたい」人だろう。

私は住宅補助があるため家賃の負担がなく、当面はマイホームを購入する予定はない。そのため賃貸に特化した物件の所有を検討している。

しかしながら、将来的に「持ち家・賃貸」に限らず家賃負担が生じる場合に備えて「賃貸併用住宅」という選択肢を広げた。

一方で考慮しなければならないのは、賃貸併用住宅の投資効率である。一部を住宅として賃貸に出せない分の収益が減ることになる。自らの住居を持ったうえで賃貸のみの経営を行う場合と組み合わせた場合の比較は必要となる。

本書に関する印象

不動産投資に関連する本は大体自社商品のプロモーションに偏りがちな印象が多い。しかしながら本書はあくまでも自社で行うノウハウの紹介に徹していたのが良かった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?