押井守監督作『ぶらどらぶ』感想 〜懐古趣味的で見る人を選ぶ、売れる要素ゼロ〜

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押井守監督の、TVシリーズ形式としては『うる星やつら』以来の作品である『ぶらどらぶ』。押井さんが総監督で、監督はは「うる星やつら」で一緒に仕事をして「ビューティフル・ドリーマー」で演出を務めた西村純二さん。

元は2013年にiPad用の企画として作ったコミックアニメ「ちまみれマイ・らぶ」で、製作過程は以下インタビューで語られています。

記事タイトルでボロクソ言った感じに書いてますが、自分も懐古的な人間なので好きなノリではあるんですが、これは売れないぞと(笑)

献血趣味の女子高生とヴァンパイアがヒロインのドタバタコメディなんですが、段々ヒロインの影が薄くなって、さくら先生を彷彿とさせる朴璐美ボイスの保険女医と映画研究会部長の存在感が増す。

ネタの殆どが押井監督の好きなもので構成されていて、映画中心に、おなじみの寺山修司、ゲームなど。一番押井監督らしい回は、1話まるごと、つげ義春パロディ回の9話「ボルト式」。映画ネタはただのうんちく語りという感じで、あまりストーリーとして面白くできてない。ちなみに、映画語りで俳優がぼんぼん言及されていて、その似顔絵を西尾鉄也さんが書いてます。

庵野秀明監督のプロフェッショナルでの「謎のあるものが喜ばれなくなった」という発言が話題になりましたが、押井監督も多分そう考えていて最大限分かりやすくしようとした結果がこれなのかもしれませんが、それでも完全に若者置いてきぼりな内容と思います。

意図的でしょうが、ギャグ表現もノリが古く、どこかで見たような顔芸作画も多々

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あと、個人的にはキャラクターものは最低でも2クールは必要で、さらにネットで一挙配信には向かないと思っていて、キャラに全然愛着が湧かないというのが一番の欠点。

売上厨や覇権主義とか大嫌いなんですけど、何故売上に言及するかというと、上記インタビューや公式インタビューでも押井監督本人が気にしているから(笑)

出資をしている「いちごアニメーション」という会社は、元が秋葉原の「AKIBAカルチャーズZONE」のオーナーなどをしている不動産会社。完全アニメについては素人で、好きにやってくださいと投げてしまったのが間違いで、押井監督の久々の復帰作ということも合わせて、売上や話題性を考えるなら、ある程度口出しないとダメ!

例えば、今はゲーム実況が盛況で、プレイしたことはなくても知ってるという人が多く、押井監督も偏ってはいるかもしれませんがゲーム好きであるので、そういったネタを増やすなどのことをちゃんと言える人が必要。押井監督の作家性が重要というタイプの作品じゃないのに、押井監督ファンしか喜ばないようなものをそのまま通すのはビジネスとしてはダメでしょう。ギャグコメディものをヒットさせるのは至難で、大ヒットした『おそ松さん』でさえ、コアなファンしかついてこず、話題性が薄れていったような現状がある中、完全オリジナルでいこうというのが無茶な話。

まあ、押井監督はじめスタッフは楽しくやっていたようで、リハビリ作としては良かったんじゃないかと思いますし、いちごアニメーションの社長はそれなりの手応えを掴んで、押井監督の次回作もやりたいと意気込んでいるようですが(以下インタビュー参照)、どうなることやらw 


この作品を発展させるとしたら、もっと若い色んなスタッフを集めて、現代版「うる星やつら」のような作り方をしなければ、浸透させることはできないので、そういった覚悟が企画面でも予算面でも必要と思います。




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