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八千代温泉 芹の湯(群馬県下仁田町)

 9月30日のことになりますが、妙義神社を訪れた足で、かなり遠回りながら八千代温泉というところに行ってきました。

山間ののどかな道を30分

 わが松井田からいけば、ちょうど妙義山の裏側とでもいうのでしょうか。県道51号から国道254号、さらに山深く「姫街道」を進んでいきます。

 姫街道といえば浜名湖周辺の道が有名ですね。あちらは、東海道の本道が険しいため、女性が迂回路として通ったためにその名があるようですが、さてさて、こちらの姫街道は、さほど艶めいたお話ではないようです。

 ものの本では、この道は「下仁田道」と呼ばれる道の途中にあって、もともとは中山道古道の一つとされていたようです。ただし、別のルートで中山道が整備されてからはもっぱら脇往還となり、本道に対する脇道として「姫街道」となづけられたようです。

 やがて姫街道から離れて、さらに両側1車線ほどしかない細道をすすむと、川沿いの道がやや広くなったあたりに、木造の古い建物があります。どうやら建物の裏の駐車場についたようです。

かるく聞き流したおばちゃんの一言

 建物を回って正面へ回ると、そこは山奥の共同温泉そのもののたたずまい。入り口をはいると、ちょっとした休憩スペースになっています。

 でも誰もいません。「ごめんくださ~い」と声をかけると、建物の奥のほうから物音が。ようやくでてきた、ちょっと太めのおばちゃんに「あら? はじめてね」と、開口一番そういわれました。

 なんか常連さんなら絶対にしないようなマナー違反でもしちゃったんでしょうか…。

 不安を覚えながらお金を払います。大人は500円とのこと。ここで恥ずかしながら小銭を切らせて、千円札を出してしまいました。すると、おばちゃん、また重そうな体を揺すらせて、お釣りをとりに奥へと下がっていきます。

 こういう施設では、なるべく小銭を持ち運ぶべきだな…なんて教訓をひとつ身に着けて、さて、湯に向かいます。そこへおばちゃん、

「ゆ~っくり、入っていってね」

 てっきり、この一言が、何の気もないお愛想だと思っていたのです。

山のいで湯、浅くてぬるくて…

 温泉は男女に分かれていて、その一つに入ります。建物の構造上なのか、それともたまたまそうだったのか、脱衣所も浴室も、とにかく薄暗いんです。それがまた山奥感をあおってくれます。

 洗い場で湯をかぶって、浴槽へ。細い湯筋ですが、板樋を通ってチョロチョロと湯が注がれています。

 さて、いざ、入湯~(ケーキ入刀みたい。こんな言葉、ありませんよね。すみません…)。

 うわ、ぬるッ!

 あれ、おかしい。温め直し? 手前のひざ下までの浴槽だからぬるいんだ。奥の深いほうなら熱いはず。そう思って急いで移動します。

 でも、ぬるいんです。手を伸ばしてチョロチョロと注がれている湯に触れてみると、あれ、やっぱりぬるい!

 それも当然だったんです。あとで調べてみたところ、ここは温泉ではなく、源泉温度10.8度の冷鉱泉。加温されているはずですが、かけ流しのため、さほど温度は上がらないのでしょう。

それでも汗がしたたり落ちて 

 おばちゃんの「ゆっくりしてって~」も当然。湯から上がると寒く感じるのだから、ゆっくりせざるを得ない…。

 でも、屋根下の窓からおちてくる日差しや、外に聞こえる鳥のさえずり、川のせせらぎを聞いていると、それなりに落ち着いてきます。

 そして気づけば、頭から顔から、とにかく尋常でない汗をかいていました。

 ナトリウム鉱泉だけあって、湯を口に含むと塩っ辛い。この塩がじっくりと効いてくるんでしょうか。20分も湯船に浸かっていると、吹き出すように汗が流れてきます。

 いい湯でした。全身がほてって、山の風が気持ちいい。肌もツルツルになりました。

 帰り際、施設入り口脇につながれていた犬が、見送りにでてきてくれました。せっかくきれいになった手や顔を、思いっきり舐められて…。

 朴訥なおばちゃんと、人懐っこい犬と、自然とお湯と。
 ゆっくりした時間が流れている温泉でした。

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