自由研究には向かない殺人
「自由研究」といえば日本においては小学生が夏休み(の主に終盤)に取り組む宿題だが、本書の「自由研究」はどちらかといえば大学生の卒業論文やレポート課題のイメージに近い。原題は“A Good Girl's Guide to Murder”。 イギリスの小さな町、リトル・キルトンに暮らす物知りで成績優秀な高校生、いわゆる「よい子」のピップが、レポート課題を隠れ蓑にして5年前に同じ町で起きた事件を調べる、というのが主な筋書きだ。
5年前の事件では、ピップと同じ学校に通っていた人気者の上級生アンディが行方不明になった。嫌疑を掛けられた交際相手の高校生が、その数日後に遺書とともに遺体で発見され、事件は終わったこととされた。しかしピップは彼が犯人ではないと信じており、その無実を証明するために奔走する。
ピップは探偵でもなければ刑事でもない、しがない女子高生だ。容疑者を取り調べることはできないし、被害者や関係者の家や所有物を調査することもできない。しかし、地元で育った女子高生なので、関係者の友人や家族に話を聞くことはできるし、SNSから事件当時の様子をうかがうこともできる。ピップが(少し猪突猛進な)女子高生にしかできない方法で調査を進めていくところが本書の見どころ(?)ではないだろうか。尋問も指紋採取もできないけど、パブサはするしなりすましもするし、大人相手にカマもかける。
事件の謎を解き明かそうとする気持ちと、幼いころから知っている身近な人間を疑いたくない気持ちがせめぎあう中で、傷だらけでも進んでいこうとするピップがまぶしい。同時に、自分の大切なものを守ろうとするあまり、正しさを貫くことを投げ出してしまった大人の弱さも浮かび上がる。
実は本書だけではすべての謎は明かされない。続編の『優等生は探偵に向かない』もあわせて読むと、出来事の全貌が見えるのでオススメだ。つらつらと駄文を書いてきてしまったが、シンプルにめちゃくちゃおもしろかったので私はうっかり原著も買ってしまった。最後まで読めたらほめてほしい。あと、私の推しであるところの佐藤日向さんが、私の100倍くらいちゃんとした書評を書いているので、リンクを貼っておく。
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