座るという拷問

 オタクなりせば誰もが一度は魔女狩りや拷問について調べたことがあると思う。
 何で読んだのか覚えていないが、人間というやつは特定の姿勢を長いこと取らせると血の巡りが悪くなったり筋肉への負荷が変なふうにかかって著しい痛みや不快感に襲われるようだ。
 へーそうなんだー、と長く思っていた。物理的に殴ったり切ったりするような力の行使を伴わなくても、人間は勝手に痛くなるんだなぁ不便だなぁと。

 しかしそれを自分で体験しようとは思わなかったよね。

 何があったかといえば、今日は通院をして、点滴の間座っていたのだ。一時間だったか1時間半だったか、とにかく座っていた。
 石抱きの如き無体を働かれたわけでは別にない。
 それでもこれが全身バキバキに痛いんだ。

 仮に安楽椅子とかアーロンチェアとか、体重を全面的に委任してグンニャリできる椅子なりせばまだ話は早かったと思う。
 しかして座ったのは椅子ではなかった。ベッドであった。そして隣にはまた別の人が類似の刑罰に処されていた。
 正月休みで処置にあぶれていた人が一気に訪れたのであろう、病院は超満員で、点滴のベッドが足りていなかったのだ。

 そんな次第で、いい感じに座ることはさっぱり想定されていない医療用のベッド……というかあれはもう処置用の台というべきだよね。その上で座っていた。自分の骨格や体重を自分で支えながら同じ姿勢で長いこと座るのは、思っていたよりずいぶんきつかった。

 素人はまず座禅のポーズを維持できないよ、とむかし仄聞した覚えがある。何を大袈裟なと笑ったものだ。
 わたしは認識を改めることにする。何らかの構造体に依託せず体を支え続けることは苦行であるし、それを強いられるのは緩慢な拷問である。

 たのむから、今度行くときはすいててくれ。

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