年賀状を盗み、破り、再投函した男
容疑者(38)は1月1日、西宮市高須町にあるマンションのポストから配達済みの年賀はがき5枚を盗んだ疑いで14日、逮捕されました。
警察によりますと、周辺の複数のマンションでも、同じような被害があったほか、お年玉付き年賀はがきの抽選日翌日の16日、市内の複数の郵便ポストに配達済みの年賀はがき1100枚以上が、再び投函されているのが見つかりました。
寺井容疑者は「寂しさを紛らわすために他人の年賀状を見ていた」と話していますが、自宅からは、他人宛の破った当選はがきと、3等の賞品の切手シート4枚が見つかっていて、警察は、寺井容疑者が賞品目的で盗み、ハズレはがきを投函した可能性もあるとみて、調べています。
味わい深いニュース。
本当に寂しさが原因の犯行だったら悲しいが、破られた当選ハガキと切手シートがあったということはやはり金銭目的(お年玉付き年賀ハガキの景品目的)だったのだろう。
当選ハガキの引き換えには本人確認が必要なはずだけど、切手シートくらいだったら職員の判断で省略されてしまう場合もありそうだ。
しかし本当に金銭目的だったとしたら、今度はその浅慮さに別の意味で悲しくなってしまう。
まず、前述のように郵便局では本人確認が行われること。破られた当選ハガキは、おそらく本人確認されたため引き換えられなかったものと思われる。切手シートは1000枚のうち30枚は当選しているはずなのに、4枚しか見つかっていないのも、無事に引き換えられたのがそれだけだったと考えれば自然な数だ。
他人の年賀状を持ってきて本人確認できなかった人間は職員に怪しまれるだろう。1回、1枚ならともかく、何回も何枚も同じ人間が来ていたら明らかに異常。想像するに、いくつかの郵便局を回って引き換えを試みたんじゃないだろうか。
次に、換金効率が悪すぎること。コレクター需要があるとはいえ、3等の切手シートは数が多すぎて高価ではない(2月15日現在、ヤフオクで200円前後で売られている)。いくら生活が苦しくてももう少し効率の良い窃盗があるように思う。
もちろんもっと高い景品が当たる可能性はあるが、2等のふるさと小包は1万本に1本。1等の現金30万円は100万本に1本。どちらも期待値としては1円を切っていて、切手シートより低い。
1万枚(重さにして20kg!)の年賀状を集めたとして、期待値としては6万円から7万円ほどのプラスということになるわけで、手間とリスクに見合っているとは自分は思わない。
最後に、何故か盗んだ年賀状を再投函していること。これはリスクしかない行為であまりにも非合理的なので、良心の呵責に耐えかねたとしか思えない。どんな目的だったとしても、露見を防ぎたいなら燃やすなり捨てるなりで消滅を図るしかないわけで、この一点のみが犯行全体を異様かつ味わい深いものにしている。
ネットで検索するまで思い至らなかったが、年賀状を盗むという犯罪にはまた別の目的が備わっている可能性があるそうだ。
それは「家族構成など個人情報を得て、侵入窃盗や詐欺などに活用するため」です。
年賀状などには住所と家族構成が書かれていることが多いですよね。
泥棒にとっては、年賀状を頼りにその住所に行って物陰に隠れていれば、家族数がわかれば全員出かけたかどうかも分かるため、不在確認ができることになります。
つまり、ものすごいありがたい情報源となるのです。
納得。
確かに、年賀状には住所に加えて家族の名前が書かれている。場合によっては家の外観やペットの有無、資産の多寡までわかってしまうこともありそうだ。
今回の容疑者がそれを狙っていたとはとても思えないが(再投函したという事実のみであらゆる知的な犯罪が不可能と思われる)、防犯の観点からも年賀状という文化は廃れた方が良いのかもしれない。
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