2024/5月第三週のゾンビ論文 アメリカを襲う白癬…ゾンビのように
本物のゾンビについて書かれた論文を探すべく、Googleスカラーのアラート機能を使い、ゾンビについて書かれた論文を収集している。
アラートの検索条件は次の通り。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)
「zombie narrative」(さらに取りこぼし確認用)
「zombie」をキーワードにゾンビ論文を探しているのだが、比喩としてゾンビを使う論文も多いため、「-◯◯」で比喩としてのゾンビを扱うが論文を排除している。排除したいゾンビや論文は、以下の通り。
「-firms」:ゾンビ企業
「-philosophical」「-Chalmers」:哲学的ゾンビ
「-drug」:ゾンビドラッグ
「-network」:情報科学系の論文ならなんでも
「-DDoS」:ゾンビPC
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬
「-gender」:ジェンダー学系の論文ならなんでも
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などの評論
「-AI」:人工知能を扱う情報科学系の論文
検索条件1には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを条件2で確かめる。ただし、「-narrative」で排除される論文の中にはねらいの論文が含まれている可能性もあるため、条件3も設定してある。
今回、5/13~5/19の期間で収集し、以下の通りの論文を得た。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」一件
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」三件(条件1との重複を含めれば四件)
「zombie narrative」48件
検索条件1は菌類学が一件のみだった。
検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
耐性白癬菌による皮膚糸状菌症 ― 新たなパンデミックが現在米国で発生
一件目。
アラート日付:5月18日
原題:Resistant Trichophyton indotineae Dermatophytosis—An Emerging Pandemic, Now in the US
掲載:Dissections Horror E-Zine
著者:Toan S. Bui と Kenneth A. Katz
ジャンル:菌類学
タイトルの通り、人間の皮膚に寄生する菌類がアメリカを脅かしているという。具体的には、Trichophyton indotineaeと呼ばれる白癬(皮膚糸状菌症とも)を引き起こす真菌。
真菌による人間への脅威を強調する際に、『The Last of Us』を引いており、それゆえに検索に引っ掛かったのだろう。
ジャンルは菌類学。衛生学でもよいかもしれない。
検索条件2「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」
上記の条件でねらいのゾンビ論文を誤って排除していないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPC、哲学的ゾンビおよび評論系の論文は排除されるように設定してある。
観光世紀:バルセロナ、オーバーツーリズム、そして都市圏の空間的未来
アラート日付:5月13日
原題:The Tourismocene: Barcelona, Overtourism, and the Spatial Futures of the Polis
掲載:Spatial Futuresという本
著者:Mekonnen Tesfahuney とRichard Ek
ジャンル:観光学
「-network」および「-philosophical」、「-narrative」で排除。オーバーツーリズム、つまるところ観光公害、悪質観光客問題を「ゾンビの群れが都市に侵入する」と喩えている。ただし、この喩えは十人によるポピュリズムの現れだとして批判している。
エコフェミニズムと大量虐殺資本主義への文化的親和性: 現代ギリシャにおける墓地政治的フェミサイドの理論化
アラート日付:5月16日
原題:Ecofeminism and the Cultural Affinity to Genocidal Capitalism:
Theorising Necropolitical Femicide in Contemporary Greece
掲載:Social Sciences
著者:Anastasia Christou
ジャンル:社会学
「-network」および「-philosophical」、「-narrative」、「-drug」、「-gender」で排除。ゾンビが出てくる映画を以下のように読み解く。内容はいまいち理解できないが…きっとジェンダー的には意味のある内容なのだろう。
シャーガス病の血清学が一致しない被験者におけるナチュラルキラー(NK)細胞の細胞毒性およびクルーズトリパノソーマ特異的記憶B細胞の増加
アラート日付:5月16日
原題:Increased Natural Killer (NK)-cell cytotoxicity and Trypanosoma cruzi-specific memory B cells in subjects with discordant serology for Chagas disease
掲載:Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease
著者:María J. Eliasを筆頭著者として、12名
ジャンル:医学
「-gender」で排除。性別ごとに被験者を募ったため、genderの単語が使われただろう。細胞の死を確かめるゾンビ試薬を扱った論文。
検索条件3「zombie narrative」
検索条件2の「-narrative」がねらいの論文まで排除していないか調べる。
以下、30件のゾンビ論文が見つかった。そのうち、「-narrative」で排除したかった評論・比較文化学・社会学など(太字で表示する)は計20件だった。つまり、残りの10件は意図せず排除してしまったゾンビ論文である。ただし、この中にねらいの論文はなかった。
まず、5/13の分。なぜか経済学が入っているが、投資にあたってのまやかしの物語をnarrativeと呼んでいるらしい。
Journey to the Underworld: Death and the Quest for Identity in Chicanx Comics(冥界への旅: Chicanx コミックスの死とアイデンティティの探求 メディア学)
"Same Thing Really": Queer Love and Horror as "Gothicky" in Ratched and The Haunting of Bly Manor(「Same Thing Really」:ラチェッドとブライ邸の幽霊の「ゴシック」としてのクィア・ラブとホラー メディア学)
WORLDBUILDING: A THEORY OF RESILIENCE IN TRANSGENDER AND GENDER EXPANSIVE YOUNG PEOPLE(世界構築: トランスジェンダーとジェンダーの広がりを持つ若者におけるレジリエンスの理論 ジェンダー学)
The Tourismocene: Barcelona, Overtourism, and the Spatial Futures of the Polis(ツーリズムシーン: バルセロナ、オーバーツーリズム、そしてポリスの空間的未来 観光学)
Empirical Essays on Corporate Financing Behaviors(企業の金融行動に関する実証的エッセイ 経済学)
A Case Study on the Implementation of Experiential Learning Integrated with Virtual Reality Technology in Teacher Education(教師教育における仮想現実技術と統合された体験学習の導入に関するケーススタディ 教育学)
A Hegemonic City: Discursive approach to ideology and dominance in development and planning of post-socialist Prague(覇権都市: ポスト社会主義プラハの開発と計画におけるイデオロギーと支配に対する言説的アプローチ 都市経済学)
Sexuality Is Over. Long Live Asexuality(セクシュアリティは終わった。無性愛万歳 ジェンダー学)
No "Monsters": a Manifesto for Contemporary Gothic, Horror, and Weird (GoHoW)(「モンスター」はいらない:現代のゴシック、ホラー、そして奇妙なマニフェスト メディア学)
次に、5/15の分。
George Perez(ジョージ・ペレス 評論)
Shaolin Brew: Race, Comics, and the Evolution of the Superhero(少林寺酒造: 人種、コミック、そしてスーパーヒーローの進化 評論)
次に、5/16の分。医学と小児科学の論文は、病人や障碍者をゾンビと呼ぶことに触れている。
Second-order observation of art in two films about Colombian violence: Carne de tu carne and Memoria(コロンビアの暴力を描いた 2 本の映画『カルネ・デ・トゥ・カルネ』と『メモリア』における芸術の二次的観察 芸術学)
Ecofeminism and the Cultural Affinity to Genocidal Capitalism: Theorising Necropolitical Femicide in Contemporary Greece(エコフェミニズムと大量虐殺資本主義への文化的親和性: 現代ギリシャにおける墓地政治的フェミサイドの理論化 ジェンダー学)
Virtual Reality, Literature and Education: Immersive Narratives for Children and Young Adults(仮想現実、文学、教育: 子供と若者のための没入型物語 教育学)
How do the films Old boy, 2003 and Train to Busan, 2016 critique and reflect on South Korean neoliberalist capitalism reform post the country’s IMF bailout?(映画『オールド・ボーイ』2003 年と『釜山行き列車』2016 年は、IMF 救済後の韓国の新自由主義資本主義改革をどのように批判し、反映していますか? 評論)
The Building Blocks of Consciousness(意識の構成要素 哲学)
THE DARKNESS WITHIN US: POSTMODERN GOTHIC IN CHUCK PALAHNIUK’S FIGHT CLUB(私たちの中の闇: チャック・パラニュークのファイトクラブのポストモダン・ゴシック 評論)
Beyond Research Methods: Unpacking Ideological Criticism Through Ontology, Epistemology, and Ideographs(研究方法を超えて: 存在論、認識論、表意文字を通じてイデオロギー批判を解き明かす 哲学)
“I feel like he’s looking in the computer world to be social, but I can’t trust his judgement”: Reimagining Parental Control for Children with ASD(「彼はコンピューターの世界で社交的であることを求めているように感じますが、彼の判断は信頼できません。」: ASD を持つ子供のためのペアレンタルコントロールの再考 小児科学)
Cancer experience in metaphors: patients, carers, professionals, students – a scoping review(比喩で見るがん体験: 患者、介護者、専門家、学生 – スコープレビュー 医学)
次に、5/17の分。経営学は意外に見えるが、ゾンビを倒すゲームについて触れていたのだろう。
The Rezort (2015) : zombies, réfugiés et protocoles B(リゾート (2015): ゾンビ、難民、B プロトコル 評論)
Toward an Anarchist-Apocalypse Cinema Analysis(アナーキストと黙示録の映画分析に向けて 評論)
CULTS IN LINEAR VIDEO GAMES FROM A NARRATIVE PERSPECTIVE(物語の観点から見たリニアビデオゲームのカルト 評論)
Social media marketing strategies for Vietnamese mobile game companies based on case study of Play Together VNG(Play Together VNG のケーススタディに基づくベトナムのモバイル ゲーム会社のソーシャル メディア マーケティング戦略 経営学)
Critical Readings on Hammer Horror Films(ハマーホラー映画の批評 評論)
The Soviet and Post-Soviet Anthrobscenes: Speculations from Cheburashka to Khokhulya(ソビエトおよびソビエト崩壊後のアントロブシーン: チェブラーシカからホフリャまでの推測 歴史学)
Towards a semi-automatic classifier of malware through tweets for early warning threat detection(早期警告脅威検出のためのツイートによるマルウェアの半自動分類に向けて 情報科学)
The Commercialisation of Massive Open Online Courses(大規模なオープンオンラインコースの商業化 教育学)
LONELINESS AS IT STANDS IN RELATION TO THE HUMAN CONDITION: DAVID FOSTER WALLACE’S GRAPPLING WITH LONELINESS, DEPRESSION, AND A DESIRE TO LESSEN THE PAIN OF EACH(人間の状態に関連した孤独: デビッド・フォスター・ウォレスの孤独、うつ病、そしてそれぞれの痛みを軽減したいという願望との闘い 評論)
次に、5/18の分。
The New Final Girl Shares Her Trauma(新しいファイナルガールがトラウマを共有 評論)
Classics in Chemical Neuroscience: Xylazine(化学神経科学の古典: キシラジン 医学)
THE POST-APOCALYPTIC WORLD OF GOLDING’S LORD OF THE FLIES(ゴールディングの「蝿の王」の黙示録的な世界 評論)
Performance review: Galatea by John Lyly(パフォーマンスレビュー: ガラテア by John Lyly ?)
“FOR I DIPT INTO THE FUTURE …”: AN ANALYSIS OF MEDIA PREDICTIONS ABOUT THE FUTURE NORTH AMERICAN FOODSCAPE, 2000–2023(「私が未来に浸るのは…」: 将来の北米の食生活に関するメディア予測の分析、2000 ~ 2023 年 メディア学)
Genre theory in practice: turning horror films into horror film music: an adaptation of thematic evil from film to soundtrack EP(ジャンル理論の実践: ホラー映画をホラー映画音楽に変える: 映画からサウンドトラック EP へのテーマ悪の適応 評論)
Challenging Norms, Creating Art: An Anti-Ableist Lens on Visual Arts Education(規範への挑戦、芸術の創造: ビジュアル アーツ教育に対する反障害者レンズ 教育学)
Academic urban legend, Agbogbloshie: Sweeping away the "World's Largest E-Waste Dumpsite"(学術都市伝説、アグボグブロシー:「世界最大の電子廃棄物廃棄場」の一掃 社会学)
MathKinetics: Solving Arithmetics while Running out of Breath(数学力学: 息切れしながら算術を解く 教育学)
Tourism and Heritage in the Chornobyl Exclusion Zone(チェルノブイリ立ち入り禁止区域の観光と遺産 歴史学)
最後に、5/19の分。
Moral aspects of filial concern for a parent living with dementia: Social imaginaries in contemporary narratives(認知症とともに生きる親に対する親孝行の道徳的側面: 現代の物語における社会的想像力 医学)
Life After Whale: The Amazing Ecosystem of a Whale Fall by Lynn Brunelle, illus. by Jason Chin (review)(リン・ブルネル著、ジェイソン・チンイラスト『Life After Whale: The Amazing Ecosystem of a Whale Fall』 書評)
Into the wonder – exploring the design of playables(不思議な世界へ – プレイアブルのデザインを探求する ゲームデザイン学)
Sleep Disrupted: The Evolving Challenge of Technology on Human Sleep Patterns Over Two Centuries(睡眠の中断: 2 世紀にわたって人間の睡眠パターンに対するテクノロジーの進化する課題 医学)
The Uberfication of the Doctorate: Higher Degrees in End Times(博士号の独占: 終末におけるより高い学位 教育学)
Qualitative study of the lived experience of methylphenidate prescribed for children with a fetal alcohol spectrum disorder(胎児性アルコールスペクトラム障害を持つ子供に処方されたメチルフェニデートの実体験に関する定性的研究 医学)
What If Fungi Win?(菌類が勝ったらどうなる? 菌類学)
Cruel Destiny and The White Negress: Two Novels by Cléante Desgraves Valcin(Cruel Destiny と The White Negress: Cléante Desgraves Valcin の 2 つの小説 文学)
The Specificity of Fantasy and the “Affective Novum”: A Theory of a Core Subset of Fantasy Literature(ファンタジーの特異性と「感情的ノヴム」: ファンタジー文学の中核となるサブセットの理論 文学)
EMOTIONAL INTELLIGENCE IN GAME ELEMENTS FOR FORMING HIGHER FEELINGS IN ACTIVE AND DEEPER LEARNING(アクティブでより深い学習でより高い感情を形成するためのゲーム要素の心の知能指数 教育学)
最後に
検索条件1は菌類学が一件のみだった。
その一件には興味がなく、他にも特に興味を引くようなゾンビ比喩もなかった。
しかし一点興味を引いたのは、「zombie narrative」の検索条件でそこそこの数の医学系の論文がヒットしたこと。医学系論文でゾンビといえば、これもあでも病人や感染者、障碍者をゾンビと呼ぶ悪しき表現についてが多かったが、私の頭の中では「narrative」という単語と結びつかなかった。ここが意外に感じられて、面白いと感じた。5月のまとめ記事でその辺は詳しく触れることにしよう。
今回はねらいの論文がなかった。
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