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アサシンクリード問題改め日大准教授による歴史修正問題と橋下徹

(もしかしたら「歴史修正問題」は、「歴史修正過失」や「歴史修正未遂」とした方が正しいかもしれない)

人気ゲームであるアサシンクリードの最新作、『アサシン クリード シャドウズ』が炎上している。日本を舞台に侍が活躍するというのに、実在したとはいえ黒人を主人公に据えたり日本文化の描写が雑だったり製作者が「日本人が主人公では感情移入できない」とも聞こえる発言したりと、ポリコレにうんざしした日本人ユーザーの神経を逆なでる要素が多かったからだ。トンチキ日本描写愛好家ですら腹を立ててしまったのは、これだけ多くの要素が重なったからなのだろう。

しかし炎上はアサシンクリードに留まらず、日本大学准教授Thomas Lockley(トーマス・ロックリー)氏に延焼した。

いや、延焼というか本丸らしい。というのは、実在した黒人侍「弥助」を海外で精力的に宣伝したのがロックリー准教授らしいのだ。

つまり、

  1. 黒人侍弥助が主人公になったのは、弥助が伝説的な侍だと噂が立っていたから

  2. しかしその伝説の内容は史実に対して盛られ過ぎている

  3. その伝説を海外で広めたのは、日本大学准教授トーマス・ロックリー

  4. トーマス・ロックリーが本丸だ!

ということらしい。

さらに悪いことに、ロックリー准教授の本に日本でも黒人奴隷がいたという記述があった。一応言っておくが、小説パートと解説パートを含む本であり、その小説パートの記述らしい

ここから負の感情が連鎖し、今では「白人が日本でも黒人奴隷がいたと歴史修正を試みている」「自分らの歴史的悪行を多人種に押し付けるのがポリコレの真の目的」など怒りのコメントが渦巻いている。ポリコレの真の目的はずっと前からその通りなのだが、ただ、ロックリー准教授個人への言及に限ればどこからどこまでが本当なのかわからない状況だ。

たとえば以下のツイート。日大が炎上騒ぎを見て隠蔽に走ったでも言いたそうなツイートだが、

日大トーマス・ロックリーの情報消したって噂だけど

日本語じゃなくて英語なら出てくるなw

辰巳賢一@最近よく眠れません(-_-;)@KStllite
午後0:04 · 2024年7月20日

https://twitter.com/KStllite/status/1814496625622241366

これはほかの外国人講師も同様である。日大の国際関係学部教員リストには何人も外国人らしき人間がいるが、同リストのOliveira Diego助教Maria DEL VECCHIO専任講師は「オリビエ」や「マリア」で検索しても出てこない。また、「トーマスロックリー」でGoogle検索すると、きちんと日大のロックリー准教授のHPが出てくる。

しかしとにかく多くのTwitterユーザーがお怒りだ。日大はロックリー准教授に然るべき処分を下すべきだ、いや日大への助成金をカットすべきだという声まで上がっている。


と、私がここで思い出したのは、ほぼ同時期に炎上した元政治家の橋下徹のツイートである。

このツイートのリプ、引用を見ると、基礎研究は重要だ、基礎なのだから将来性が不明なのは当然、基礎研究のどれが将来役に立つかわからない、基礎研究を蔑ろにする人間はバカだアホだ、といったツイートが多く連なっていた。中には、基礎研究が世の中の役に立った例を提示したツイートもあった。どんな研究にも価値がある、何が実を結ぶかわからないからとにかく金を出せと言わんばかりだ。

翻って、ロックリー准教授の研究成果はお気に召しただろうか?猛批判、大炎上の様相を呈しているが、いやいやどんな研究にも価値はあるし、これから実を結ぶかもしれない。引き続きロックリー准教授には日本大学でご活躍いただき、研究費も税金から捻出すべきだ。橋下氏の上記ツイートを否定するならば、こうやってロックリー准教授への猛批判にも立ち向かわなければならないだろう。

これはこれ、それはそれ、是々非々で批判しなければならないと思うだろうか。であれば橋下氏の言う通り、学者に詐欺師はいるということになる。というか、もしも負の感情の総意が言うようにロックリー准教授が研究の体を取って噂を流したならば、彼は橋本氏の指摘する詐欺師そのものだろう。橋下さんを批判していたツイッタラーの中には実名の大学教員もいたが、今どんなツラして生きているのだろうか。

また、橋本氏のツイートにはご丁寧にコミュニティノートまでついていた。読んでみよう。

研究費について誤解を招く可能性が高い投稿です。「多数」の学者が「詐欺師」のように不当に研究費を得ているという主張は、研究費の審査方法などに照らすと現実的ではなく、事実に基づくものではありません。

例として、主要な公的研究費である科学研究費助成事業においては、複数の審査員の合議によって審査が行われ、交付されたのちには成果の事後評価が行われます。
jsps.go.jp/file/storage/k…

また、公的研究費の不正使用は文部科学省によれば令和4年度には4件であり、多い年でも十数件程度です。
mext.go.jp/a_menu/kansa/h…

https://twitter.com/hashimoto_lo/status/1812129352911663449

ロックリー准教授の悪行とやらは、海外でのインタビューや一般書籍で広がっていたようである。であれば、このコミュニティノートは的外れもいいところだ。科学研究費だって全員がもらっているわけではないのだから。また、びっくりしたのだが、「公歴研究費の不正使用は…多い年でも十数件程度」は「研究者にはこんなに不正な輩がいるんだぜ!」という意味以外に解釈しようがないのだが、どういう神経なのだろうか。私は「そんなにいるのか…」と唖然としてしまったのだが。うっかりミスもあるのだろうけれど。

また、私は一般的なTwitterユーザーと違うのでツリーを遡って発言を確認することができる。ゆえに橋下氏が腹を立てたのは、土木を研究している学者が(橋下氏からすれば)トンチキに政治を語ったことだったと知っている。基礎研究へ言及していないのだから、そもそも橋下氏のツイートへの反論で基礎研究の重要性を説くことが的外れなのだ。「役に立つかもわからん研究だって…?基礎研究のことに違いない!」という短絡的な思考で物事を関連付ける悪癖が発揮された例と言えるだろう。

仮に基礎研究の実用例が誠実な学者の証明つながるとしても、詐欺学者がいない証明にはならない。「Aグループには詐欺師がいる」に対して「Aグループには立派な人間もいる」と反論しても、「Aグループには詐欺師も立派な人間もいる」としかならないからだ。考えなくとも当たり前の、ごく簡単な論理なのだが、まあ、橋下氏をこき下ろして溜飲を下げたいなのだろう。これは基礎研究をないがしろにされて怒れる大学教員にも同じことが言えるが、Twitterにいる大学教員は都合が悪くなると急に知能が下がる特殊能力を持っているから、仕方がないか。

もっと面白いのは、まず、橋下氏が腹を立てたきっかけが政治評論であることから、ブチ切れはどちらかと言えば政治や社会学など文系の学者に対してなされたことが想像される。にもかかわらず、基礎研究の重要性を説く反論ツイートは理系のものがほとんどであったことだ。実名で大学教員をやっている人間ですら、だ。


つまり、基礎研究の重要性を説く人間ですら、多くが文系学問の価値を認めていないのである。

文系学者本人が言及しているのは見たかな…。全然伸びてなかったけど。

とにかく、文系蔑視という点では怒れるTwitterユーザーは橋下氏の意見に大きく頷いてしかるべきだ。文系の学者にはカスみたいなのが多い…Twitterで有名な社会学、政治学の大学教員を見るとそう思わないだろうか。私はそう思うし、同意する人間も多いと確信している。ロックリー准教授周りで連鎖する負の感情の大元や、アサクリスタッフへは向かなかった大きな気炎の理由が、その悪感情にあると得心がいく。

ロックリー准教授が本格的に炎上する前、橋下氏のツイートを読んだ時から「いや詐欺教員はいるだろ」と私は思っていた。ロックリー准教授の炎上を見ていると、みんなもそう思っている様子だ。だったら、橋下氏への態度はもっと改まるべきじゃないですかね。



追記

一応、「こないだ橋下さんを叩いたばっかで、次は学者叩き!?平仄を合わせろよ」と言いたくて、「この炎上に参加している人間はロックリー准教授に関する噂を鵜呑みにして騒いでいる」という体で記事を書いたのだが、そういう人間を鼻で笑って終わろうとする歴史学者や歴史好きがぽつぽつ現れており、「日本人しか罵倒できないてめえらの腑抜け根性がポリコレ汚染を呼び寄せてんだよ、ボケ」と思ったので追記を。

まず、ロックリー准教授は弥助を盛りまくっただけで、彼が「日本でも過去に黒人奴隷がいた。蔓延っていた」と喧伝したという確定的な証拠はない。情報が錯綜して追いきれないというのもあるが、たとえば、引用したツイートが紹介している本にはこうある。

弥助は日本を旅した最初のアフリカ人ではなかったが、これだけ高貴な人物に随行したアフリカ人は彼が最初だったにちがいない。イエズス会士は清貧の誓いを立てて奴隷制に反対しており、通常はアフリカ人を伴うことはなかったからだ。(中略)地元の名士のあいだでは、キリスト教だろうとなかろうと、権威の象徴としてアフリカ人奴隷を使うという流行が始まったそうだ

(本のタイトルがわからない)

小説パートの文章らしいし、伝聞の形をとっている上に、普通に読めば「日本中に黒人奴隷がいた」とは読めない。ゆえに、怒れるTwitterユーザーを「炎上に加担しているやつらはまともに日本語も読めないし、一次ソースも確認できないバカだ」と冷笑するボケたTwitterユーザーを何人か見た。

そう、炎上に参加する怒れるTwitterユーザーの中には相当数、日本語も読めずに一次ソースも確認できないバカがいるのだ。バカどもが「日本に黒人奴隷がいたと歴史が改竄されそうになっている!ロックリーの仕業だ!」と騒いでいるのだ。そのバカを指さして日本語を読めて一次ソースを確認する冷静さを失わない賢しらなTwitterユーザーが出始めたのも無理はない。

しかし外国にも同レベルのバカがいないとどうして言えるだろうか。ロックリー准教授の本やそのレビューを曲解した外国のバカどもが「日本にも黒人奴隷がいたんだ!」と誤解する可能性は、大いにあるとしか言いようがない

日本にバカがいるなら外国にもバカがいる…こんな単純な真理を抑えずに、「ロックリー准教授はそんなこと言ってないでしょ、バカだなあ」と鼻で笑う。全くもってボケている。論点もボケていれば、頭もボケている。今回に限っては、近視眼的に負の感情に連鎖するだけのバカよりも、賢しらにバカを嗤うボケの方がよっぽどたちが悪い。バカに曲解される可能性があり、それによって将来日本に黒人差別の汚名を着せられるくらいなら、大騒ぎして国際問題に発展させた方がマシだ。

確かにロックリー准教授は歴史修正に加担していないかもしれない。だから冒頭で「歴史修正過失」と書いたのだが。しかし歴史修正の口火を切る可能性はある。大いにある。いや、すでに日本の歴史に黒人が欠かせなかったと信じる外国のバカが出始めているそうだ。炎上の気勢を弱めるべきもなし。バカになって燃やしつくしてやろうではないか。


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