2023/07/27(木)のゾンビ論文 家賃の上限制限はゾンビアイデアなのか?
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」
「zombie」(取りこぼし確認)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」/「-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。
それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」一件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」一件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」一件
「zombie」二件(差分一件)
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は経済学が二件、情報科学が一件だった。
検索キーワード「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」
新型コロナウイルス感染症時代の中国のゾンビ企業
一件目。
原題:Zombie companies in China in the COVID-19 era
掲載:International Insolvency Review
著者:J. ZhaoとC. Wei
ジャンル:経済学
ゾンビ企業に関する論文。"zombie company"と記載されているため、「-firm」をすり抜けてヒットしてしまった。"zombie firm"だったら排除できたのに。
レントコントロールは「ゾンビアイデア」ではない
二件目。
原題:Rent controls are not a 'zombie idea'
掲載:Green Left Weekly
著者:Isaac Nellist
ジャンル:経済学
"Rent control"の説明をWikipediaから引用する。引用元は『Rent regulation』だが、『Rent control』に複数の意味があるため曖昧さ回避の目的で『Rent regulation』に飛ぶようになっている。
平たく言えば、賃貸物件に住んでいる人間を保護する目的で急激な賃料上昇や立ち退きに一定の制限を設ける法律らしい。
そして、そのレントコントロールは「ゾンビアイデア」ではないと、この論文は主張する。突然「ゾンビアイデア」という単語が出てきたのは次の記事が原因だろう。
家賃の上限を決めることは市場原理をゆがめるため、結局は国民のためにならない、というのがこの記事の主張である。「死んだ政策」が「掘り起こされた」というのが「ゾンビ」の名を冠する理由のようだが、次の文章はさらに詳しい。
過去に検討され、すでに論外と結論が出たものが再び蘇った。それをもってレントコントロールをゾンビなアイデアと呼ぶことに決めたらしい。
そして、その主張に対して、レントコントロールは決してゾンビなアイデアではないと反論をするのが本論文だということだろう。
ちなみに、レントコントロールをゾンビアイデアだと主張する記事が2023年06月14日、ゾンビアイデアではないと主張する論文が2023年07月01日。対応が早すぎる気もするが、状況的にはもっともらしいと思う。
ジャンルは経済学でよいだろう。市場原理(=需要と供給?)は経済学の範疇であるため。
反事実特徴の重要性を通じてテキストの反事実説明のわかりやすさを向上
三件目。
原題:Enhancing textual counterfactual explanation intelligibility through Counterfactual Feature Importance
掲載:Proceedings of the 3rd Workshop on Trustworthy Natural Language Processing
著者:Milan Bhanを筆頭著者として、四名
ジャンル:情報科学
タイトルもアブストラクトも何を言っているのかわからない。アブストラクトに使われている単語の半分が私の知らない単語である。ただ、本物のゾンビを扱っていないことは間違いない。
掲載誌が「第3回信頼できる自然言語処理ワークショップ講演録」であるので、人間の言葉を機械に理解させるプログラミングか何かだろうか。
ジャンルは情報科学でよいだろう。
検索条件の差分(差分なし)
「DDoS/bot」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。
今回は差異がなかった。ゾンビPCもゾンビ試薬も出てこなかったため、妥当と言える。
検索キーワード「zombie」
このキーワードでは「zombie」ゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。
黙示録は常に存在した
原題:THERE HAVE ALWAYS BEEN APOCALYPSES
掲載:Public Feminisms: From Academy to Community (Googleブックスで閲覧可能)の第五章
著者:Helis Sikkを筆頭著者として、四名
ジャンル:ジェンダー学
掲載誌より、「-gender」で排除されていると推測する。
『危険な情事』という決して死なない文化現象
原題:The cultural phenomenon that is' Fatal Attraction' will never die.
掲載:The Washington Post (Gale academic onefileにも掲載)
著者:Emily Yahr
ジャンル:評論
『危険な情事』という映画の評論。「-gender」で排除。また、zombieの単語は"Alex pops up like a zombie out of the water"というフレーズで出てきた。
水から飛び出るゾンビとはいったい…?
6 つのシーズンと映画: いかにしてコミュニティがテレビを壊したか
原題:Six Seasons and a Movie: How Community Broke Television
掲載:このタイトルの本がある (Googleブックスで閲覧可能)
著者:Chris BarsantiとJeff Massey、Brian Coganの三名
ジャンル:メディア学
アメリカのテレビ番組が映画に壊されたと主張する論文。「-firm」「-philosophical」「-gender」などで排除された。
まとめ
「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は経済学が二件、情報科学が一件だった。
「ゾンビアイデア」という概念を生み出すことからも、いかに白人文化(今回はアメリカではなくオーストラリア)がゾンビという存在に親近感を抱いているかがわかる。日本でも白人文化におけるゾンビのようなお手軽概念があるのだろうか。あるいは、私が知らないだけで日本でもゾンビが親近感を持たれていたりするのだろうか。
今日はねらいのゾンビ論文なし。
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