2023/09/26(火)のゾンビ論文 日本でもゾンビ研究者が輩出されてほしいよ…

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

  4. 「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)

  5. 「zombie -firm -consciousness」(取りこぼし確認その2)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」/「-consciousness」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」/「-botnet」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、検索条件4と5では、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -botnett -xylazine -biolegend -gender」一件

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」一件

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」一件

  4. 「zombie -firm -philosophical」ニ件(差分一件)

  5. 「zombie -firm -consciousness」三件(条件4との差分一件)

検索条件1-3は情報工学が一件だった。


検索条件1「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」

ルームスケールのミリ波センシングによる継続的なマルチユーザーアクティビティ追跡

一件目。

原題:Continuous Multi-user Activity Tracking via Room-Scale mmWave Sensing
掲載:arXiv
著者:Argha Senを筆頭著者として、四名
ジャンル:情報工学

タイトルをかみ砕いて説明すると、一部屋をカバーする範囲で(Room-Scale)複数の人間が何をしているかを継続的にモニタリングする(Continuous Multi-user Activity Tracking)技術を紹介する論文。その技術として使っているのがミリ波センシング(mmWave Sensing)というわけだ。

zombieの単語は"zombie subject"や"zombie cluster"という文字列で出てくる。その意味するところは説明がないため、想像するほかない。

まず、この論文では、部屋の中に複数の被験者が様々に行動し、ミリ波センシング技術で継続的にモニタリングする。それによればこの技術は、歩く、跳ぶ、スクワットする、足を組むなど、19種類の行動を区別できるらしい。

となれば、"zombie subject"のsubjectは被験者という意味だと解釈するのが妥当である。そして、ゾンビのような行動をとる被験者がいるのだろう。それが"zombie subject"である。"zombie cluster"はそういった被験者が固まってクラスタを形成しているか、ゾンビ被験者に特有な波形パターンがクラスタ状になっているかのどちらかだろう。

ということで、当然ながら本物のゾンビに関する論文ではない。しかし人間とゾンビを見分ける技術ということであればちょっと興味がある。興味はあっても、専門的すぎて読めないのだが…。

ジャンルは情報工学。



検索条件1-3の差分(差分なし)

「DDoS/botnet」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。

今回は差分がなかった。

9月はこのままずっとないのでは…?



検索条件4と5「zombie -firm -philosophical / consciousness」

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。

また、哲学的ゾンビのみを排除するには「-philosphical」(哲学的な)と「-cousciousness」(意識)のどちらが良いかを探るために、検索条件の4と5を比較する。

前者は哲学的ゾンビが英語でphilosophical zombieとつづることから、後者は哲学的ゾンビが人間の意識の有無に注目した概念であることから、それぞれ排除可能と想定している。

今回は、検索条件4では一件増え、検索条件5では二件増えていた。

ENG 5742Z-600 作家と教師のためのジャンル研究

原題:ENG 5742Z-600 Studies in Genre for Writers and Teachers
掲載:The Keep (Eastern Illiois University)
著者:Melissa Ames
ジャンル:評論(ジャンル批評)

「-gender」で排除。検索条件4と5でヒット。論文ではなくシラバス。"ENG 5742Z-600"は授業番号だろうか。タイトルから考えれば、ゾンビの出てくるフィクションのジャンル研究に関する講義と考えるのが自然だろう。

ゾンビ映画のリストにも使えるので、抑えておくと何かとうれしいかもしれない。興味がある。



ワールド構築の概念と方法論に関する一考察 ―ゾンビコンテンツ王国を事例として―

原題:세계관 구축의 개념과 그 방법론에 관한 연구 - 좀비 콘텐츠 <킹덤>의 사례를 중심으로 -
掲載:문화콘텐츠연구
著者:성민영と배상준
ジャンル:評論(ジャンル批評)

韓国語のジャーナル掲載の論文。英語表記も併記しておく。

原題:A Study on the Concept and Methodology of Worldbuilding-Focusing on the Case of Zombie Content Kingdom
掲載:The Journal of Culture Contents
著者:Minyoung SeongとSangjoon 

どのキーワードで排除されたかは不明。検索条件5でのみヒット。

韓国のゾンビドラマ、『キングダム』に関する論文。「ワールド構築」のワールドというのは、昨今流行りのユニバースのようなひとつの作品内で収まらないような世界観を指している。



まとめ

検索条件1-3は情報工学が一件だった。

韓国のゾンビ映画・ドラマを扱った論文は今までいくつも見てきた。しかし、それはアメリカの学生や研究者による論文だった。今回初めて韓国本国から発された論文を見つけた。

国内コンテンツの分析はもちろん外部からの目が必要だが、その国特有の思想をどこまで把握できるかは過去の分析報告書に依存する部分が多い。一方、内部からの目は特有の思想を内面化している分だけ細かい箇所にまで手が届くはずだが、客観性に欠けるのは間違いない。

となれば、当然外部からの目と内部からの目の両方が必要なのだ。それも他国の言語に頼るようでは純粋な内部の目とは言えない。内部の目は、自分たちの思想を、自分たちの言葉で紡いでこそ、内部の目足りうると思う。

そのような例が韓国のゾンビコンテンツですでに立ち上がっていることに羨望の思いを抱かざるを得ない。日本では『アイアムアヒーロー』くらいしか分析されていないし、そもそもゾンビ映画もドラマも少ない。研究者も少ないはずだ。ゾンビコンテンツにおける日本の立ち位置はいかに。心配しかない。

今回はねらいの論文がなかった。


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