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建仁寺へゆく

2018年12月、京都奈良の旅2日目の記録。鍵善良房でくづきりを堪能したのち、道路の向かい側にある花見小路通を歩いてみることにした。その途中、建仁寺に出会う。

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わたしの中での建仁寺といえば日本最古の禅寺、国宝の風神雷神図、双龍図である。にわか観光客なのでそれくらいしか知らない。予定には入っていなかったが、騒がしい観光客の気配が無いため、一歩足を踏み入れることにした。

本坊へ行き500円の拝観料を納める。まず視界に入ってくるのは、国宝の風神雷神図だ。この風神雷神図は俵屋宗達が描いたとされている。といっても本物の風神雷神図は京都博物館に寄贈されているため、建仁寺には高精細複製品のレプリカが置いてあるのだ。とはいえ、現代技術で制作されているため、非常に精巧に作られたものだ。眺める価値はある。

風神、雷神という神であるにもかかわらず鬼の風貌である。これは鬼門からの連想といわれている。これまでの人類史のなかで雨、風や雷を始めとした自然現象はひとびとに豊かな生活をもたらすと同時に、破壊的な災いをもたらした。古代のひとびとの理解を超えた自然現象の中に人類にとっての救いの力、すなわち神を見出すと同時に、相反する恐れる力、見えないもの、この世のものではないもの、すなわち鬼と捉えることで、神と鬼は生と死をもたらす表裏一体の象徴だったと考えることもできるのではないだろうか。ちなみに東京国立博物館に蔵められているのは、尾形光琳がこの風神雷神図を模写した重要文化財の風神雷神図である。

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方丈の中をゆっくり歩くと、前庭に広がるのが枯山水様式の大雄苑だ。昨日の龍安寺につづき、しーんとした空気とともに、再びわびさびの世界へ没入した。

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双龍図のある法堂へは、建仁寺で用意してある外履き用のスリッパへ履き替えて移動する仕組みだ。近くにいる警備員が誘導してくれる。法堂に足を踏み入れると、そこは静寂の空間だ。見上げれば108畳分にもなる阿吽の双龍図の圧倒的な画力が目の前に広がる。実は法堂に入ってから15分ほど、ひとりぼっちのタイミングに恵まれた。なんともいえぬ贅沢な時間と空間を独占することができた。

余談だがこの双龍図は2002年に、創建800年を記念して日本画家の小泉淳作氏が2年を費やして描いたものである。したがって古来の歴史というよりも、第一級の芸術として堪能したい。

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本坊の中には有名な潮音庭だ。この枯山水の庭は四方向から眺めることができ、四季折々の変化を愉しむことができる。ここでは数人の観光客が撮影をしていた。奥の部屋には別バージョンの風神雷神図の複製品が飾ってある。

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ふらりと立ち寄った建仁寺。昨今なにかと情報過多なガイドブックや創られた京都ブームにふりまわされがちな世の中である。そこで自分だけの京都の愉しみ方を見出すことで、新たな旅の醍醐味を作りすことができるのではないか。その方法のひとつが観光客が少ない季節、時間帯を有効に活用することだ。旅費が浮くというメリットもあるかもしれない。



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