眠れない夜に枕元に悪魔が

 クスリか病気か。多分その2択で迷ってこのノートを開いてくれたのだろう。通報すればいいのか心配すればいいのか自分なりのスタンスを決めるために。どっちなのかは読み終わった後に君たちに決めてほしい。

 まず、僕は常日頃から死にたいと思っている。
 これも本当に自殺未遂を繰り返したりとかのヘビーなものではないが、本当に死にたい。というか今自分が抱えている人生の重荷を全て降ろして何も考えずに生きたい。でもそんなこと生きている限りは不可能だから、結果死にたいという感情になるのだろう。

 芸人の卵らしく、死にたいと思っている人あるあるを言いたい。「夜眠れない。」これしかない。僕達は夜、眠れなくなる。色々考えすぎてしまって、日が昇るまで起きてしまう。次の日睡眠不足で一日を過ごす。睡眠時間の足りない脳みそでは多くを考えられず、仕事で失敗する。そんな脳みそで考えるから「俺は何もできない」から「死にたい」に繋がる。こんなぷよぷよ名人並みの連鎖が起きていることは僕達も重々承知だ。それでも結局眠れないのだ。

 そして先日の話、僕はいつものように枕元反省会をしていると、悪魔が降りてきた。僕の六畳一間のアパートにだ。
 悪魔と聞いて皆んなはどんな悪魔を想像するだろう。各々あると思うが、フォルムとしてはデスノートのリュークみたいな感じだった。翼が生えていて黒くて、所謂「悪魔」の見た目をしていた。

 その悪魔は僕に語りかける。「お前、死にたいんだろ。」僕の頭の中にギャルゲーよろしくセリフが出てくる。
①「分かったような口聞くな」
②「お前誰だよ」
③「はい、死にたいです。」
僕は迷わず③を選択した。今まで他人(人と言っていいかは別として)に言われたことがないセリフだったからだ。そのままその悪魔は続ける。
 「俺が殺してやるよ。」僕は嬉しかった。これも言われたことがないセリフだし、自殺をする勇気もない僕にとっては願ってもない幸運だからだ。

 「ただし、条件がある。」なんだ、新手の詐欺か。悪魔役の人探すの大変だっただろうな。これでウン100万とか請求されるオチか。しょうもないなぁ。とか考えていると悪魔は少し嬉しそうなトーンで続けた。
 
 「お前が30歳までに売れなかったら俺が殺してやる。」

 僕は多分人生で1番頭が回転していたと思う。30歳までか、長いな。ってかこの人はなんで僕が芸人を目指しているのを知っているのだろう。あ、悪魔か。そんなノイズにも近い思考が頭を支配する中僕の口から出てきた言葉は「ありがとうございます。」だった。

 売れなかったらどっちにしろ30歳で死ぬのか。じゃあ今死にたいなんて思い悩む必要もないのか。重荷が取れたような気がした。

 そこから僕は「死にたい」と考えそうになったら自分の中で「売れたい」に変換している。売れなかったら結局後10年で死ぬのだから、だったら売れた方がいいからだ。そこから悩まなくなったが、この思考は「生きたい」ってことなのかな。まぁどうでもいいや。

 そういえばその悪魔は去り際にカーペットの上のホコリを少しだけ掃除してくれた。彼らの世界のマナーなのだろうか。

 悪魔が去る前、こんなものを書かされた。「一応形式上書類だけ」と言われたからやはり詐欺なのかもしれない。

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