トーク一本刀

 恋愛の話をしたい。恋愛の話をしたいんだよ俺は!
 男にはそれぞれに適したアプローチがある。ベンザブロックくらいそれぞれに適したアプローチがある。

 顔がいい奴はそれを上手く使ってアプローチをするだろう。いちいち目を合わせるようにしたり、無理に近づいたりするのだろう。それを多分嫌悪感なくできるのだろう。顔のいい奴は。言うなればステルス兵だ。自分がどんなに近づいても相手に嫌悪感を抱かせない。
 車を持っている奴はどうだろう。助手席にうまく乗せて夜景やらアウトレットとか行くのだろう。機動力、素早さだけ突出している隠密軌道タイプだ。現代の忍者とでも言えるだろう。
 他にも何故かモテるオーラを纏う特殊能力タイプ、金にものを言わせるパワータイプ。皆それぞれの武器を怒んなく発揮して女の子にアプローチするだろう。

 また、普通ならこれらを複合させてアプローチをかける。優しさの剣、共感力の鎧、誠実さの盾などを装備して討伐に臨むのだろう。さながらモンスターハンターのように「この女の子にはツンデレの弓が効果的だ」とかあるのだろう。それを上手く武器屋で錬成して討伐するのだろう。普通の男は。

 だが僕は違う。どんな鎧も盾も持ち合わせていない。初期スキンの白ブリーフに坊主という出立ちだ。とは言え素手で挑むほど無謀ではない。最強の武器を一つだけ装備してる。それはトーク力の刀だ。

 1週間もあれば2時間のトークライブができるほどのトーク力の刀。僕の装備はそれだけだ。センスの良い店を知っている訳でもなく、高級外車を乗り回すような財力もない。なんの鎧も身につけず、トーク力の刀という一太刀の最強の刀のみを装備している。白ブリーフしか身につけていないが背中には禍々しい紫色のオーラを放つトーク力の刀を装備している。

 だがここで問題なのはこれで幾千もの女の子を討伐してきた訳ではないということだ。僕のこの刀はどうやら討伐に向かないらしい。毎回毎回捕獲。女友達で終わる。もちろん討伐しようと思ってクエストに臨んでいる。このトーク力の刀でどんなに討伐の一歩手前(僕がそう思っているだけ)まで行っても結局は中途半端な優しさの剣を装備しているやつに横取りされてしまう。

 ただ、ここまでトーク力の刀を育ててしまった手前、今更装備を変更することもできない。また今日もトーク力の刀を研いで討伐クエストに向かい、捕獲で終わる。

 

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