生きる意味を教えてくれ

 不穏なタイトル、恥ずかしい。
 かつて見てた夢を忘れて売れる音楽を作り続けているロックバンドの次くらいに恥ずかしい。それでも今心からこう思うのだ。誰か生きる意味を教えられるものなら教えてくれ。

 まず大前提としてこれは自殺の前の遺書ではない。お風呂場やビルの屋上で書いているわけではない。ただの日常の中のバイト終わりの終電で書いている。バイト終わりの終電の4号車に座りながら、本気で生きる意味が分からないのだ。

 意味っていうか、目的っていうか。何のためにみんな生きているのだろう。
 生きているのが楽しそうな友達に聞いてみた。そいつは「愛のため!」と断言していた。うーん、聞く人を間違えた。そいつは愛がなくなったら死ぬのだろうか。死なないだろうな。
 達観してる風の友達に聞いてみた。そいつは「そんなもんみんな分からないよ。ただ、死ねない理由があるんじゃない?」ってゆっくりタバコを吸いながら言っていた。薄っぺらい。その死ねない理由について聞くと黙っていたから多分誰かの受け売りなんだろうな。

 最初にも言ったが、別に僕は死にたいわけではない。ただ、生きていく意味や理由が分からないだけなんだ。
 っていうか、お笑いの養成所に通っていて芸人の卵みたいな生活をしつつ、実際はフリーターでしかない自分は社会に対して利益を与えてないから資本主義的に考えても僕は生きている意味がないと思う。

 でも養成所の同期の中にはバイトをせず実家暮らしの奴もいる。そういう彼らは俺ほど悩まず、自分がこの世界に生きていて当然の顔で街を闊歩してる。別にほとんどの人間が生きている意味はないのかもしれないし、そもそも生きることに意味や理由なんていらないのかもしれない。

 そんなことを考えていたら煮詰まったからベランダでタバコを吸ってみた。そしたら灰皿の下にたまたま置いてあった雑巾が連日の雨に濡れて、雑巾から芽が出てた。雑巾からよく分からない植物が生えてた。

 さすがにこいつよりは生きてる意味あるわ!
 人の灰皿の下に敷いてある雑巾に生えてきて、誰を感動させるでもなく、食物連鎖のピラミッドに入るでもなくただ生えてる植物、さすがにこいつよりは生きてる意味あるわ!って叫んでしまった。そこで気づいた。僕みたいな人間は、生きてる意味がないと思っている人に、「こいつよりは生きてる意味ある」って思わせるために生きてるんだ。

 この話を仲の良い後輩にしたら、笑ってくれた。結局人を笑わせるのが好きだし、人を笑わせるために生きていることに気が付いた。最終的にこの結論になってしまう、恥ずかしい。売れるための音楽を作り続けているバンドより明らかに恥ずかしい。

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