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東北の多拠点生活で学ぶ、住まいと暮らしの違い

まもなく、東日本大震災から10年が経つ。この10年を東北の方々はどういう気持ちで迎えるのだろうか?

東京に住んでいる身としては、今でもあの日の混乱は忘れない。福島をはじめとし、東北にリスクを背負わせて、何も気付かずにエネルギーも食も依存していたことを恥ずかしく、悲しい気持ちで一杯だった。

そして多くの友人がボランティアやNPO活動で、復興支援に注力する中、会社員としてほとんど何も現地で貢献できない自分を情けなく思っていた。

東北の人たちは、現地に来てくれるだけでも嬉しいし、こうして東北の物を食べて、買ってくれるだけで支援になると言ってくれたけど、活動の拠点を東京から東北に移し、尽力する仲間たちを見ていると、IT企業で自分は何をやってるのだろうかと悶々としていた。

そんなとき、学生時代からの友人でもあり、東北に軸足を移した尊敬する藤沢烈さん(一般社団法人RCF代表理事)に言われた言葉に救われた。

「この震災の被害は5年、10年で何とかなるものではない。今、ボランティアや復興支援に携わる役割を持つ人たちと、5年後、10年後に復興ではなく、新たな産業やイノベーションを起こす人たちの役割は違う。今、焦る必要はない。そしていつか、東北に関わって欲しい。」

そして、ここ数年は東北へ行く機会が増えてきた。

復興から成長へ

復興支援は微力でも、事業を生み出したり、サポートすることならできると信じ、シェアリングエコノミー協会の活動を東北少しずつやってきた。そして、東北で活躍する起業家や役所の方々と会う機会が増えた。何度も会ううちに、彼ら彼女らが好きになり、多くの刺激を頂き、一緒に仕事をする機会も少しずつ増えてきた。

20-40代で活躍する彼らは、東北の復興の先を見据えて、マイナスからのスタートを元に戻すのではなく、魅力ある街にするために、思い描いた未来を着実に形にしていっている。

そんな起業家の一人、南相馬を拠点に活躍する小高ワーカーズベースの和田さんは、大企業の依存せず、自立した地域をつくらないといけないという想いから、「100の課題から100の事業を生み出す」ことをミッションに、自らハンドメイドガラス事業を起こし、職人を育成・雇用し、宿泊施設とコワーキングスペースを併設した「小高パイオニアヴィレッジ」をオープン。さらに、起業家育成コミュニティとしてNext Commons Lab南相馬の運営など、多岐に渡って活躍している。

関係人口や多拠点居住の人たちにも来てもらいたいと、ADDressも小高パイオニアビレッジと提携し、ADDress南相馬は人気の物件となっている。

東北で多拠点居住を

2019年、当社はJR東日本グループと資本業務提携を結び、多拠点居住の場所として、JR東日本グループの宿泊施設の花巻、釜石、盛岡、大湊、角館、高畠の一室を利用できるようになっている。さらに、いわき、石巻、弘前にも提携施設や自社管理物件が利用でき、昨年JR常磐線も全線開通し、東北ホッピングを楽しめるようになってきた。

今後、福島県は、湯本や会津地域に、秋田県は五城目町や由利本荘も準備中。各地域とも非常にユニークな起業家たちが活躍していて、行くたびに癒しと元気を頂ける。

先日、遠野に行ったとき、とある方がこんなことを言っていた。

「家庭」という文字は、「庭のある家」と書く。東京には庭のある家が少なく、建物を上へ上と作っていく。庭や縁側があると、ふらっとご近所さんがやってきて、今日は天気が良いなどと言って、お茶を飲んでいく。東京のマンションでふらっと、天気が良いですねと家へ入ったら、犯罪者扱いだ。遠野にはたくさんの自然や食や家庭があるんだよ。

あぁ、僕らは東京から地方へ家庭を探しに行っていたんだと気づかせていただいた。

遠野には、遠野産ホップでつくるブルワリーパブ「遠野醸造」や、どぶろくにこだわった素敵なオーベルジュ「とおの屋 要」をはじめ、事業家たちが活躍している。遠野でもADDressの物件をつくりたく、現在準備を進めている。

東北の方々は、ADDressの利用者が来ることをとても楽しみにされている。一時は人口がゼロになった南相馬をはじめ、起業家たちが活躍する地域は、人口が増えている。そして住む家が足りないという状況になっているエリアもある。観光客が増えることも大事だけど、関係人口や定期的にその地域に足を運び、都市の情報や地域で仕事をしてくれる方々が来てくれるのが嬉しいと言う。そんな東北を中心に、多拠点生活をする人が増えて欲しい。今年は浪江や楢葉にもADDressの家をつくりたいな。

住まいと暮らしの違い

会津で活躍されている方々が、ADDressの誘致をサポートしてくれている。そしてこんなことを言っていた。

東京には住まいはあるが、暮らしがない。お金があればモノも食べ物も何でも手に入れられるが、家で寝て食べて、会社で仕事をする住まいでしかない。ここ会津では、映画館や商業施設もほとんどないけど、美味しい食事も美味しいお酒も、綺麗な水や空気もたくさんある。自分たちでつくり、壊れたら直す。そんな暮らしがある。ADDressの生活は、観光や宿泊ではなく、地域の人との交流を通じた暮らしができることが魅力だと思う。

そして地域にとってもADDressの会員さんが来ることはとても大切なことなのです。地域や家は、人間の血液と同じで止まっていたら死んでしまう。ADDressを通じて暮らす方々や、情報、お金が動くことで、地域は活性化していくのです。

ここでもとても大切なことを教えて頂いた。僕らは東京でただ住んでいただけで、暮らしていなかったのだと。地方に若者も年配の方々へ行くのは、観光ではなく、暮らしをもとめていたんだと。ビジネススキルを付けることも大切だけど、人間としての暮らしのスキルを付けることは、これからの時代もっと大切になってくると思う。

災害やコロナで失われたモノも多いけど、気づかされたことや、未来につながる活動がいくつも生まれているのは希望でしかない。震災から10年。さらに多拠点生活や、移住者を増やし、物件も増やしていきたい。

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