【森の哲学者】油汚れマジックリンの威力の巻 #たそがれ木林春夫
【油汚れを掃除するの巻】
ある日のこと。
仕事から帰宅した木林春夫さんは、郵便ポストにチラシが入っているのを発見しました。
ポスティングというやつです。
木林春夫さんはポスティングに対し、好きでも嫌いでもありませんでした。
中には迷惑なチラシも含まれていましたが、近所で建設中のマンション情報など、おもしろいものもあったからです。
といっても、マンションを買おうとしているのではありません。
残念ながら、そんなお金など、木林春夫さんのお財布をひっくり返しても出てきません。
そうではなく、近くを通りかかった際に、この間のチラシのやつだな、と間取りを想像して楽しむことができましたからです。
とにかくこの日も、見るともなしにチラシをパラパラめくっていたところ、ガス会社のものを発見しました。
4年に1回行われる、ガス設備の定期点検の案内。
そういえば何年か前にも、ガス会社の人がマンションに来て、給湯器やガス管を調べていた覚えがあります。
木林春夫さんの記憶では、無料だったはず。
チラシをよく見てみます。
やはり、今回も無料でした。
うれしくなった木林春夫さんは、部屋へ入って、ガス会社の人が点検しそうなところを、あちこち見て回りました。
そして、気づいたのです。
ガスコンロの周りの油汚れに。
ベタベタでした。
このひどい有様を、ガス会社の人に見られるのは恥ずかしすぎる!
夜12時ですが、思い立ったが吉日。
さっそく掃除に取りかかりました。
ガスコンロ周りをキレイするついでに、換気扇も掃除することに。
なぜなら、同じく油でベタベタだったから。
換気扇の羽根にマジックリンを吹きかけ、汚れを浮かせるため、2、3分待機。
待っている間に、キッチンのほかの場所も気になり始めました。
例えば、流しや蛇口。
水アカが付いていました。
ここも掃除しなければ。
水道の蛇口を洗っていると、部屋全体が気になり始めました。
隅に、ほこりがたまっているのが見えます。
そのうち、マンション全体の汚れが気になり始めた木林春夫さん。
やがて、こんなことを思うようになりました。
宇宙へ飛び出し、月の砂ぼこりをキレイにしたい……
1969年7月20日、アームストロング船長が、人類史上はじめて月面に降り立ったとき、砂ぼこりがもうもうと舞い上がっていた記憶があるのです。
もちろん、リアルタイムではなく、過去の映像を見たわけですが。
あそこも掃除せねばなるまい、木林春夫さんは考えました。
ただ、月へ行く方法がありません。
宇宙飛行士になることも考えましたが、木林春夫さんは暑いのが大の苦手。
ネットの写真でよく見る、あの分厚い宇宙服がどうも好きになれないのです。
これは縁がなかったのだ、そう思って月の清掃はあきらめました。
でも、木林春夫さんの心は晴れ晴れとしていました。
なぜなら、もし人類が月へ移住することになったら、まず第一にすべきことは砂ぼこりの掃除だと、わかったからでした。
教訓👉このスケールの大きさは、木林春夫さんならではですね。 .
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