故郷に帰ったら適度に魔改造されていた話
今日は私用のついでに故郷を訪れてみた。ここでいう故郷は生まれ育った土地の事で、僕はそこで当たり前のように誕生し、親が離婚して現住所に引っ越すまでずっと住んでいた。期間で言うと10年位だろうか。
因みに、中学生の僕が「離婚なんて割と何処でも起こりうることで、基本的にどのご家庭にも父親は存在しないもの」だと思いこんでいたせいで人生が狂った話は、また今度。
兎に角、今日はそんな故郷に再び舞い戻った。
最初はとりあえず通っていた幼稚園を訪れてみた。もちろん誰も居ないし、外からしか見れないけど、イベントを告知する掲示板や、教室、生えてる植物、その全てに見覚えがあるもんだから、がらにもなく郷愁に耽っていた。
…という訳でもなく、一番に思ったのは「幼稚園小さ過ぎね?」である。
おかしい、東京ドーム位あったはず、あったはずなんだよ!なんだあの体たらくは!小さすぎる!それでガキどもが満足に遊べると思ってんのか!
けれど何度思い出そうとしても、皆と楽しく戦隊ごっこだの、グラウンドでサッカーだの、あとはプールの周りを誰かと一緒に走ってバチコリ怒られている記憶しか出てこない。
窮屈でイライラしていた覚えなんて一つもないのだ。
不思議なもんだと思いながらその場を後にした。
その後は通っていた小学校に向かい、引っ越し前に住んでいた家に訪れた。
小学校もまぁ、懐かしいと感じた。
小学校といえば給食だ。全然おいしくなかった記憶がある。
そのうえ当時は軽度の牛乳アレルギー(今は何故か治っている)だったので飲んだ後にちょっとかぶれていた事を思い出した。
外から小学校を覗いていると、中庭を見つけた。そこには小さな池もある。
そういえばあの頃の僕はそこでザリガニを探していたな、生臭い匂いをものともせずにキスする五秒前位眼前に持ってきていたあの頃が懐かしい。
約十年前のさばみそ君、聞こえますか?約十年後の僕は殺虫剤で殺したゴキブリ相手に30分格闘しながらトイレに流すほど臆病になりました。
後は何故か体育館が新しく改装されていた。
その後、昔住んでいた家の付近まで訪れた。それはもう酷かった。
何が酷かったっていうと当時遊んでいた公園の一部が無くなって、そこに家が建っていた。
金網に囲われた空き地みたいなスペースが取り払われ、そこは住宅街になっていた。まだ開発段階らしく、工事中な家とすでに人が住んでいる家もある。
そこの近所の定食屋は何度も店を変えて今は中華料理屋だし、スーパーも内装が丸々変化して別物だし、後何故か当時の家の近くにケバブ屋ができていた。
本当に意味わかんない。こんなの俺の知っている故郷じゃない。
でも正直変化前がどんなだったかを正確に答えられるのかといわれると、全然そんなことなくて、結局はその程度なわけだから不平不満を口にする義理は無いのだけれど、こうして思い出が一つ一つ、確かに消えて行くのを実感するのは何とも耐えられない。
そして最後に、当時仲良かった子の家に向かった。幸い何も変わっていなかった。それが唯一の救いだろう。けれどもう二度と会う事なんてないだろうし、会ったとしても何もやることなんてない。
それを分かっているからこそ、変わってない事に心から安堵している。
どうかあの子も、僕を覚えていて欲しい。
そして我らが故郷の変わり様に疑問を覚えていて欲しい。
そう願い、僕は静かに適度に魔改造された故郷を後にした。
終わり
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