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シノイキスモス短編小説集

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2020年7月の記事一覧

短編小説|死人に口なし

東京は住みやすい街で、仕事をするには最適だった。
地下鉄、スターバックス、やけに広い公園。
でも、2010年代の半ば、妻と話し合って引っ越すことにしたんだ。

大きなスーツケースに全財産を詰め込んで、バスに乗って南へ向かった。
南へ向かうにつれて、開け放たれた窓からハエが飛び込んでくるようになって、車内が騒がしくなった。
死の香りが強くなった。立ち込めていた。死者の世界だ。

椰子の木が揺れていた

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