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タイの日本料理店エピローグ

出資金と膨大な時間を失って終わった「日本料理店経営」の後日譚です。

お店のタイ人シェフが「店を辞めて日本に出稼ぎに行く」のが、事業売却の理由でしたが、結局、彼に日本の就労ビザはおりませんでした。

今は、同じナイトマーケットの片隅で、たこ焼きを焼いています。

「タマサート大学の先輩が日本の会社でポジションを用意してくれた」という話でしたが、そういう『いい話』は、むしろ立ち消えになる方が普通です。

彼は自分の年齢を気にしていたので、あせっていたのかもしれませんし、借金が意外と多く、冷静ではなかったのかもしれません。

お店は、私の妻が日本語の家庭教師をしている、地元の偉い公務員に買ってもらいました。

事業譲渡後、お店が営業許可をとっていなかったことが分かったり、シェフが業務の引継ぎをあまり熱心に行わなかったりで、一時は私と譲渡先の資産家との関係も悪化しました。

鷹揚な中華系タイ人なので、結局は許してくれたのですが、もし日本人に事業譲渡していたら、責任追及は当然日本人の私の方に来るので、出資金を失ったばかりか損害賠償責任まで負わされて、大変なことになっていたところです。

お店の隣りの店は『アヒルご飯屋』でした。

店主とも仲が良かったのですが、最近夜逃げしました。

そのアヒルご飯屋の店舗を併合して、現在、日本料理店は2倍の店舗面積となっています。

「奥さんは給料ゼロの従業員」とは、知り合いのベンチャーキャピタリストの言です。

有名人がツイッターで公言すれば炎上しそうな発言ですが、一面の真理だと思います。

奥さんが仕事を手伝ってくれないと、ファミリービジネスは一気に形勢が傾きます。

日本料理店もアヒルご飯屋も、奥さんがほとんどお店を手伝ってくれなかったのです。

現在、他人の手に渡った日本料理店は、お金をかけて内装を充実させています。

ファミリービジネスは、お店で利益が出ていても、家計で赤になると、立ち行かなくなります。

逆もまた真なりで、お店の内装にお金をかけすぎても、資産家の場合は、月々のキャッシュフローさえプラスになれば、内装にかけたお金は「趣味」として割り切ることができます。

売上の浮き沈みが激しいファミリービジネスでは、よほど収入が多いか、貯えができるまでは、子どもを学費の高い学校に入れてはいけません。

売上減に見舞われた際、自分の生活レベルを下げることは容易でも、子どもを急に転校させるわけにはいかないからです。

ファミリービジネスのむずかしさを感じました。

日本料理店は、近々、店名を改めるそうです。


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