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歯がしみる or 歯にしみる?

 先日、『言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学』(以下『言語学の教室』)を読み、その中でメトニミーの例にとても興味深いものが載っていたので、少し考えたいと思う。僕は二年ほど前に『認知言語学の大冒険』を読んで認知言語学について興味を持ち始め、以降たまにこうして、関連する本を読むが、今度の本はとても分かりやすいので、是非一読することをお勧めする。

メトニミーとは

 メトニミーとは、ある対象を指して使われる単語が、それと近い関係にあるものを指すのに使われること。例えば、なべ料理がある。「なべ食べるのが好き。」という発話があれば、これは、〈道具のなべを食べるのが好き〉という意味を意図しての発話ではない。〈なべで作られた料理を食べるのが好き〉ということを意味している。この場合、「なべ料理」と「(調理道具の)なべ」は近い関係にあるので、メトニミーが使われている。

「歯にしみる」と「歯がしみる」

  『言語学の教室』の中で面白い例があった。「歯にしみる」と「歯がしみる」である。「しみる」という動詞の意味的に、「歯がしみる」という言い方は変であるが、今日ではよく用いられる。
 「歯にしみて痛い」のときは、何かが歯にしみているというイメージがあるが、「歯がしみて痛い」のときは、何かが歯にしみているイメージがなく、痛みがあるところにフォーカスされているように感じるがどうだろうか。
 「冷たい水を飲んだら歯にしみて痛い」と「冷たい水を飲んだら歯がしみて痛い」だと、圧倒的に前者が正しいように感じる。

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