同期のカターレ #11(最終回) 「逆転昇格はならず 描きたかった結末は来季へ」

この「同期のカターレ」を書き始めようと思ったのは、2009年から1年ずつ描いて行くという「同期のサクラ」というドラマの設定を見た時。
そう思いながら、もたもたしていたが、実際に書き始めたのは11/10の長野戦の前だった。

その時点でのJ3の順位は、残り5節で
1位 北九州 勝点58
2位 藤枝  勝点54
3位 群馬  勝点53
4位 熊本  勝点50
5位 富山  勝点49

一方、J2下位の順位は、残り3節で
19位 町田  勝点37
20位 鹿児島 勝点37
21位 栃木  勝点33
22位 岐阜  勝点30

自分が描きたかったのはここから最終的に、
カターレ富山は勝点5差をひっくり返してJ2昇格を、
栃木SCは勝点4差をひっくり返してJ2残留を、
成し遂げ、来年は6年ぶりに同期3チームが「一緒にJ2」という状況を夢見て書き始めた。

岡山はその時点で6位の水戸と同じ勝ち点の7位であり、岡山がJ1に行ってしまうと可能性もないではなかったが、まあ、それはそれだ。

そして最終的に自分が描きたかった結末は描けなかったが、残り試合が少なく条件が厳しかった栃木の方が、目標を達成した形になった。
これは本当に見事だった。
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2019年。
安達監督が最初からチームを作ることができる初めての年ということになる。
選手は、群馬から富山県出身のFW高橋駿太、浦和からJ1の実績十分のGK榎本哲也、盛岡からMF白石、北九州からMF花井、長崎からMF碓井、秋田からFW田中の即戦力が加入した。

開幕のアウェイ相模原戦はスコアレスドロー、チャンスがなかったわけではなかったがうまく決められず、逆にミスからピンチを招いたが、それは何とかしのいで0−0で終了した。

2戦目はホーム開幕戦となった福島戦。
前半からチャンスを作るも決定的なチャンスを決められず、逆に前半終了間際に得点を許す。
しかし後半途中交代で入った田中が早速得点を決めて追いつく。
これで流れをつかむかに思えたが、ここから2失点を許し、ホームで大事な試合を落とした。

続く試合はホームの群馬戦。
これは去年までの古巣の群馬相手に、移籍加入の高橋が前半に移籍後初ゴールを決めて1−0とリード。
このまま守りきり、ホーム初勝利となった。

その後は鳥取、北九州と引き分けた後、アウェイの岩手戦を佐々木陽次のゴールなどで勝利、しかしその後のC大阪U23、沼津と引き分けで8節終了時点では1敗しかしていないのに8位であった。
徐々にボールを支配する試合は増えてきていたが、いかんせん引き分けが多い。
8試合中5試合が引き分けだった。

続いて迎えたG大阪U23戦は才藤と佐々木陽次の2ゴールで勝利、続く長野戦は田中の2ゴールでアウェイで長野に勝利、この連勝で順位は一気に首位まで勝点3差の4位に上がった。

6月を迎え、次の試合はホームに秋田を迎えた。
好調の田中が契約上の関係で出られない試合。
代わりには今季2度目のスタメンとなった苔口が入り、また連勝中にスタメンを外れていた今瀬もスタメンに復帰した。
しかし、この試合は沼津時代から苦手としているFW中村に2点を決められて敗戦。
この試合では代健司が欠場したが、連勝中はスタメンだったので、このあたりから代健司が出場すれば負けないのではというのを感じるようになった。
実際、次の藤枝戦は代がスタメンに戻り、高橋駿太の2ゴールで勝利している。

その次は、今年を振り返った時にポイントとなったホーム2連戦。
ここで八戸と讃岐と対戦し、今季初の連敗をする。
ちなみに、この2試合に代健司は出場していない。
この頃になるとゲームは支配するが、得点が決まらないというのが定番になってきた。
スコアは2試合とも1−2。
八戸戦のシュート数は14本で相手が12本、讃岐戦のシュート数は17本で相手が5本だった。

続くFC東京U23戦も1点しか奪えず引き分け。シュート数は22対4。
次の熊本戦は先制したが、結局逆転負け。
この試合に至ってはCBだった代健司を交代させたらそこから逆転された。
シュート数は15対7。
とにかくゲームは支配しているのだが勝てない。
この4試合で勝点わずか1に終わったのが後々響いた。

続くホームYS横浜戦は才藤の2ゴールで2−0の勝利。
無失点勝利は14試合ぶりだった。
そしてここから前半の山場と見られた北九州、藤枝の上位との連戦。
北九州とは1−1で引き分けたものの、藤枝にホームで0−1で敗れた。
元富山の秋本に得点を決められた試合は、昇格を語る資格がないと思うのに十分だった。
この時点で、首位藤枝とは勝点12差、2位熊本とは勝点9差の10位となった。

そのような状態で迎えた中断前の秋田戦。
新潟から期限付き移籍で加入した平松がスタメンに入った。
この試合は先制されて敗戦濃厚だったが、花井が途中交代で入ってから盛り返し、終了間際に脇本のゴールで同点に追いついて勝点を拾った。
それでも残り14節で順位は10位。
2位群馬との勝点差は9だった。

ここでリーグ戦は夏の中断期間に入った。
だが、カターレは天皇杯を勝ち進んでいたため、8月14日、天皇杯3回戦でベガルタ仙台をホームに迎えた。
試合は、善戦したが、これまでどおりチャンスは作るものの得点は奪えず、逆に相手の一撃で0−1で敗戦。
そして、ここでこの年の転機となるある事件が起きる。


天皇杯での当日券不足問題。
主催である県サッカー協会の対応がひどく、これが大きな問題になり、yahooニュースのトップに載ったり、新聞でも取り上げられた。
そんなことがあってから、カターレ富山はチームとして、次の対応をとった。


天皇杯で入れなかった人を無料招待するというもの。
元々この日は富山市民を無料招待するという試合であったが、この姿勢が素晴らしいではないか。
そして、リーグ戦再開は夏の終わりの8月31日、相手はSC相模原だった。
FW大谷がプロ入りして初めてスタメンに入った。

この試合も序盤からチャンスあったが得点は奪えず、そうしているうちに相模原に先制される。
前半は何だか嫌な雰囲気になりかけて、無駄なブーイングも多く、自分は前半でゴール裏で声を出すのをやめ、後半からは座って見ていた。
後半、前半戦で出番を失っていた高橋駿太が途中交代で入り、そこから流れを引き寄せる。
まずは白石のカターレでの初ゴールで追いつく。
さらに高橋のアシストから大谷がプロ初ゴールを決めて見事な逆転勝利。
後半戦の初戦で、期待の選手が得点を奪って勝ったのは大きく、今後に期待を抱かせるものだった。

次の試合はアウェイ讃岐戦。
ホームでは痛い敗戦を喫した相手だった。
この試合は序盤は押されていたが、大谷の突破から平松のダイビングヘッドが決まり、先制。
前の試合でゴールを奪った大谷は自信がついたのか素晴らしいプレーぶりだった。

後半もうまく試合を運んでいたが、脇本がボール処理を誤り相手にボールを奪われ、その選手をペナルティエリアで後ろから倒してしまう。
下された判定はPKで脇本は退場に。
しかしこのPKは相手が外してくれて助かった。
その後一人少ないながらも耐えて、逆に平松が今日2点目を決める。
試合はこのまま逃げ切り、苦しい試合をものにして、連勝を飾った。

続くホームでのグルージャ戦。
この試合は攻撃が爆発した。
まずは前半に花井がコーナーキックを直接決めて、先制。
花井はこれがカターレでの初ゴールになった。
続く2点目は花井がほぼ最終ラインからロングパス。
これを大谷が見事なトラップからゴールを決めた。

後半には柳下がクロスと見せてそのままシュートを決めて3点目。
4点目はグルージャキラーの佐々木陽次が決めた。
さらに大谷が今日2点目を決めて、スコアは5−0で勝利した。
このインパクトは大きかった。

次のホーム鳥取戦もゴールラッシュ。
まずは、前半のうちに白石、大谷が決める。
後半には途中交代で入った高橋駿太、そして大谷の2点目、さらに平松も決めた。
平松の得点は、約1年ぶりに復帰した椎名が得点に絡んだものだった。
2試合連続の5−0での勝利。
J加入後チーム初の4連勝で、チームは波に乗っていた。

次のG大阪U23戦は先制される苦しい展開になったが、平松、花井、平松のゴールで初の5連勝。
この流れで上位の熊本戦に向かった。

迎えたホームの熊本戦では、後半大谷のゴールで先制したが、その後PKを許してしまう。
結局それを決められて試合は1−1の引き分け。
熊本との勝点4差は詰められず。
続くC大阪U23戦は平松のPKで先制後、佐々木一輝と大谷のゴールで3−0の勝利。
熊本が引き分けたため、熊本との勝点差は2、2位藤枝との勝点差は5になった。

続く群馬戦、勝って差を詰めたいところだったが、相手も必死で結局スコアレスドローに。
次の福島戦は高橋駿太のボール奪取から花井が決めて先制。
その後追いつかれるも、前半のうちにサインプレーで大谷が決めて勝ち越し、そのまま逃げ切った。
この時点で2位との勝点差は5、残り試合は5。

続いて迎えたのは長野だった。
10月の水害で大きな被害を受けた長野。
試合はカターレが圧倒的に支配していたが、前半に思わぬオウンゴールで先制を許す。
相手GKの好守もあり、苦しい展開になったが、後半に花井のバースデーゴールで追いつく。
さらに攻めてはいたが、一瞬の隙を突かれて失点を許してしまう。
シュート数は17対4で圧倒したが、得点は1−2。
リーグ戦再開後、初めての敗戦となってしまった。
これで2位との残り試合4試合で勝点差は8に開いてしまった。

続くアウェイの八戸戦も流れがうまくかみ合わず2−0で敗戦。
これで藤枝が勝利すれば昇格の望みが消えてしまうところだったが、藤枝もお付き合いで負けてくれたため、辛うじて可能性は残った。

次のYS横浜戦はアウェイで前半の早い時間帯に2点を先制し、0−2の勝利。
だが、同時刻に開催されていた藤枝が勝利したため、昇格の可能性はなくなった。

次の長野でのホーム開催試合、FC東京U23戦、そして最終戦の沼津と苦手な相手との試合も勝って、最終的には3連勝で、熊本を抜いてシーズンは4位で終了。
この順位はJ3に降格してからでは最高の順位だった。

さて、栃木は最初に書いた時点での順位は残り3節で20位鹿児島とは勝点4差。
40節は上位の大宮と引き分け。41節は長崎に勝利したが、鹿児島も勝利し、勝点3差のままで最終説を迎えた。19位の町田とも勝点は3差で、栃木は勝った場合のみ残留の可能性が残るという状況で最終戦を迎えた。


シーズン通して得点力不足に泣き、42試合で33得点しか奪えない得点力不足は深刻だったが、最終戦も相手に得点を許さず、最後のアウェイ2試合をいずれも0-1で勝利した。
それでも鹿児島と町田がいずれも勝点を奪っていたら降格だったが、鹿児島が敗れたため、奇跡的に残留を決めた。

岡山は38節時点では6位にいたが、そこから2分2敗で結局最終順位は9位となった。
不思議なもので岡山と栃木は38節で対戦し、岡山が勝利。
ただこの勝利が岡山にとっては今年最後の勝利となり、その後は失速してJ1昇格プレーオフへの進出を逃した。
一方の栃木はこの負けが今年最後の負けとなり、それ以降は3勝1分で残留を果たしたことになった。
鹿児島とは39節を迎える時点では勝点6差があったのだが、それを残り4節でひっくり返した。
鹿児島も最後の4試合は1勝1分2敗で下位チームとしてはそんなに悪くはなかったが、栃木の成績が見事だった。

結局、来季を一緒にJ2で迎えるという奇跡は起きなかった。
カターレ富山は、シーズン終了後、1年を通して出場試合にはチームの好成績を残した代健司、シーズン序盤はレギュラーだった才藤、谷奥、太田を契約満了とした。
また、チームの顔でもあった苔口が現役引退を発表、さらには2016年に大卒で加入してこれからチームの顔として育っていってほしかった脇本が岩手に移籍することが発表された。

来年の顔ぶれがどうなるかは不透明だが、このシリーズはひとまずこれで終わり。
最後は、この駄文を書くきっかけをくれたドラマ「同期のサクラ」のセリフを用いて締めくくります。

「私には夢があります。カターレ富山が、栃木SC、ファジアーノ岡山と一緒にJ2での戦いに復帰することです。」
「私には夢があります。来年こそJ3をぶっちぎりで優勝することです」
「私には夢があります。そのうえで、カターレ富山が今よりももっと多くの富山県民を幸せにするチームになるよう、できる限りの応援を続けることです。」

2019年成績(J2 全22チーム、J3 全18チーム)
富山 4位 16勝10分8敗(J3)
栃木 20位 8勝16分18敗(J2)
岡山 9位 18勝11分13敗(J2)

直接対戦成績
栃木 1分1敗
岡山 1勝1分

得点者
大谷駿斗 9点
平松宗  7点
佐々木陽次 6点

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