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忌むべきは


この世で最も忌むべき災厄は自分自身であるとふと気がついて、また、忘れる。



必死な自己防衛をしながらも、私は人生で一度だって、自分を愛すことを出来た試しがない。
何故かって、私には愛すべき才能も、美貌も、なぁんにもないからだ。
どうしようもなく「空っぽ」な、碌でもない人間だからだ。
何故碌でもないのかと云うと、人を笑うからだ。
他人を「空っぽ」と決めつけ、自分より下等なモノを見る下卑た目で人を笑うからだ。

でも、たまあに、懐かしい空っぽと再会する時。
それが、私が喉から手が出るほど欲していた「きらきら」を纏って、立っていた時。
私が兼ねてより大事に守っていた「ぜんぶ」が、虚ろな「空っぽ」だったことが残酷な程にわかる。
必死に目を逸らしていた「空っぽ」達の正体が、漸く目に映る。
そしてその苦しみはまるで天罰かのように、尽く私の心を引き裂き、身体に裁きの痕を残していくのである。

だから、こんな苦しみを味わうくらいならば初めから人を馬鹿になどするべきでは無いのだ。
そう思う瞬間に私は、何度も気づいて何度も忘れていた、口に出すのも躊躇われる恥ずかしい事実をまた、思い出す。

この世で最も忌むべき災厄は、自分自身であると。

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