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正しく使えば大丈夫なはずのステロイド薬

罪のない可愛い子どもに、もう皮ふのことで泣いて欲しくない。
苦しんで欲しくない。
そのかゆみから解放されて、昼は自分の好きなことに思いきり集中できますように。
そして夜はぐっすり眠れますように。
世の中のママもきっと私と同じ思いだと思います。

このnoteを手に取ってくださり、ありがとうございます。
著者の綾香です。
10歳の息子を育てている至って普通のお母さんです。
今回このnoteを執筆しようと思ったのは、乳児期からアトピー性皮膚炎を患って10年の我が子がどのようにして改善させたかを世に出したかったからです。
そうすることで、今まさに我が子の皮膚炎に悩まされているお母さんお父さんの役に少しでもなれると思ったからです。
私自身これまで医師の指導の元、我が子のスキンケアに取り組んできました。
しかしその努力をして10年、何か改善したかと思い返してみても、寛解増悪を繰り返しトータル的に見れば悪くなっている現実があるだけでした。とにかく我が子の皮膚の改善をひたすら求めてきたのに、なんとも皮肉な話ですよね。
10年間してきたケアと結果を振り返り、このまま同じことを続けたらどうか。
おそらく何も変わらない、もしくは今まで以上に悪化する可能性だって十分にあるのではないか。そのように考え今のままではいけないと、ケアの方法を変えました。
私のしてきたことは、どこにもエビデンスとして載っていないものです。
そのためうちの子に合った方法であっても、世の中全員の子に効果があるかは分かりません。
だからこそこのnoteに記載していることが絶対である!とは思わず、こういう方法もあるんだなと1つの参考にしていただければ幸いです。

ステロイドなんて子どもに使いたくない

アトピー性皮膚炎を知っているのであれば、副腎皮質ステロイドのことも知っているだろう。
それくらいアトピーとステロイドは切っても切れない関係だから。

でも、自分の子どもにステロイドなんて…と思ったことはないだろうか。

私は何度もある。
それは自分の中で
ステロイド=切れ味抜群の薬
ステロイド=副作用が大きい薬
この2つのイメージしかなかったからである。

その2つのイメージが出来上がったのは、15年前。
私が看護学生時代の時だ。
ステロイドの効用、副作用について学んだ時に、「様々な疾患に使える上に効果も高い。けど、恐ろしい副作用もいっぱいあるんだな。諸刃の剣のような薬だ。」と思ったのをまだ覚えている。

この世にそうそう上手い話なんてない。
リターンが大きければリスクも大きくなる。
これはどんなことにも言える訳で、ステロイドにしてもそれは例外ではないと思っていたし、今もそう思っている。

だから乳幼児ですぐにステロイドを処方された時は驚いた。
こんな小さな子に塗ったら、やばいんじゃないのか?と。

何故なら教科書にも色々な副作用が載ってたから。
ムーンフェイスだの、中心性肥満だの、赤ら顔だの、皮膚萎縮だの、易感染性だの…副腎不全に成長障害、糖尿病。
いや、でもそれは内服薬を長期間使ったらの話なのか。
外用剤はそこまで心配しなくても良いのか?

それでも職業病であるのか医師のことは崇拝していたし、先生様々と思うくらい医者を信じきっていたから、私は我が子に処方された薬を使った。
心の声は「嫌だな」であったが。

でも先生は言っていた。
「弱い薬だから大丈夫よ。」

その言葉がステロイド塗布を後押ししたのかもしれない。

我が子のことを真剣に考えるなら

アトピー性皮膚炎のかゆみは、時に夜も眠れないくらいだと言う。
それは想像を絶するかゆさなのではないか。
私自身はアトピーを経験したことがないため、悔しいけれどそのかゆさを想像することしかできない。

我が子を見ていてもひどいかゆさであることはその動作で分かる。

バリバリバリバリ
ボリボリボリボリ
シャカシャカシャカシャカ

一瞬この音は何だ?と音のする方を見てしまうくらい尋常ではない音がする。
その音が想像を絶するかゆみであることを物語っている。

ステロイドを塗ると今までの激しい掻き動作がピタリと止まる。
さっきのアレは何だったの?と思うくらいに。 

狂ったように掻いて掻いてこれでもかと掻きむしる我が子は、こちらも見るのは耐え難かった。
「かいたらダメ!!!」なんて言ってもかゆいのがおさまる訳でもない。
そのまま放置したら、すぐに皮膚は剥けて出血してしまう。
でもその耐え難いかゆみを我慢しなさいなんて、どの口が言えるか。
ステロイドの変わりになるくらいの優秀な薬はあるか。
当時の私にはそれを見つけることが出来なかったし、だからと言って我が子の掻きむしる姿を見続けることも出来なかった。

ステロイドを使うことにやはり抵抗はあったものの、この状況で使ってあげることもせず我が子にひたすら我慢させるのも酷過ぎるのではないかと思った。

止まらない掻痒動作を見続けているうちに、きちんとステロイドを使わない方が我が子にとって可哀想なことのように感じた。
ステロイドなんてと言うのは親のエゴのように感じ、我が子のことを真剣に考えているのであれば、ステロイドをきちんと使うべきだという考え方に変わっていた。

そもそもステロイドとは

ステロイド外用薬(ステロイドがいようやく、topical steroid)は、ステロイド系抗炎症薬の軟膏剤であり、皮膚外用治療で一般的に使われる医薬品である。薬効成分として糖質コルチコイドあるいはその誘導体が使用されている。アメリカ合衆国では7段階、日本では5段階の強さに分類されている。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E5%A4%96%E7%94%A8%E8%96%AC

ステロイドとは元々人間の副腎で作られる副腎皮質ホルモンで、病院に受診し処方されるものは、人工的の合成されたものである。
ステロイド外用剤には強さが5段階に分かれており、上からストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、マイルド、ウィークとなっている。
医師の判断でどれが処方されるかが決まる。
また年齢や体の部位、症状の程度等で出されるステロイドの強さも変わってくる。

指導されたステロイドの使い方

ステロイドは塗布の仕方がとても重要だと以前のかかりつけ医に教わった。
どこで仕入れた知識なのか忘れてしまったが、私自身ステロイドは強い薬(良く効く薬)だから、なるべく薄く塗るものだと思っていた。
だが実際はそうではなく患部を覆うように塗布するのが適量で、ステロイドを塗布した肌にティッシュを載せたらくっつく程度塗布しなさいと指導された。
炎症を起こした肌は目には見えづらいが表面上がガタガタしており、量が少ないと塗布されない部分が出てきてしまい(窪んだ部分に薬が行き渡らない)、きちんと治療が出来ないという理由だった。

私の場合は口頭指示だけでなく、当時はステロイドの適切な塗り方の資料も丁寧にいただけた。
(もう必要ないと思い捨ててしまったため、ここに載せられないのが残念。)

もう少し具体的に言うと、フィンガーチップユニット(FTU)というものを参考にして塗布するのが適切と言われている。
人差し指の先端から第1関節部までの量が、成人の掌2枚分で成人の体表面積の2%に対する量とのこと。

そして塗布の期間も重要と教わった。
私自身、ステロイドを塗布しても肌の炎症が治り綺麗になったのを確認したらすぐに使用を中止していた。
それはステロイドは塗り続けるものではないと思っていたから。
副作用が出さないために、とにかく早く使用をやめることが大切だと思っていた。

しかし実際はそうではなく、塗り始めて数日で発赤やかゆみが治るけど、数日はさらに塗り続けることが大切とのこと。
それは肉眼では治ったように見えるけれど、実際はまだ治っていないから。
その後に少しずつ塗布する頻度を少なくしていき、やめなければならないとのこと。

適切な使用方法を守らずに強いステロイド外用薬を長期間使用し続けると皮膚が薄くなっていきますが、使用を中止すれば元の状態に戻ります。また、皮膚に感染が起こりやすくなることも知られていますが、感染が起きた場合は抗菌薬や抗真菌薬を含む外用薬を塗布することで治療できます。

ステロイド外用薬の強さには段階があり、年齢や塗る場所、皮膚の重症度によって適切なものを選択します。使用方法は様々ですが、一般的に顔など皮膚の薄い所には弱めのステロイドを、手足などには比較的強めのものを使います。

湿疹が残っているうちはステロイドをしっかり使って皮膚をつるつるの状態にします。その後、皮膚が薄くなるという副作用を避けるために、1~2日おきに塗るなど、ステロイドを使用する間隔をあけていきます。最終的にステロイドを使わず保湿剤のみで、きれいな皮膚を維持できることを目指します。

アトピー性皮膚炎の治療 メディカルノート
https://medicalnote.jp/contents/150708-000002-SDJUWM

途中までは上手くいくけれど

これで良くなると思った。
きちんと適切に塗ればきっとこの子の肌は良くなるんだと。
アトピー性皮膚炎は「治る」とはなかなか言えない病気と言われているはずなのに、何故か適切な方法でステロイドを塗れば、きっと近いうちにアトピー性皮膚炎から解放され完治すると思った。

私は先生から渡されたステロイドの塗り方の説明用紙をもとに、我が子に塗布した。
これまでは湿疹が見えなくなるとすぐに使用を中止していたが、そうではなく湿疹がなくなっても赤みが取れても数日程塗り続けた。

そして徐々に徐々にステロイドを塗る日を少なくし、ステロイドを塗布していたところを保湿剤に変えていった。

アトピー性皮膚炎は保湿をすることがとても大切だと指導されていた。
乾燥するとまたかゆみが出て掻いてしまうから、きちんと保湿するように。
また肌を清潔に保つことがとても大切だから、夜だけでなく朝もシャワーを浴びるようにとのことだった。

当時私はシングルマザーでフルタイムで働いていたため、毎日朝から子どものシャワー、全身に薬を塗布する時間が正直大変だった。
そんな時間無いんですけど。とも思ったが、息子の肌を良くしたい。
その一心でやってきた。(しかしやはり出来ない朝もあった)

それから慎重にステロイド塗布量を減らしていき、2日おきに塗布をするようになった。
しかしそのくらいの時期になると、肌の状態が一気に悪くなってしまう状況に悩まされた。

朝のシャワー浴が終わり水分をタオルで拭いたあと、ステロイドを塗っていた部分にヘパリンを丁寧に塗布する。
赤みも湿疹もない綺麗な肌である。
少しずつで良いから、このまま徐々にステロイドを減らしトラブルのない肌になりますように。
そんなふうに願って、仕事に行く。
そして夜帰宅し、我が子の体を見ると湿疹が無数にでき、掻きむしりで壊れた肌が露出されていることに気付く。

「ごめんなさい…」
と、我が子が私に言う。

私は目の前が真っ暗になる。
なんで
どうして
なんで
どうして

あんなに頑張ったのに。
夜も朝も綺麗にして薬なり軟膏なり塗る毎日。
積み上げてきた毎日が一瞬の掻痒動作でおじゃんになる。

恥ずかしい話ではあるが、そうなると我が子に対する怒りを私はおさえることが出来なかった。
「なんでかいたの!?」
「せっかく綺麗にしたのに!!」
「ママの努力をなんで無駄にするの!!」
「あんたは掻くだけだからラクだよね!!」
「泣きたいのはこっちだよ!!」

そんなひどい言葉を何度口にしたか。

泣きたいのは子どもの方である。
本人だって掻きたくて掻いてる訳ではない。
かゆくてかゆくて仕方ないからそうなってしまうだけ。
苦しい辛いを、掻くという動作であらわしているだけ。
それなのに、大好きな母親に非難される子どもは一体どんな気持ちだっただろう。
「ごめんなさい。」と何度も謝らせてしまう自分の不甲斐なさに吐き気がした。
それでも、自分の正当性を主張してばかりだったように思う。
どこまでも依存。
自分はこんなにやっているのにと、上手くいかない理由を我が子に押し付けていた。
自分は悪くないと思いたかったのかもしれない。
こんな病気にさせたのは自分のせいだと思っていても認めたくなかったのかもしれない。
言えることは、兎にも角にも精神的に未熟な親であったということである。

掻き壊したらまた最初から。
毎日ステロイドを塗るというふりだしに戻り、良くなってきたら徐々に減らしていく。
最初は順調なのに、途中で一気に崩れてしまう。

2日おきのステロイド塗布の期間に入ると、爆発的に湿疹が増えてしまった。
そうなる度に私は激怒して息子を責めた。

お母さん何でちゃんとやらないの

アレルギー科の診察室にて。
「何でもっと早く連れて来ないの?」
湿疹だらけ、真っ赤になった息子の肌を見て、医者は冷たく言う。
「すぐに連れてくれば、薬を変えてこんなひどい状態にならずに済んだのに。」
はあ、と深いため息をつかれる。

…そんなことを言われましても。
朝7時には家を出て帰宅するのは19時半です。
連れて行きたくても、あなたの医院はもう閉まっているじゃないですか。
湿疹が悪くなる度に仕事を休めば良いんですか。
その分お給料も減るんですよ。
パートナーが居ればいいですけどね、生憎私はひとり親やってるんですよ。
あなたはそんなことにすら悩んだこともないのかもしれませんが。

そんなことを思っていたが私は言えなかった。
言ったら診療拒否をされたり、テキトーな診療をされてしまうのではないかと怖かったからである。

「お母さん何でちゃんとやらないの?」
「やってますよ。朝晩きちんとシャワーで体を綺麗にして、その後薬を塗って…」
「じゃあ、学校から帰ったらもう一度シャワーの時間を作って。1日3回。あと受診回数をもっと増やしなさい。」

この先生バカなのかなと思った。
私はフルタイムで働いているんです。
そこまで見てあげられません。
学校が終わったらこの子は学童に行き、帰るのは夕方です。
私自身仕事が終わり帰宅したら、夕飯の準備に始まり家事に追われるんです。
何度も何度も風呂になんて入れられません。
息子に学校から帰宅した瞬間まずシャワーを浴びなさいと言っても出来ないのは、私の躾が悪いからですか?
そこまで言うなら、先生私の家に来て息子をお風呂場に連れて行ってくださいよ。
受診回数だって増やしたいけど、仕事をしながらだと本当にキツいんです。
仕事の休みの日は他にも学校の行事だの諸々あるんですよ?
周りに頼れる人も居ないから、リアルに1人でやってるんです。
理想ばっかり言うな。

そう思いながらも、私のケアが出来ていないから我が子の肌は良くならないんだと思った。
結局こうなったのは自分のせい。
良くならないのも自分のせい。
でも、出来るだけのことはやってるんです。

その時は、本当に出来るだけのことはしていると思ってた。

正しく使えば大丈夫なはずのステロイド薬

ステロイド。

正しく適切に使えば怖くない薬。…のはずなのに。

どうしてうちの子は途中で一気に悪くなるのか。

きっと私の使い方が間違っているのだ。
でなければ、こんなことになる訳ない。

でも貰った資料に記載されていることはやっている。

「どうしてこんなふうになるの?」
先生は私が子どものケアを怠っていると思っているのだろう。
でも私が聞きたかった。
どうしてこんなふうになるの?と。

結局改善しない。
先生も理想論ばかり押し付けてくるだけで、私たちの生活スタイルを加味したケアの提案をしてくれる訳ではない。

ここに通い続けても私は先生の理想通りのケアを息子にすることは出来ない。
時間の無駄、薬の無駄、肌トラブルの無駄。
私も嫌な気分になる。
その不機嫌が我が子を更に苦しめるだろう。

私はただただ息子の痒みと発疹から解放させてあげたいだけなのだ。
それは自分が息子のお母さんだからである。

自己流ではなくて、きちんと指示通りにステロイドと保湿剤は塗った。
身体を綺麗に保つことも出来る限りやった。(途中から言われた1日3回のシャワーはさすがに出来なかったが)

でも、結局ステロイドは正しく使っても息子に効果はなかったのだ。
皮膚炎と格闘して10年。
断続的ではあるが、ステロイド歴も10年。
もうやめよう。
きちんとやってこのザマなのだから。

そこから私は皮膚科、アレルギー科の先生が出す処方薬以外で良くしていくことを心に誓ったのだ。



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